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人が精神的に追い込まれるのは、個別のいじめ行為、パワハラ行為ではなく、対人関係の継続的な状態によってであること [自死(自殺)・不明死、葛藤]

昔の過労死の労災認定や裁判の判断の中には、
労働災害というと、
建設現場からの転落とか体の切断とか、
「出来事」が必要だということがどこかに残っていて、

時間的継続の中で、人が追い込まれるということを
十分理解しなかった時期があります。

しかし現在は、
平成23年12月26日の厚生労働省の通達により、
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html

「いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として心理的負荷を評価することにした」
とありまして、
徐々に、蓄積疲労、「一連の行為」を評価しよう
ということに向かってきています。

昔はどうだったかというと、
いじめの事案ではありませんが、
一人の中学校教師が、
クラス担任をやって、部活動の顧問をやって、
生徒会の顧問をやって、
免許外の教科担任をしている
その上、全国大会の事務局長をやっても、

やれ、クラス担任はほかにもやっている人がいる
部活動顧問はほかにやっている人がいる
生徒会もやっている人がいる
免許外の担当も当時は多くの教師がやっていた
等と、
それぞれの要素を一つ一つ分断して、
いずれも他にやっても平気な人が多いから
労災ではないという論法でした。

一人の人が、同時にこれらのことを一人でやっていた
ということは考慮されない傾向にありました。

本当にこういう理由で、地方公務員災害補償基金は
公務災害ではないという決定を3回も繰り返し、
裁判でようやく公務災害と認められたケースがあります。

http://heartland.geocities.jp/doi709/faq.html#tyugakukyousi

もう少しわかりやすい例はいじめやパワハラの例でしょう。

例えば、
「平成26年4月入社女性、同期入社の女性は全4名
その同期入社の親睦会のメーリングリストから排除される。
理由は、その人だけ男性同僚から気にいられて、
その同僚に目を付けていたリーダーから嫌われたから。
同期入社4名の女性のうち、
残りの2名もリーダーからの報復を恐れて
ターゲットを無視するようになる。

その後、会社で、連絡事項を聞こうとしても
同期入社3人は教えない。

昼休みにトイレに行くとにらまれる。

11月に同期の4人が、
自分が立てた企画のプレゼンを行う訓練をした時、
上司がターゲットのプレゼンを少し注意したところ、
3人が、このチャンスを逃すなとばかり、
難癖ともとられるような誹謗中傷を
矢のように畳みかけてきた。

上司や他の社員は、
いじめではないかとうすうす気が付いていたが、
3人の発言は、仕事上のことなので、
黙認してしまう。

12月、会社の忘年会で、
人ひとり挨拶をしたりしていたとき、
同期の他の3人が挨拶しているときは、
鳴りもので盛り上げていたのに、
ターゲットが発言した際には、
あからさまに静かになり、
トイレに立つものも出た。
 隣の人に話しかける者もいた。

酒の席ということもあり、
また、攻撃があったわけでもないので、
上司も誰も注意しなかった。

翌年2月
プロジェクトの成功の打ち上げに一人だけ呼ばれなかった。
連絡ミスかもしれないので、
誰も何も言わなかった。

5月、
トイレの中で、ターゲットが入ってくると
「どうして、まだ会社に出勤してくるのかしら」
等、あからさまな悪口を始める。
ターゲットのことを言ったという証拠がないので、
同僚も何も言わなかった。

6月、げっそり痩せたターゲットが
苦しさを隠して笑顔を作るところ目撃されている。

同月自死」
という事例があったとします。

メーリングリストから外されたのは、
同期従業員の私的な行為なので、業務とは関係ない
プレゼンの容赦ない悪口は、それ一回きりなので
よくあること。

酒の席での無視も、業務中とは言えない
打ち上げに呼ばなかったことも
業務ではないし、この程度のことはよくあること
トイレの中のこと程度で、心理的に圧迫されることはない

