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仙台弁護士会自殺対策PT作成、震災法律相談に関するメンタルケアQ&Aを一挙公開 [弁護士会 民主主義 人権]

私が中心になって作ったわけではないのですが、
我が仙台弁護士会自殺対策プロジェクトチームが、
震災の法律相談に関して、
相談者に対するメンタルな点の配慮と、
相談を担当する者自身のメンタルケアについて、
Q&Aをまとめました。

どちらかというと、中心になったのは、
この4月から新メンバーになった先生方で、
それで、4月中にこういうもの作っちゃうんだから、
すごい話です。

私も、専門家の先生の聴き取りに参加しましたが、
RPGでいうと、歌うたいとか遊び人とか
要は頭数のにぎやかしでした。

それでも、PT座長の、このQ&Aを
どんどん転載してもらおうの号令が出たので、
全文引用する次第です。

オリジナルは、きちんと書式が整っていますが、
引用の為、テキスト貼り付けとなっています。
オリジナル版は、被災地に持ち込むため
A3版中折裏表(つまりA4判4頁)にまとめられています。



震災法律相談に関するメンタルケアQ&A初版2刷 仙台弁護士会自殺対策PT
~震災相談の際に気をつけること~

1.被災者の心理状況一般

Q 3.11の大震災から2か月近くが経過しましたが,避難場所で生活されている被災者の方々の心理状況はどのようなものでしょうか。

A1 話を聞いてもらうだけでいい,という時期は過ぎている人が増えている。先々の不安(収入,住居,ローン,相続等)が現実化し,何とかしなくてはならないと考え始めている。現実の問題に立ち向かおうとしている人には,単に結論をあいまいに先延ばしにする(例「しばらく支払を猶予してもらいなさい」)のではなく,メリットとデメリットを挙げて具体的な道筋を示すことが必要(猶予や金利減免を受けても支払できない場合は破産という手続きもある,など)。仮設住宅や新居に落ち着いたら具体的な行動に移れるよう,避難所で心の準備をしておくことが安堵感につながる。


A2 他方でライフラインすら復旧の見通しが立たず,がれきに囲まれ,先の見えない状況にいる人も依然としている。津波の被害が大きい地域では行方不明者も多く,1か月以上ずっとストレスにさらされ続けている。このような事態を我々は経験したことがない。
こういう人に対しては安易な励ましはせず,まずは話を聞くことが重要。相談担当者の勝手な解釈を加えず,相手の言葉をそのまま繰り返す:リフレクションが有効。(「大変なんですよ」と言われたらまず「大変なんですね」と忠実に再現するなど)。リフレクションすることで「聞いていますよ」という姿勢をまず示す。


2.避難所に入る際

Q 避難所に入所する際,どのようなこと(服装・態度など)に気をつければよいでしょうか。

A 避難所でスーツにネクタイは違和感あり。身構えてしまい本音を話せない。


Q 法律相談ブースで相談を待っているだけでなく,被災者のそばに行って,積極的に話しかけることは問題ないでしょうか。

A 「お困りのことはありませんか」「体の調子はどうですか」などと声を掛けるのは問題ない。避難所の外の状況に関心がある人は多く,外の様子を聞かれたらありのまま話せばよい。自分の体験を話すのも良い。被災体験を話したい人にはそのまま話してもらえばよい。話したくない人には深追いしない。


3.法律相談等で被災者からの相談を受ける際

Q 被災者とはじめて対面します。被災者と対面した際に,何に気をつけなければならないでしょうか。

A 言葉使いに注意すべき。支援者という立場や「上から目線」で話さないように。一緒に考えようという気持ちが大切。何か役にたてることはないか,力になれることはないか,という姿勢で臨むとよい。


Q 「何もかも嫌になった」「全く希望がもてないのでもう自殺したい」などと,希死念慮を打ち明けられた場合はどうしたらいいですか。

A 「自殺したい」との発言は,助けてほしいというメッセージ。何かしてほしいからそう言っている可能性がある。あわてて「死んではだめだ」と頭ごなしに否定すべきではない。死にたいのだという感情は否定することなく受け入れて,「なぜ自殺したいと思うのですか」「何が解決したら自殺せずに済みますか?」など、相談者がなぜ死にたいと言っているのかを尋ねてみる。先行きが見えるような具体的な制度(自己破産,生活保護,失業保険…)を説明し,具体的な手続きを取れるよう道筋をつけることが必要。このような対話すら受け入れることができない人の場合はメンタルケアチームにつなぐ。


Q 被災地の状況や相談内容によっては,弁護士自身が無力感や強いストレスに襲われることもあります。支援者自身のメンタルケアで気をつけるべきことはありますか。

A タフな消防隊員ですら凄惨な現場に臨場することが自らのトラウマとなる。「惨事ストレス」に対するケアが必要とされ実践されている。無理をせず,辛くなったら途中で撤退する勇気を持つ。避難所等に行くのであれば,心身ともに健全な状態で行かなければかえって迷惑をかける。法律相談で全てが解決するとは期待されておらず,次に繋げられれば充分であることを自覚しておく。相談担当者自身が耐えられないような話を聞いた場合は,相談担当者同士でその日の体験・気持ちを話すこと(デフュージング)や,管理者がいる場合は全体でのミーティングで話をさせる(デブリーフィング)というストレスマネジメントの手法がある。現場で実施し,ストレスを持ち帰らないことが重要。


