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さらば交通事故紛争処理センター その2 示談がまとまらないパターンとまとまる条件 [交通事故]


あっせんを申し立てる方は、なんとか事故を解決したい
と思って申し立てをされていることと思います。

あっせんを受ける我々も、
全件まとめようとして、意気込んで事件に臨むわけです。

だから、事件の受付をした事務局の方から、
双方、相手の方が100%悪いと言っていますと報告を受けると、
どうやってまとめろというのだと頭を抱えてうなるわけです。
今にしても思うとまとめようとしていたから悩んでいたのですね。

「ああ、無理」と思えば、
「無理ですね」とにこやかに対応すれば、
事務局も、当事者の方々も、
余計な緊張やストレスを私から与えられないですんだかもしれません。

それが、結局最後の最後までできなかったわけです。

人身案件の担当を4年、その後物損プロパーが2年、
合計6年、何としても示談をまとめるということで、
猪突猛進に進んできました。

どんな事例が無理なパターンでしょうか。
やはり、事実に食い違いがある場合ということになると思います。

例えば
一方は、交差点を曲がろうとして停止して待機していた。
ところが他方が直進してきてこちらにぶつかってきたと言い、
他方は、自分が交差点を直進して進行していたら、
一方が交差点を右折してきたので接触したという場合、

この場合、一方は交差点に入り口が衝突現場だと言い、
他方は交差点に大分入ったところだというわけです。

物損事故で、人に怪我が無い場合は、
警察も実況見分調書を作らないので、
客観的証拠がまるっきりないということがほとんどです。

どちらの言い分が正しいと、
交通事故紛争処理センターでは決めることはできません。
裁判とは違うところです。

多いのはウインカーを出したか出さないか。

ほとんどは、双方が嘘をついているわけでなく、
感じ方の違いがあるわけです。

交差点の事故で言えば、
実際に、交差点を曲がる車は、
停止しようとして、停止動作に入ったのだと思います。
ところが直進車から見れば、
交差点を曲がる車が、その車が停止する前に目に入れば、
その時は動いていたわけですから、
これから停まるという頭は無いわけです。
停まったとは認識できません。
双方の言い分はもっともです。

衝突も、その場で双方の車が停止しているということは、
物理的に難しく、
それまでの運動エネルギーによって、
衝突後ずれるわけです。
ずれたことは認識していても、
どの程度ずれて移動したかには、
認識の食い違いがあるのですが、
事故後の判断ということになるので、
衝突位置がどこだったか、もうその直後から
本当はわからなくなることも多いと思います。

ウインカーについても、
あげているかどうか見えない位置にいたり、
事故後故障してウインカーが止まることもあるわけです。

他人が事故を見てたって、
事故の衝撃で、冷静に判断できないと思うので、
事故を起こした当事者が冷静でいるわけがありません。

交通事故は、事実関係に食い違いが出ることは、
むしろ当たり前かもしれません。

ところが、相手が自分に有利に嘘をついていると思いだすと、
信頼関係をつくりようがなく、
まとまるものもまとまらなくなるわけです。

それでも、事実関係に食い違いあっても、
まとまる時はまとまるものです。
どうしてまとまるか、その条件は何かということですが、

なんと言っても一番大きいのは、
当事者が疲れていて、早くまとめたいという気持ちになることです。
私の力ではありません。

紛争処理センターに申し込むということは、
それまでに保険会社を通じて、あるいは保険会社どおしが、
さんざんやりあったということです。
精神的には、大変お疲れになっているわけです。
ここで決めたいと思って申し込まれる方は大変多いです。

なんとか、不承不承でも、納得する的が欲しいわけです。

Aさんの言っている事実を前提にすれば、70だ。
Bさんの言っている事実を前提にすれば、50だ。
どちらの事実が正しいか、センターで決めることはできないのです。
どちらの事実も正しい可能性があります。
それは、これこれと考えると、こうなってしまうからです。
もちろん、この事実関係をどうしても曖昧にできないというのなら、
裁判で決めてもらうことができます。

早く解決をしたいか、やることをやらないとあとで後悔をするかは、
人それぞれ違うと思いますので、
どちらを選ぶかはご本人に選んでもらうしかありません。

事実関係に、自分の思い違いの可能性もあること、
相手方の言い分もあながち嘘とは言い切れないこと
その前提としてどこの事実が食い違うかはっきりさせることによって、
ある程度当事者の方々も納得される場合が少なくありません。

そこに持ってきて、さんざんやり合って疲れていたり、
また、色々な手続きをすることにうんざりされる場合、
案外、納得していただくことも多いです。

どちらがどの程度悪いなんて言うことは、
本当は数字で割り切れることはないわけです。
結構道路の構造自体に問題があると感じられることもあったりします。
青信号で右折できるというのも、
安全面から考えてみると、疑問が大きいです。

色々な要素を取り上げて、事故が起きた原因を
色々な側面からとりあげて、
今回の示談に不本意であれば、
そのことを二度と忘れないでいてほしい。
そうすることによって、
あの時損したと覚えていることによって、
二度と同じ事故を繰り返さないことができる。
今回は物損で済んだけれど、
今度の事故は、相手方が大型自動車だったりすると、
命を落とすかもしれない。

ここで、損をしたと思うことが、
結局得をするかもしれない。

交通事故の示談で、得したと思ってしまったら、
悔しい思いが無いものだから、
また、同じような事故を起こしてしまいますよ。
今度は大事故かもしれません。

むちゃくちゃなことを言っているのかもしれません。
しかし、みなさんと事故のあっせんをしていて、
事故の当事者の方々から、少しずつ教わってきたことの
集大成だと思っています。

交通事故紛争処理センターでは、
色々なことを勉強してきました。
交通法規はもちろん、保険実務や医学
自動車工学、事故処理実務、
会計的なことも必要に迫られて勉強させられました。

私にとってすべて財産です。
6年間、月3回通い続けたわけですが、
今度の残業期日で終わりになるわけです。

寂しさはこみ上げてきません。
あっせん委員の任期は終了しましたが、
今度は被害者側弁護士として、
どんどん交通事故紛争処理センターを利用することと
思っているというか、
(事件のご依頼が無ければいけないので、)
願っているというか。

これからもよろしくお願い・・・したい
というところでしょうか。

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