なんてことで、いじめと自死との間には直接の関係がない
なんてことを昔は認定していということになります。

それを厚生労働省は、改善することとし、
一つ一つの行為を分断してみるのではなく
「開始時からすべての行為を対象とする」
というように改めたわけです。
今から4年ほど前のこととなります。

当たり前の話なのですが、
自死というのは、
一つ一つのエピソードによって
直ちに追い込まれて自死に至るわけではありません。

見ず知らずの人に突然変なことを言われたり
無視されたからといって、
自死するわけではありません。

本来会社の同僚で、しかも同期入社となれば、
ほっとする気心が知れた仲間です。
入社経験が同じということで、
似たような悩みがあるので、
打ち明ければ、共感を示してくれて、
それで救われることもたくさんあるわけです。

その仲間から、
1年2カ月にわたり、無視され続けてきたわけです。
否定的な言動がなされてきたわけです。

「どうして、まだ会社に来るの?」
という言動は、存在そのものの否定です。

それから、上記のエピソードは上司が把握したものだけですから、
その他にも、当事者しか知らないエピソードがあったはずです。

これが、1年2カ月のうちに、
喧嘩して、仲直りして、また喧嘩して
という人間関係の営みがあったならともかく、
ターゲットが一人の人間に固定されて、
一度も人間的交流がなかったと言うのですから、
極めて異常な排斥の継続ということになります。

あなた耐えられますか?

上司、他の同僚は、これらのことを知っていながら、
何も援助をしてくれない。
自分のためにそれを止めてくれる
注意してくれる
否定的な価値観を示してくれる人が全くいなかったのです。

挙句の果てに存在そのものを否定される
それもみんな否定してくれない。
誰も3人を注意してくれない。
自分に共感を示してくれる人もいない

もはや、修復は不可能だと思ってしまうのも
仕方がないことだと思います。

ターゲットは、両親を心配させたくなくて、
あるいは情けない自分を両親に告げたくなくて、
家では何も言えませんでした。
来る日も来る日も、同僚の理不尽な攻撃
わけのわからない攻撃に苦しんでていたわけです。

今度はいつ、だれの前で、
いたたまれない気持ちにさせられるのだろう?
朝起きると、そういうことを考えていたと思います。
夜寝るとき、このまま朝がこなければよいのに
と思ったかもしれません。

エピソードがない日でも
小さな無視、攻撃、嫌味は行われていたでしょうし、
ターゲット自身は、
毎日がいたたまれなかったと思います。

これが生きて感情を持っている人間に対する
当たり前の見方ではないでしょうか。

家族は、どんどん痩せていくターゲットを
ただ心配しているしかありませんでした。
おそらく、病院に連れていこうとしていたと思います。
おそらくターゲットは、ダイエットをしているなどと
両親をごまかして、
両親は摂食障害かなという程度の心配だったのかもしれません。

いじめによる精神的な追い込みとは、
上記事例でお分かりいただいたと思うのですが
具体的なエピソードをそれぞれ
切り離して考えるべきではないのです。

継続的な、いじめという人間関係
数の力、地位の格差などで、
抵抗できないターゲットとなっているという
時間的空間のある対人関係の継続している状態の問題なのです。

厚生労働省は、いじめ、パワハラの実態に切り込み、
個別のエピソードから、一定の時間的継続を問題にすると
改善を見せました。

裁判所も、同じ傾向です。
むしろ、裁判所がリードして、厚生労働省などが
変化を促されていったという関係にあります。

損害賠償という公平な分担を求める制度でも
このような見方をしています。

学校のいじめというような
いじめ予防、生徒の自死予防の観点からの
調査、認定も、
専門家が行っていることですから、
このようなリアルな
継続的人間関係の状態と
その結果としての精神状態の変化
という観点から考察されていることでしょう。

むしろ、それが徹底されているものと推察されます。
あくまでも予防を目的としているものですから、
誰が悪いということを追及するのではなく、

これからどうやって楽しい人間関係を構築するか
どういうことを注意しなければいけないか
という観点からの調査判断ですから、
あまりにも当然のことだと思います。

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