Q 深刻な相談(家・仕事場が流失した,将来の見通しが全く立たないなど)を笑いながら話す相談者には,どのように接すればようでしょうか。

A 現状を見ないふりをしている人,自虐的になっている人,それぞれ違うはず。深刻さの度合いが尋常ではなく感情のバランスが崩れてしまっている可能性もある。笑いながら目は泣いていることもある。「もう笑うしかない」と前向きになっている人からは逆に元気をもらうことも。その場の雰囲気に応じてやんわり共感できればよい。


Q 相談担当者に怒りをぶつけてくる人がいるのですが。

A 震災から2か月近く経過し,天災を誰かのせいにしたくて他人に怒りをぶつけてくるのは正常な反応でありむしろ健全と考えるべき。相談担当者が非難されているわけではないので理性的に対応する。ただしいわれのない個人攻撃になれば率直にその点を指摘して相談担当者は自分を守る必要がある。


Q 親族が死亡している方からの相談,あるいは行方不明の方からの相談について,気を付けることは。

A 死亡の場合は無理にお悔やみの言葉をかけることはなく淡々と進めることもよいが相談者の気持ちを察して。行方不明の場合,法律相談に訪れたのは相談者も3月11日に死亡したとの推定を前提としていると思われる。ただし憶測はせず気持ちを聞いてみる。認定死亡の説明(認定時期の見込み等)や認定された後の相続手続きについて,具体的な次の入り口を示せばよい。
身内に行方不明者がいる場合,あらゆる避難所を訪ね歩き手段を尽くしているのが通常だが,最近では多くの遺体が身元確認できないまま火葬されているのが実情。安易に「ご遺体が見つかるといいですね」とは言わない方がよい。


Q 親族を亡くした未成年者(あるいは若年者)からの相談で,大人たちの相談と異なり,特に留意すべきことはありますか。

A 中学生以上であれば,大人と同様に接するべき。ただ社会経験が少なく気持ちは子どもであることは配慮して。


Q 相談者からの相談内容が的を得ず,わかりにくい場合,堰を切ったように止まらない場合,話をさえぎってしまうのは問題ないですか。また,相談内容が法律問題ではない場合,どのように対応すればよいでしょうか。

A 相談者が他にいない場合はできれば聞いてあげてほしい。時間の制約がある場合,「今のお話をちょっと整理させてください。」「~ということですよね」と一旦待ってもらってテーマを絞ることは問題ない。あまりに一方的に多くしゃべる場合はフラッシュバックの危険もあり,こちらの話を受け入れられないようであればメンタルケアチームの支援が必要。


Q 現状の法制度では相談者の希望に添った制度がない場合の相談に対して,どのように答えるのがよいでしょうか。

A 安易な気休めでなく,根拠に基づく正確な情報を伝えることが大事。ただし断定的な表現は避けて「現在の制度では難しいですね」などと伝えるべき。先延ばしにするにしても,具体的な時期(長めに見積もる)を伝えると安心する。次に繋げる場合は,具体的な相談先を示す。その場で全て解決できるわけはなく,割り切りが必要。

4.法律相談を終える際

Q 相談を終える際,「頑張ってください」「ありがとうございました」などと声をかけることは問題ありませんか。

A 具体的にやるべき目標がなく見通しがない人や,すでに十分すぎるほどがんばっている人にさらに「がんばれ」は逆効果の場合もある。「大変ななかよくお越しくださいました」といった感謝・敬意の気持ちを示すのはよい。「私たちに力になれることがあればまた相談してください」など一言添えるとよい。


5.その他

Q 相談者がいない待機中に,震災とは関係ない話をしたり,談笑することは問題ありませんか。ほかの地域の被災者の状況を話すのは問題ありませんか。

A 特に問題ないが,避難所の外の情報に敏感な人はいる。公共の場における一般的なマナーを守って。
居住性や食事の内容など,避難所によって実情が全く異なる。その避難所の「いいところ」を指摘すると,安心感を得られることもある。


Q その他のアドバイスなど。

A 被災者の支援からの帰りに日常に戻り気が緩んで支援者が事故にあうことはめずらしくないので注意。一般に避難所にアルコールは持ち込まないこととされているが,重い話を聞いた後はアルコールも控えるべき。


専門家へのアクセスについて
主要な避難所や各地域にメンタルケアチームが派遣され待機しているはず。宮城県精神保健福祉センターが「こころの健康相談電話」を実施している(昼0223-23-0302、早朝・夜0223-23-3703)。髙橋聡美先生の仙台グリーフケア研究会でもホットラインを開設しており、メールでの相談も可能。

今回ご指導いただいた専門家の先生方です

伊藤美奈先生
精神保健福祉士,相談室「タイム」主宰
http://ameblo.jp/thymetime/

髙橋聡美先生 
仙台青葉学院短期大学看護学科精神看護学講師
http://blog.canpan.info/satomilab/



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