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睡眠薬の影響下の窃盗事件、心神喪失で不起訴、釈放となりました。 [刑事事件]

被疑者国選で担当した事件ですが、
睡眠薬とアルコールを併用し、意識朦朧となり、
お店の商品を盗んだという事案で、
逮捕されて警察署に留置されていた被疑者が、
不起訴で釈放となりました。

心神喪失状態だという主張が認められた形になります。

1週間くらい前に、2度続けて、ブログに書きながら
悩んでいた事案です。

先ず、刑事弁護の観点から、振り返ってみます。

第1
本件が睡眠薬(ハルシオン)の影響下だということは、
被疑者本人から事情を聞いていましたが、
それをどうやって証明するかが課題でした。

先ずは、基本的な治療薬の辞典は持っていたほうがよい
というのが教訓になります。
私は、知人の医師から、お古を頂戴していました。
副作用とか、禁忌とか、慎重とか、
必要なことがすべて記載されております。
また、公的な刊行物で、医学実務に評価が確立しているので、
信用性も高いため、
意見書に添付することができました。
インターネット記事は、補完のために添付する
という位置づけが正解だと思います。

第2 
薬効についての医学的知見だけではなく、
被疑者の既往について第三者より事情聴取できたため、
同じようにアルコールと睡眠薬を併用した時、
同じような状態となり、
その状態について、客観的に知ることができました。
この点は、本人ではわかりません。
従前の状態と類似の特徴
(ろれつが回らない、目が据わっている、徘徊等)
を聴取できたことが、
当時の精神状態を証明したポイントになったと思います。

第3
実は、この第三者から事情聴取ができたのは
きわどい話でした。
事情聴取ができたのは、
電話をもらったからですが、
その日に、被疑者に第1回の面会に行き、被疑者に、
その人が来たら私に電話するように言っておいたのです。

そうしたら、その日、私の次にこの第三者が
面会に来てくれて、
被疑者からその人に私に電話するようにという
伝言が伝わったのでした。

もし、私がぐずぐずしていて、
被疑者との面会を翌日回しにしていたり、
午後遅い時間にしていたら、
この第三者の証人から事情聴取をするということは
できませんでした。
というのも、
この人は、その日に、他県に帰るので、
最後に被疑者に面会に来たのでした。

他県に帰ってしまっては、
被疑者は、連絡先(携帯電話の番号)がわからないため、
連絡の取りようが無いということになったのです。
面会に来たところで、
直接私の名前を告げることができ、
電話をもらうことができたのです。
私が面会していなければ、
私の名前を、被疑者もわからなかったと思います。

迅速な行動が吉とでました。

第4
本当はこれが第1かもしれませんが、
いい加減な妥協はしなかったことです。

とかく、弁護人の活動に慣れてくると、
とにかく罪を認めて、反省から釈放へ、
起訴されれば刑の軽減をねらうという
弁護方針を立てるという悪なれ方針というのがあり、
実務的には、微妙な判断を迫られます。

しかし、本件では、
被疑者の覚えていないという話を信じ、
どうして覚えていないかということを分析する中で、
睡眠薬とビールの併用に問題があることに気が付き、
よし、それならば、
嘘はつかないで、覚えていないことは覚えていない
という正面突破の方針を早期に確立し、
これを貫いたわけです。

この方針を早期に確立しなければ、
不起訴にならなかったかもしれません。

まあ、捜査機関が公平な判断をしたと思いますが、
弁護人としては、それは期待しないで
活動をしなければなりません。

長くなりましたので、今日はこの辺で。
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コメント 2

中澤健太郎

全く僕も同じ状態でマンションの真下の部屋にはいって物と現金をもってかえってきたのですが、全く覚えてなくて、翌朝すぐに返しにいきましたけど、もうおそくて警察に逮捕される予定です!弁護って引き受けてくれるのですか!
by 中澤健太郎 (2014-12-28 00:01) 

ドイホー

古い記事だったので、コメントを頂いたことに気がつかず失礼しました。もし逮捕されたあとであれば、このブログを弁護人に見せていただくと良いかもしれません。お住まいはどちらでしょうか。遠方であると、費用面から、地元の弁護士会か、被疑者国選を申請する方が良いかもしれません。
by ドイホー (2015-01-09 10:00) 

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