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万引(窃盗)という難解な事件類型 最近増えている高齢者の万引き [刑事事件]

刑事事件の大半は、起訴事実を認め、
量刑と言って、例えば懲役何年かとか
執行猶予がつくかということが争点の事件です。

むしろ、殺人罪とか強盗罪とか凶悪犯の場合、
どうして、そのような犯罪を犯しかということが、
わかりやすく、
犯罪に至る理由を反省し、
原因の除去を講じることができる傾向にあります。

窃盗であっても、住居侵入窃盗は、
貧困に原因があることが多く、
盗みに入って、お金や金目のものだけでなく、
食べ残しの弁当や冷蔵庫の牛乳等を
盗み食いすることが多いようです。

そうすると、どうして貧困に陥ったのか
働くなったとすれば、どこに原因があったのか、
盗んでも平気になった精神の荒廃の出発を探すわけです。
原因はあるものです。
(この辺のところは、私の著書「情状弁護論」をご参照ください
と言いたいところですが、まだこのハードディスクから
外に出ていません。いつか出版したい。まあそれはともかく。)

そして、その原因の克服方法を探して、
再出発のプランを具体的に構築してゆきます。

お金が無いから盗みに入ったということは真実なのでしょうが、
それで止まったら刑事弁護にならないわけです。
気持ちが弱かったというのは、結果に過ぎません。
大体どうやって、気持ちを鍛えますか?
お金が無い人がみんな盗みをするわけじゃあないでしょう?

そうやって、具体的に、被告人に考えてもらうわけです。
なにかしら、考えることができ、
被告人の将来に役に立つはずだということで、
弁護としているわけです。

さて、今日の本題です。
万引きという事件は、こういう意味では非常に難解なのです。
裁判官や検察官と、会議の懇親会などでお話しする機会があると、
まじめな裁判官、検察官ほど、同じ意見をお持ちのようです。
(まじめな裁判官、検察官は、人情味のある方も多いです。)

万引きは、必ずしも、貧困に直面して、
即ち、食うに困ってやってしまうわけではないようです。
調べると預貯金が結構あったりします。
この辺が同じ窃盗でも住居侵入窃盗とは明らかに異なります。

マスコミなんかは、すぐ、スリルを求めてといいますが、
これも違うようです。
スリルはいらない、商品が欲しいというのが本音です。

そして、万引きは繰り返します。
前に万引きで捕まって、説教されて釈放され、
2回目、3回目で逮捕され、裁判を受け、
執行猶予ででてきたばかりで、
またやってしまうという傾向にあります。

量販店などでは、私服Gメンを費用をかけてやっとっています。
年間100万円は下らないようです。
多くの量販店では、
示談はしない、厳罰を望むという傾向にあります。

執行猶予中の万引きは、
失敗に終わって商品を返しても、
ほぼ実刑になります。
刑務所に行くということです。
執行猶予中の刑期と合わさるので
3年近く刑務所に行くことが
普通でしょうかね。

最近万引き犯で多いのは、高齢者の方です。
おひとり暮らしの高齢者の方が、
預金がありながら万引きをするケースが多く、
理由は、老後に備えて、お金を使うことが不安だった
というものです。

驚いたことに、私が担当した被告人も、
裁判官が担当した別の被告人も、
別の県の検察官の担当した被告人も、
このようなケースで、このような弁解をしているのです。
(これらは、すべて、最近のケースです)

あまりにも、このような事件が多いので、
警察の供述調書も、
パターンができてしまっているのかもしれません。

働けなくなったら、動けなくなったら、
一人暮らしの場合、確かに不安でしょう。
なかなか、その人の立場に立って考えることは
難しいところもありますが、
年配の裁判官から、
裁く方も切ないということをうかがって、
改めて考えさせられました。

確かに、これまでは、
それほど多くなかったと思います。

それから、弁護士は、被告人個人と向き合うあまり、
社会的傾向という視点は弱いかもしれません。
裁判官や検察官のように、
多数の事件を扱っていると見えてくることも多いはずです。

お話をうかがうことは勉強になります。

一人暮らしの高齢者の万引き、
弁護士は、社会的問題だといってから考えますが、
みなさんはどうでしょう。

老後の心配、不安をあおり、
法律を守るよりも、自分を守ろうとする気持ちを、
社会が作っているのだという主張は、
受け入れられる部分があるでしょうか。


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