SSブログ

【シリーズ最低】過労死予防を口実に解雇制限の緩和を主張する水鏡推理Ⅵ [労務管理・労働環境]

結構好きで読んでいたのです。
松岡圭祐の水鏡(みかがみ)推理シリーズ
東京出張とかの新幹線の往復で
ちょうど読み終わるような(途中昼寝して)
分量ですし、
ややむちゃくちゃな展開でも、
なんとなく応援したくなる主人公と
頭の体操的なパズルがはめ込まれていて、
癖になるような感覚でした。

シリーズ6作は、
過労死やブラック企業問題に取り組んだといううたい文句の宣伝が
5作を読んですぐ新聞に載ったので、
ちょうど東京出張もあったし、
買っておいたのでした。

途中まで読ませる文章はなかなか見事で、
過労死を取り上げた小説ということで
どこかに勝手に書評を挙げようかと思っていました。

ところが、今回は
オチの部分でがっかりしました。
あまりにもそれは無いだろうというオチ
トリックの解明ではなくオチ。

結局主として主人公だけが騙されていて、
主人公のためだけに仕掛けられたトリックを
主人公だけが引っかかって、

およそ、財務省主計局の官僚が
そのような行為をするわけがないという
しかも、医師や警察官の話を信じて
自分は何も考えずに自分の将来をふいにするような行為をした
というのですから、お笑いも良いところでしょう。

そして、およそありえない偶然でその場所に訪れ、
時間的にもその他の物理的条件も無視して、
その場で確保するという
あの夢中になって読んでいた何時間を
返してほしいと切なる願いを抱かせられます。

シリーズ最低のつまらなさです。
おそらく、別のテーマの作品で用意されたトリックを
無理やり、水鏡シリーズに突っ込んでしまった
のではないかと思うくらい不自然さと
これまでのシリーズとの違和感を感じます。

それだけなら、わざわざこのブログを書かないわけで、

過労死を扱ったと言いながら
過去の回想の事件以外
過労死案件が出てこないこともよいでしょう。
どうせ書けないでしょうから。

また、過労死の把握についても、
インターネット記事だけで構成しているのもよいでしょう。
あまり目くじらを立てると誰も過労死を取り上げなくなるでしょう。

過労死バイオマーカーなんてものが
今回の発明というシリーズのキモなのですが、
そんなもの作ったら、
マーカーの基準値に達しない者が過労死ではないという
排除として使われるということも
作中でも批判されていますから目をつぶります。
私は、

一番許せないのは、
ストーリーの進行の上でも、
登場人物の動機の上でも
何の関係のないとってつけた
過労死防止の方法が
開陳されていることです。

そのキモとして強調しているのが、
過労死を防止するために
解雇制限を緩和して解雇を認められやすくしようというものです。

要するに、
解雇が認められないために
あたらしい人を雇えないのだと、
景気が悪くなったら人件費がかさむからと、
だから、現状のスタッフで残業をさせて
その結果が過労死だというのです。

馬鹿も休み休み言えと。

現在正社員と非正規社員の格差が激しく、
正社員のテーマは解雇されないことです。
簡単に解雇が認められるようになれば、
解雇されないように、
パワハラ上司におもねるようになるし、
自分が解雇リストに入らないように
自主的に、残業代返上で
働くようになるでしょう。

そもそも、解雇制限が厳しくなった昭和と
派遣労働者や有期雇用労働者が多くなった平成と
どちらが過労死が多いか考えてみれば、
解雇制限と過労死は全く関係がないことが
一目瞭然だと思います。

また、国を挙げて、
3月を自殺予防月間と定めています。
派遣切りや有期雇用労働者の雇止めが3月に行われるので、
自殺と関連しているということをみんな認識しているからです。

雇用不安は自殺を招くのです。

過労死しなくても自死すれば同じことです。

今回の冒頭
劣悪な労働環境による過労死が根絶されることを強く願う
ととってつけたように記載されています。

そのくせ、過労死事案だとされたのが
狂言と統合失調症の厳格だというのがオチなのです。
狂言は、過去に過労死で同僚を亡くした人たちが
過労死予防のために荒唐無稽な犯罪に手を染めるというのですから、
過労死を亡くそうというすべての人たち、
厚生労働省をはじめとする省庁、
もろもろの人たちに対する冒涜だと感じました。

これは、特定の意図を持った人たちによって
急きょ作られたプロパガンダだというのであれば、
オチのつまらなさ、とってつけたような過労死
ありえない設定と解決
すべてがつながります。

結局推理小説自体の冒涜なのでしょう。
とても残念です。

ただ、明るい要素もあります。
どこかの特定の人間たちが、
過労死予防を口実に、
労働者をさらに追い込む制度を作ろうとしているということです。
その手口を前もって教えてくれたということかもしれません。

また、この提灯記事を書いて宣伝している人たちを
警戒すればよいということもよくわかりました。
作者の良心によって
オチの荒唐無稽さとその後の蛇足的な文書の中で
まともな人はがっかりしているところで
このプロパガンダをはめ込んで、
あまり影響力を持たないように周到に工夫されている
ということでしょうか。

次も買うとは思いますが
しっかりした構成の作品になることを願っています。

nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 1

風竜胆

このシリーズ、面白いけど、ツッコミどころも満載で、それを探すのも楽しみの一つかもしれません。(自分が得意ではないところはよく分かりませんが、科学分野では結構多いです)
しかし、ほとんどツッコミが入らないというのも少し怖い気が。ツッコミを入れると、ヘンな信者のような人が、おかしなことを言ってきたりします(私も一度ありました)。
by 風竜胆 (2017-07-04 10:42) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0