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離婚後の単独親権は、他方の親を排斥する制度でも、子どもを支配する制度でもない。13歳で亡くなったお子さんを追悼する。 [家事]

「子どもが死の病についているにもかかわらず、
 単独親権者母が、
 子どもの父親や祖母の面会を拒否し、
 病院がそれを忠実に守ったために、
 父親が子どもの死を知らされたのは、
 亡くなった1週間後だった。」
というニュースが流れました。

単独親権に対する誤解
ないし、誤った運用、解釈が生んだ悲劇だと思います。

もともと婚姻中の両親が親権を共同行使する
と定められたのは、
旧民法上、女性に権利能力を認めなかったことの反省で、
男女平等に親権を行使するということで、
共同親権ということが明示されたわけです。

また、家族は同居をしているという設定があるので、
共同で親権を行使しても
すぐに話し合いができて、
親権行使に支障が起きないという合理性も認められます。

ところで
民法が念頭においている親権とは
820条 監護及び教育の権利及び義務
821条 居所の指定
822条 懲戒権
823条 職業許可
824条 財産管理
それから
5条   未成年の法律行為の代理権
です。

要するに、子どもが健全に成長するために、
親として必要が義務を果たすにあたって、
代理権などの行使が認められることが
必要だということになります。

例えば
子どもを成長させるためには
学校の入学手続きが必要ですが、
子どもは未成年であるため
法律行為ができません。
そこで、親が法定代理人として
契約を締結するわけです。

そもそも、親権ということは
子どもの排他的支配をする権利ではなく、
子どもを育てる義務を履行するために
子どもに代わって行動する等の
法的効果を国家が認めたという意味合いなのです。

国家との関係では権利ですが、
子どもとの関係では親権とは義務の内容なのです。

これが、離婚となると、
通常子どもの父と母は別居するので、
子どもはどちらかと生活しなければならない。

一緒に住んでいるものが、
上述の権利、義務を行使することが
合理的なので、
単独親権となっているのです。

国家との関係では、同居者を権利者と認めれば足りるからです。

しかし、離婚をしても
親子の関係が絶たれるということはありません。
親族ですし、
扶養義務もあります(877条)。
相続権もあります。

確かに親権者は通常子どもと同居しますから、
子どもの実情を把握しやすいということは
一般論では言えると思います。

何らかの問題が起きた場合は
親権者の意見が優先されることは
一般論では合理的だと思います。

(一般論ということは特別の事情のない限りということです)

しかし、単独親権者が
親権を持たない別居親の子どもに対する関わりを
一切排除するということの
根拠はどこにもありません。

親権者の監護権が優先されることの反射的効果として
別居親のかかわりが制限される程度の話です。

だから、別居親を子どもに会わせないという権利は
そもそも親権者にはありません。

別居親と面会交流することは、
子どもの健全な成長に役に立つということは、
民法上も、裁判所もそれを前提として面会交流を進めています。

虐待親でさえも、面会交流を行った方が子どもの成長に有益だ
と日本の男女参画のDV加害の教科書ともいえる
「DVにさらされる子どもたち」(金剛出版)
で述べられています。
もっとも、この場合は、
面会方法に特別の技術が必要だと思います。

面会交流の拒否の理由が
「無理」、「1年に3回が限界」
等という同居親の感情的な理由になっています。
自分が会わせたくないから会わせないということで、
子どもの健全な成長という視点がありません。

あたかも親権が、子ども対する排他的支配権
であるかのような錯覚をしているようです。

子どもの成長を援助する義務を履行するために
国家から権利として認められている親権を
自分の感情のために、子ども成長を阻害する方向で行使しているのですから、
矛盾としか言いようがありません。

ある程度法律的な話をしましたが、
冒頭の事件については、「情」の話だと思うのです。

子どもは、自分の責任のないところで、知らないうちに
両親が離婚して、一方の親と離れて暮らしていても、
いつかは、また一緒に生活して
楽しく笑える日が来るかもしれないと
漠然と思っているそうです。

もし、死の床について、回復の見込みがないならば、
せめて、子どもの病床の前だけでも、
また一緒に暮らせるようになったと
うその一つも付くことが、
どうしてできなかったのか。
どうして子どもを安心させることを
しようとしなかったのか。

いろいろな事情があったのだと思うのですが、
そこまでして自分の感情を優先しなければならないのでしょうか。

ウォーラースタインというアメリカの研究者は、
65組の離婚家庭を30年にわたり調査しました。

そして、次のようなことを言っています。
「親は、身体生命に関することは、
 自分の身を挺してでも子どもを守る。
 しかし、離婚となると子どもを無視して自分の感情を優先する。」

亡くなられたお子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
このような悲劇がなくなるように、
大人たちは知恵を出し合うべきです。




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