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日大アメフト事件を監督コーチの処分で終わりにするなら事件は繰り返される [労務管理・労働環境]



日大アメフト事件は、監督、コーチらが除名を含む処分をされました。
もし、監督やコーチ、特に監督の人格上の問題で本事件が起きたならば、
それで終わりにしても再発はしないでしょう。

しかし、もし、今回の事件を起こした監督自身が
このような行為に出るように追い込まれていたとしたら
今回の監督ではなくても起こり得た事件だったと考えなければなりません。

現在の経済学は、人間は誤りを起こすものだという前提から出発します。
誤りを犯すものだから仕方がないというのではなく
どういうメカニズムで誤りが生まれるかいうことを研究し、
先回りして誤りを防止するという努力が積み重なれています。

対人関係においても誤りの仕組みを研究し、
誤りを防止することをするべきでしょう。

今回の事件の背景的問題として、
日大アメフト部が低迷していたという事情があり、
それは大学の評価が下がるという意識があったようです。
このため、アメフト部の成績を上げることが至上命題とされ、
そのために前監督が招へいされたという事情があるようです。

勝ちたいという自然なモチベーションではなく、
勝たなければならないという外圧がかけられていたということになります。

これは企業においてもありうることです。
売り上げが低迷しているために
外部からコンサルタントを招聘したり
ヘッドハンティングをしたりということがあるようです。

おそらく良い条件で抜擢されたのでしょう。
また、組織が困っている時に頼りにされることは
やりがいのあることです。

そうなると、信頼を裏切ることはできません。
一番いやな言葉は
「期待外れ」
です。

無理をしてでも成績をあげなければなりません。
無理をしてでも売り上げをあげるパワハラ上司と同じです。

この時、独自の方法論をもって
部下のモチベーションを高め、
モチベーションを合理的な方向への努力につなげることができれば
成績は上がっていくでしょう。

しかし、各大学、ライバル企業もしのぎを削っていますので、
そんな魔法の人間管理は対人関係学的労務管理を学ばない限り
到底できません。

そういうノウハウがない人たちはどうするのでしょう。
ここに奇妙な共通点があります。
成績の良い個人に依存するのです。

能力のあるものを叩いて
能力を絞り出そうとしてしまうようです。
指導能力のない人たちは底上げということを考えられません。

能力のある個人に徹底的につらく当たり、
無駄に活性化させ、
さらには、アンフェアな行動に出ることまでを期待します。
鬼に金棒作戦とでもいうようなものです。

今回は全日本大学選抜の選手にこれをやりました。
パワハラ過労死の犠牲者も、能力の高い人ばかりです。

能力のある人はフェアに活動していますので、
そこに軋轢が生じるものです。
この軋轢は、やる気と能力のある個人の
やる気を奪っていきます。
この延長線上に自死があります。

それでも、監督や上司は厳しく当たるしかありません。
合理的に伸ばす指導のノウハウがないからです。

軋轢は標的になった個人だけでなく
周囲にも広がっていきます。
人間の習性でこのような不合理に対しては
集団的怒りが形成されます。
この集団的怒りを抑え込むためには、
さらに強い力で先行攻撃をして、
個別に分断して抑え込むという方法がとられます。

そうすると、怖いものですから、
個人から発案することが無くなります。
言われたことをやるしかなくなるということです。
無力感に陥っていきます。

いつしか業績を上げることをまじめに追及することよりも
上司から気に入られるようにすることが
現実の目標になっていきます。

イエスマンばかりになり、
顧客や取引相手よりも
上司の期限が優先されていきます。
その延長線上に
法律や道徳よりも上司の命令を優先する
そういう仕組みができてしまいます。

日本企業低迷の大きな要因だと思います。

日大事件においてもコーチや監督の
行動のメカニズムを検討する必要があり、
これをしなければ、また同じことが繰り返されます。

これは日大に限ったことではありません。
他の大学、他のスポーツ環境や
経済環境に等しく当てはまることなのです。


一番の出発点は、
スポーツの目的のはき違えです。

その教義をすることが楽しく、
純粋に強くなる、あるいは楽しむということでなく、
母校の名誉や受験者数の増大、就職、金銭という
不純な目的が
人間を大切にする、人間に対する敬意をもつ
という当たり前の感覚を奪っていくということを
私たちは繰り返しニュース動画で見せられました。

部活動での活躍が
就職や進学に優位になる
こういうことを遅くとも中学生から叩き込まれてきたことが、
人間性や弱さを否定され続けてきたことが
今回の事件の背景として見過ごすことはできません。

これが日本経済の発展を妨げていると思います。

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コメント 3

junkweed

ドイホー様。初めまして。目黒虐待事件の記事はとても素晴らしくてかなり勉強になりました。しかし日大アメフト事件については残念な内容の考察だと思いました。ドイホー様がよく批判されるメディアの偏向報道の影響を受けて日大いじめをしてしまったことに失望を感じました。私が日大アメフト事件について徹底考察しましたので、是非とも御意見を頂きたいです。何卒よろしくお願いいたします。

http://www.junk-weed.site/archive/category/%E6%97%A5%E5%A4%A7%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%95%E3%83%88%E6%82%AA%E8%B3%AA%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C
by junkweed (2019-07-17 12:28) 

ドイホー

お返事遅くなりました。junkweed 様の報道の偏向、特に弱者に対する攻撃に対する問題意識に、大いに共感します。分析も精緻だと思います。ただ、日大アメフト部の監督コーチの行為について、若干論点設定のずれがあると思います。私も、監督やコーチが、該当選手に対して、例えば「ボールを持っていないQBにタックルしろ」とか、「けがをさせて出場不能にしろ」という具体的な明示の指示をしたということは言いすぎだと思います。この一文を入れればよかったなということはご指摘されて気が付きました。ただ、文中に書きました労働問題や企業問題などでの問題事例は、同様に具体的な言葉による指示はなされていないのです。また、今回の記事は、監督やコーチ批判ではなく、会社での管理職や担当者の批判ではなく、トップの問題として書いたつもりでした。いずれにしても、ご指摘は理解できるところであり、ありがたいことだと思っています。今後に活かさせていただきます。ありがとうございました。
by ドイホー (2019-07-31 09:11) 

junkweed

ドイホー様は日大アメフト事件を労働問題や企業問題に結び付けているようですね。確かに日大の当時のメディア対応、危機管理能力にはまずさがありました。しかし、本当にあれはトップの問題なのか疑問です。(まああの理事長見た目がヤクザのようで、イメージはあまり宜しくなかったし、悪い噂がとびかってましたが・・・)

悪質タックル事件で有罪バイアスをかけた責任を忘れ理事長批判に徹する教職員組合の不可解
https://www.ntksentercollege.work/entry/2019/05/07/230918

是非こちらをお読みください。私はトップではなく教職員組合に問題があると思います。これは最早手段を選ばない権力闘争です。

それから話が逸れますが、ドイホー様はタックルをした宮川選手は本当に勇気ある会見をしたと思いますか?自分を試合に出さなかったりきつく当たったことを恨み、監督とコーチを陥れたという可能性は考えられませんか?あの二人は指導者失格で時代遅れの頭の古い人間ですか?

この記事を読んでご意見をお聞かせください。
昨年悪質タックルで話題になった日大アメフト部前副将のインタビューを大学生が読んだ方がいい理由
https://www.ntksentercollege.work/entry/2019/06/15/132514
by junkweed (2019-08-09 16:05) 

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