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二度、地方公務員災害補償基金支部審査会で逆転認定を受けた公務員 [労災事件]

公務中の事故で、外傷性頸部症候群等の傷害を負った方がいます。

地方公務員の場合は、地方公務員災害補償基金に対して
当該公務員の所属長が公務災害を申請します。

裁判みたいに三審制になっており、
先ず地方公務員災害補償基金都道府県、政令市の支部長が判断します。
ここで認められない場合は、
支部に設置されている外部委員で構成する
支部審査会で判断します。

ここでも認められない場合は、
本部の審査会で判断することになります。

どこかで認められれば確定ですが、
どこでも認められない場合は裁判になります。

但し、この様に三審制ではありますが、
なかなか逆転認定が認められることはありません。
例えば、平成27年の数字
http://www.chikousai.jp/gyoumu/fufuku/kensuu/h27/h27saisin.pdf
57件中3件しか認められませんでした。逆転率は5%くらい。

と思っていたのですが、
28年は、結構逆転してますね
http://www.chikousai.jp/gyoumu/fufuku/kensuu/h28/h28sin.pdf
152件中27件というのは、18%くらいの逆転率ということになりますね。

それにしても、請求自体が倍増していますね。
(請求件数と処理件数が違うのは、年度またぎがあるからです。)
無理な不支給決定が増えてないとよいのですが。

外傷性頸部症候群の公務員は、
支部長段階で後遺症があるにもかかわらず、
後遺症が無いと認定されました。
支部審査会で、やっぱり後遺症があると
認められたのでした。

実はこの方、同じ公務災害で
前にも逆転認定を受けています。

それは、この怪我について
お医者さんの言われるとおりに治療を受けていたのですが、
それは公務災害とは認めないとか
もう治療は終わっていると
治療を継続しているにもかかわらず、
一方的に打ち切られたので、
不服申し立てをした結果、
まだ治療は終わっていなかったと
逆転認定されたという経験があります。

同じ人で、同じ事件で
二度の逆転認定があったということは
おそらく初めてのことではないかと思います。

この時の支部長の治療打ち切りの理由がすさまじかったのです。
むち打ちは、通常3カ月で治るのだから、
もう治っているはずだ
というようなことでした。
保険会社も、そんなこと言わないだろうという勢いのはなしでした。

そもそも、外傷性頸部症候群は、むち打ち症だけでなく、
その他の症状が出るから症候群なのです。

しかも、複合的な外圧がかかった複雑な症状なのに
3ヶ月でという単純なむち打ちのケースを持ち出してくることにも
無理がありました。

今回の理由もひどかったです。
レントゲンやMRI等の画像所見が無いから
後遺症はないというものでした。

しかし、軟部組織の挫滅の場合は
画像に写りません。
画像に写らないから痛みが無いとは言えないのです。
後遺症について知らないようでした。

さらには、
ストレートネックの画像所見があるにもかかわらず
臥位で写した画像でストレートネックが見られないとして
ストレートネックが治ったと言いました。

臥位(横になっての撮影)の場合は
ストレートネックがあっても判断が難しいのに、
それを根拠にないと言い張るのです。

もっとあきれたことは、
明らかなストレートネックが撮影された日から
わずか5日後の画像だったということです。
5日でストレートネックが治るということはありません。
こんな判断を医師がしたということになっていますが、
ことによると医師は関与していなかったのかもしれません。

もし医師がそのようなことを本当に言ったら、
大変問題だと思います。
医師のコミュニティーでの自浄作用が
必要なのではないかと考えます。

是非、実名で
「ストレートネックは5日で治る」
という本を出版していただきたいと思います。

公務災害や労働災害は、あるいは交通事故もそうですが、
法律や判例だけを知っていても
解決できないことがお分かりになると思います。

医学的常識を持たないと
どの点がむちゃくちゃで理由がないことを言っているか
分からないので、活動しようがないということになります。

逆に医学的な知識だけあっても
公務災害や労災保険の制度を知らないと
本当は補償されるはずなのに
申請すらさせてもらえないこともあります。

例えば、ブルガタ症候群は
遺伝的要素が大きい疾患だとされています。
(但し、患者の25%程度しか、
 関与している遺伝子を確認できなかった
 という報告もあるようです)

だから、労災制度を知らないと、
ブルガタ症候群だから
労災の対象にならないという
変な思い込みをする医師もいたりするわけです。

労災は、基礎疾患を自然的経過を超えて増悪させる場合も含まれます。

つまり、医学と法律と両方をある程度わからなければなりません。
弁護士も、できるだけ多く医学的な事件
労災や交通事故等に関与し、
一つ一つの疾患について、
よく議論の内容を理解し、記憶に入れておくことが望ましいということになります。

とは言っても限界がありますから、
弁護士は、気軽に話を聞ける医師が身近にいる
お医者さんにアドバイスを受けられる状態にする
ということが実務的には有効です。

そうして作戦を練って
主治医の先生と相談したり、
鑑定を依頼したりするわけです。

はじめから丸投げでおねがいしても
有効な医学的証拠は得られません。

そうして、かつては開かずの扉だった
地方公務員災害補償基金の審査請求も
けっこう認められるようになってきました。

だから、支部長段階で認められなくても
医学的に、医師と連絡が取れる弁護士に
相談することが必要だし、
審査請求の件数が増大しているところを見ると
理不尽だと感じる不支給が増えている可能性もあることから、
先ずは、相談してみる価値がありそうだと
そう思いました。

最後に、今回二度目の逆転認定をされた公務員の方ですが、
先ずは、ご自分で、理不尽だという強い思いを持たれていました。
これが無ければ逆転認定はなされなかったと思います。

もう一つ、
ご家族の徹底したフォローがありました。
お一人では、なかなか打ち合わせに来ることも難しかったようです。
ご家族の支えがこの結果を導いたのではないかと考えます。

おめでとうございました。

それから最後に、
主治医の先生や当事務所のアドバイザー医師の先生
本当にありがとうございました。
何度も同じことを聞いても
時々しかうっとうしがらないで
粘り強く教えていただいたおかげで、
今回の結果につながりました。








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