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弁護士は家族トラブルなどの場合、もっと警察(生活安全課)に足を運ぶべきだ。 [家事]




先日家庭内トラブルの案件の仕事で新幹線に乗りました。
その地に住む依頼者と一緒に、他県の警察署の生活安全課を訪問するためです。
依頼者の相手方が警察に相談していたという情報があったので、
面談するべきだと思ったからです。
私にとってはいつもの普通の業務です。

犯罪をしてしまった人を担当する警察の部署は
刑事課という部署ですが
防犯、女性や少年の保護、その他の事案を扱うのは
生活安全課という部署です。
(ちなみに刑事課と生活安全間の警察官が刑事ですね)

私は、離婚、別居、面会交流の事案を多く担当しています。
依頼者の妻が家を出て
警察、生活安全課に相談していることが多いということもあり、
よく警察を訪問します。
できるだけ早く、依頼者を連れて生活安全課に行くようにしています。

警察に行く弁護士側の一番の目的は
警察に中立になってもらうことです。
家族間の紛争には、可能ならば公権力は入らないでほしいのですが、
それがだめなら、一方の利益で動かず、中立になってもらいたい
そういう思いがあります。

警察が間違った介入をすることは弊害が大きいです。
精神的に問題のある一方当事者の話を真に受けて
二人の関係を収拾のつかない状態に持っていくということがあります。
警察が味方しなかったほうは
行政や世間から犯罪者のように扱われてしまいます。
精神的なダメージが強く、重いうつ状態を招きます。

そればかりではなく、
子どもがどちらかの人質に取られた形になり、
長期にわたって精神的に不安定な親から逃げ出せないで
苦しみ続けるという事案が起きるからです。

しかし、こういう一方に利益が生じて
それ以外の当事者に弊害が大きく出るということには
構造的な理由があります。

犯罪をしたというのであれば、
警察は被疑者としてですが、
その人を呼び出して、その人から話を聞きます。

ところが、そういう犯罪としては取り扱わない
家庭内暴力、特に精神的暴力などの場合は、
被疑者としては扱いませんので、
対象者から話を聞くということがないのです。

ただ、防犯対象者として観察を続け、
何かあれば、すぐに出動して身柄を拘束したり
被疑者にしてしまうわけです。

これは、一方の側からだけ事情を聴くということから
不可避的に、どうしても起きてしまうことなのです。
警察官を利用して相手を遣り込めようという場合でなくても、
一方の側が感じた事情を一方的に聞くということですから、
誤りや、大げさや、勘違いや、ニュアンスの違い
ということがありうることです。
これが一つ。

もう一つは、話を聞くだけではなく、
一方当事者だけの顔を見ている、
苦しみや悲しみの表情を見ているということも大きなことです。

顔を見れば、人間は共感してしまう生き物です。
なんとなく、こちらを助けようという気持ちになるのです。
特に正義感の強い警察官は
困っている人を助けようと思ってしまいます。

その二つ、一方の主観に基づいて事案を把握することと
相談者の顔しか見ないということから
相手に対するイメージがとてつもなく悪い人間だというイメージを持ってしまいがちになる。
これが人間です。

精神的DVなんて言う暴力のない事案の相談の場合さえも
頭の中のイメージは、なたをもって妻を追いかけまわす
狂暴な夫のイメージを抱いている可能性があるわけです。

だから、もう一方の当事者である自分の依頼者本人から事情を説明させ、
本人の顔を見せることが重要なのです。
「あれ?イメージが違うな。普通のヒトっぽいな」
と思わせることができれば成功です。

そのために弁護士は何をするのでしょうか。

私の場合は、まず、事前にいついつ行くから対応してくれと
電話で予約を取ります。
ここで、多くは、「なにしに来るんだ」ということを言われます。

ここで中立になってもらいたいために行くのだ
ということをいう馬鹿な弁護士はいないと思います。
目的を聞かれているのではなく、
警察に来て、何を話すのだ
ということを聞かれているのです。

この時、警察のほうにも利益があるということを
アッピールしなければなりません。

警察の介入する目的は、一言で言えば防犯
危険の未然防止にありました。
だから、危険が存在しない、警察に協力する
ということをアッピールすることになり、
それは、双方利害が一致することなので
警察も訪問を拒否することができない
というところを説明しなければなりません。

