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パワハラ訴訟さわやかに解決しました。「うつ」の魔法を解く魔法 [労務管理・労働環境]

パワハラで休職、退職に追い込まれた事件が
休職から2年で訴訟上の和解となりました。

大卒で会社に就職して、
休みの日も取引先から電話がかかるような
忙しい仕事をしていました。

震災復興ということで
業者は、どんどん仕事を引き受けて、
メーカーも営業も、下請けも
何が何だかわからないような忙しさでした。

このため、誰のミスということも難しいのですが、
上司は、新入社員の彼に責任をなすり付けて
営業の仕事をはずして、かわりの仕事を与えず、
仕事を与えないのに、仕事をしていないと
嫌味を言う毎日でした。

彼は仕方なく、
草むしりをしたり、雑用をしたり、
事務職員に、手伝うことがないか
聞いて回ることが日課になっていました。
大変つらいことです。

それでも上司2名は、
言いがかりのようなことで、
怒鳴り散らし、
机を一人だけさらし者のような場所に異動したりしていました。

最終的には人格障害だから診断書をとってこいと
精神病院に強制的にいかされたりもしました。

グループ会社を含めて
同期5人のうち、4人が
2年もたたないで退職していました。
どうやら会社に構造的な要因があるようです。

最初私は、
証拠もないことから、
早く会社を辞めて、次の一歩を踏み出した方が良いと思っていました。
たった一人で戦うことはつらいことです。

彼は、何が何でも一矢報いるということで、
毎日録音機を持って出勤していました。
それでもやはり、出勤中に、
頭や体が痛くなったり、
気が付いたら自然と涙が出てきていてたと
終わってから言っていました。

結局、彼はうつ状態がひどくなり、
精神科医に行って休職に入り
会社の規定で退職となりました。

当初なかなか打ち合わせもままなりませんでした。
会話が成立しない。
こちらの話もすぐに理解できない状態で
ピントが外れたことをしていたり、
自分から話すときも、
いちいち回りくどい言い回しをして、
挙動不審な感じもしました。

この事件は、私の直感的なファインプレーですが、
私一人ではうまくいかないだろうということで、
若手の先生に共同代理をお願いして
二人で事件にあたりました。

私一人であれば、イライラして
最後まで粘り強く彼と付き合えなかったのではないかと
思います。

お若い先生でしたが、
おっとりと彼の話を受け止めて、
私の話を翻訳してくれたり、
録音の文字起こしを時間をかけてやっていただいたので、
私も冷静さを保つことができました。

裁判は、
裁判官の積極的な訴訟指揮の元、
和解が強力に進められていきました。

最終的には形になる金額と
正式な謝罪を盛り込んで
和解が成立しました。

従業員を人間扱いしない振る舞いは
高額の賠償金の対象となるという
一つの実績を作った和解だと思いました。

何よりも、労災認定抜きに
和解が成立したということが画期的です。

時間外労働が全くない事例で、
会社の内部の言い差な嫌がらせの繰り返し(ハラスメント)
なので、
なかなか労災認定はなされないだろうとという判断から、
申請をしませんでした。

しかしその代り、
休職から2年ですべてが解決したのですから正解でした。

この事件を通じてぜひお伝えしたいことはこれからなのです。

彼は、退職後、
みるみる元気を取り戻していきました。
ちょっと突っつくと涙ぐんでいたような彼が、
落ち着きを取り戻し、
また意欲も取り戻して、
休職から半年後、
なんと再就職してしまったのです。
事後報告を受けて唖然としました。

再就職後の職場も、
過重労働で有名な職場ですが、
彼は忙しい職種での採用ではなかったので、
定時に仕事が終わっていたようです。

そればかりではなく、
とても大事にされたようです。
彼はどんどん生気を取り戻してきました。

劇的に変わったのは話し方です。
回りくどい、
無理して社会人用語を使っているようなところが薄れていきました。
いつも斜め下を見ていたような視線も上がっていきました。

主治医に確認したところ、
治癒といってよいと思うが、投薬を中断せず、
予防的に投薬をしているという話でした。

彼は文字通り命がけで録音した
会社での嫌がらせの音声を
仕事の傍ら必死に文字起こしをするようになりました。

その時を思い出すのではないかと心配して
もう一人の若い弁護士も
生真面目に手伝いました。

一日中録音していたので、
必要な音声を探し出すのは
気が遠くなるような作業でした。

ようやく半分だけ文字起こしができたので、
前篇ということで証拠提出しました。

これで勝負ありでした。
それまで裁判で否定してきたことが、
きちんと録音されているのですから、
会社側もガタガタと崩れ、
一気に和解がまとまりました。

(こちらも和解する事情があったので、
 本当に一気に進みました。)

裁判が終わって、
弁護士2名と彼と最後の打ち合わせをしました。
驚きました。

これがあの時の彼なのか目を疑いました。

実ににこやかな好青年なのです。
顔つきが全く違う。
今までは、頬の筋肉がなかったのかと思うほど
目の前の彼は筋肉が躍動して
表情が生き生きしていました。

弁舌もさわやかでした。
あの時のまどろっこしい話し方は
全くありませんでした。

自分が頑張ったテープ起こしが決め手になり、
泣き寝入りしないで、会社に謝罪させたことを
誇りに思うと語ってくれました。

泣き寝入りせずに、戦ったことで
彼は自分を取り戻したのだなあと
生まれ変わったように語る彼の顔をぼんやり見ながら
そんなことを感じていました。

ただ、
精神科医との連携をとりながらとはいえ

うまくいったからよかったけれど、
実際は、われわれに話していた以上に
苦しかったのだなあと思うと、
それをみんながやるべきだとは
なかなか言えないということは本音です。

医学的なことは正確にはわかりませんが、
彼はうつ病だったというよりも、
それだけひどい扱いをされたことから
防衛反応で、うつ病のような状態になった
ということが実感です。

会社からは離れれば、離れるほど
自然に好青年に戻って行ったことからも
そう思います。

最終的にストレス源だった会社から謝罪されて
元の彼に戻ったのでしょう。
まるで、うつの魔法にかかっていたとでも
言うほかないような変わり方でした。
魔法使いが死んで魔法が解けたというところなのでしょう。

魔法使いを倒したのは何だったのでしょう。

彼は支えてくれる家族や、新しい職場、
元の会社を辞めた仲間、
そして彼女という存在があったからこそ、
戦いぬくことができたのだなと思います。

彼は、裁判解決後、
一番苦しいときを支えてくれた彼女と
婚約をしたと最後に報告してくれました。
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