ここでもそれをそのまま言う弁護士はいないと思いますが、
一応念のために電話の話し方を説明しますが、

当事者の家庭の問題に
公務とはいえ他人に介在してもらっているのだから、
家族が世話になっているということです。
だから、世話になっていることに対する感謝と
ご迷惑をおかけしたことの謝罪が第一の目的になる
ということは、世間の常識です。
(これはいろいろなところに訪問する目的になります。)

それから、こちらの把握している事情を説明したい
という事案解明についての説明も
公正中立という建前から拒否しにくい内容となります。

これを弁護士が代理する目的としては
一つは、主観的に口論をするのではなく、
一歩離れた全体像を把握して説明するということ、
相手方の言うように感情のままに怒鳴り散らす人間ではなさそうだ
という安心感と
何かあったら弁護士が制御するという安心感を与えることです。
(まあ、それほど心配していないでしょうけれど
 クレーマーみたいな人が来て抗議すると言えば
 忙しいから来年にしてくださいと言われることの反対をするのです)

予約の時間に遅れないように弁護士は依頼者を同行し
生活安全課に行くわけです。
総合案内のない警察署も多いため、
事前に聞いておくと生活安全課に直接来てください
と言われることが多いようです。

時間をとっていただいたことを感謝し、
本人に感謝と謝罪をしてもらい、
弁護士が把握している全体像を説明していきます。

きちんと依頼者の一番知られたくないことを知っていないと
争点把握ができないので、説得力はなくなります。
事情聴取はきっちり行っていなければなりません。

この時、相手方が虚偽の事実を言っているだろうなと想定できるところは
反対事情の裏付けをきちっと提出できるようにしておくべきです。
医師の診断書なんかはよく持って行きますし
コピーを用意していくことが多いです。
それから、スマホのラインやショートメールの画像は
すぐ出るようにしておいて、
プリントアウトしたものを渡せるようにしておくとよいでしょう。

真実がこれだと見せると
大変驚かれることが度々あります。
無ければ、信用されないままなのだと考えると
結構怖い思いをします。

警察官の仕切りを邪魔しない程度に
弁護士が話すわけですが、
当事者はなかなか理路整然と話すことはできません。
自分のことですから当然です。
また、当事者の意見はこうだけど弁護士としてはこういうふうに見ている
ということを話すことも有効でしょう。

ここでどっちが悪くて、あるいはより悪くて
こちらはむしろ被害者だとかいうことは
警察はあまり興味がないでしょうし、デメリットだけしか残らないでしょう。
この意味であくまでも目指すのは中立だということは
何度も意識する必要があると思います。
警察が興味があるのは、防犯です。
危険はありませんよということさえ言えば良いのです。

そして、当事者には、反省するべきことはしっかり反省してもらう。
これが大事です。
悪いと思っていなければまたやるのだろうと思うわけですから
自分の悪いところは自覚している
ということが大切です。

それから、どのような形で修復を考えているか
警察の方から見てどう思われるだろうかという
フィルターを付けて考えることは後々も有効です。

所要時間は1時間弱ということが多いようですが
時間は十分とっておいたほうが良いと思います。
時に待たされることがあります。

生活安全課の職員は、
各警察署でも人当たりの良さや頭の良さ勉強熱心の
エース級をそろえています。
勉強をしていますし、
現場を見ていますから、
実感と実態に即して話せばわかっていただけることが多いです。
加えて情がありますし、家族の再生も
他の公的機関よりもよほど考えてくれています。

上から目線ではなく、
私は、相談させていただきに行くという感じでお話ししています。
家族再生のヒントになるようなことをよく言ってもらっています。

こちらが相手を心配している事柄について
冬にあまり冬服を持たずに別居しているとか
生活費を送りたいとか
そういう事柄ならば、相手に連絡してくれることがあります。

ここ5年の直接面会して話した事例では
あまり悪い思い出がありません。
(電話だと一般論で押し切られてしまったことがありますが。)

先日の訪問では、
温かい言葉もいただき、依頼者も感激していました。
気になった言葉もあります。
防犯対象者から警察に来ることはまずないと
私たちが来たことに驚かれたことです。

これは警察の方からではなく当事者方の何人かからですが
自分も警察署に弁護士の何人かに同行を依頼したけれど
誰一人応じてくれなかったということを聞きました。

警察への同行は弁護士でしかできない仕事だと思います。
積極的に生活安全課だけでなく、
弁護士は警察署に同行するべきではないかと思って、
この記事を書いている次第です。






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