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「あなたも悪いところがある。」ということを言えない支援者は支援をやめるべきだという理由。但し、問題は言い方ということについて。 [事務所生活]



DV相談マニュアルなどには
「『あなたにも悪いことがある』と言ってはならない」
ということが記載されていることがあります。
これは大間違いです。それについてご説明します。

おそらく、なんでそういってはダメなのかわからない人が
マニュアルを作っているから
そんなマニュアルの言い回しで良いと思っているのでしょう。
また、それを形式的に真に受ける自称支援者がいることも確かです。

先ず、どのように言うことが相談者にとって有害なのかを説明しましょう。

一番の問題は、
相談者の話を長々聞いた後、
「あなたにも悪いことがあるから」
「我慢しなさい」とか
「気の持ち方ではないですか」
等と言って相談が終わってしまうことなのです。
これは確かにダメです。

ダメな理由1 
相談者もこんなことは言われなくてもわかっています。
自分にも悪いところはあるだろうと思わない人はいないので、
こんなこと聞くために相談に来る人もいません。

言わなくても良いことを言われた相談者にとって
長い時間、恥ずかしさも振り捨てて相談した「あの時間は何だったのだ」
という徒労感しか残りません。
他人に相談することは時間の無駄だということを
学習してしまうことになります。
誰にも相談しようとしなくなり
悩みを一人で抱えているうちに悩みが肥大化していってしまいます。

ダメな理由1は、解決の方法が全く示されていないということです。

ダメな理由2
わざわざ他人に相談に来ないわけにはいかない心理状態ですから、
苦しんでいることは間違いないのです。
先ずは共感を示すことが必要です。
それが相談対応の第1歩です。
最低限必要なことは
「共感をする」ことではなく「共感を示す」ことです。

間違いのない表現は
「あなたは苦しいのですね」と確認することです。

そうして次にどうしたらよいか一緒に考えるということになります。

ダメな理由2は、共感を示さないことです。

この二つがないのだから、およそ相談でも支援でもありません。

なぜこのパターン、「傾聴、共感を示す、一緒に考える」
ということができないかということを考えるべきです。

担当者に相談者の苦しみが伝わってきていないのです。
あるいは共感ができないのでしょう。
相談者を「気まま、ワガママ、子どもじみた自己中心的人間」
だと思っているのです。

そう思わせてしまう相談者の相談事は確かにあります。
しかし、それは話し方が下手なだけであり、
実際は深刻な事態の中で孤立していて苦しいのかもしれません。
先入観を捨てて話を聞いて、
色々疑問なところを尋ねてみることが必要です。

例えば、その人は、自分からは何も働きかけをしないで
家族からサービスを受けることが当たり前だ
というような感覚を持っているように見える場合があるわけです。
一緒に家庭を作っていくという感覚がないのではないかというわけです。

相談担当者は、極力相談者に否定的な態度を示さずに
人間関係の状態は相互作用で形作られると思うのだけれどと説明し
どうして相手を変えていこうとすることができないかということを
一緒に考えていくことが求められると思います。

また、どうして、自分は事態が改善されるのを待っていれば良い立場だと
考えるに至った起源を探ってみるということも大切なことです。
すると、自分の疑問が実は誤解に基づいていたということが
見えてくることがあります。

また、比較的多い原因の中で
誰かが善意ではあるけれど無責任な肯定を行ってしまっていて
自分の不満は正当であると思いこまされている場合もあります。
女性は受身であるから、
二人の関係は良くも悪くも男性次第であり
関係が悪いのは男性に責任があるから
女性はただ関係から離脱するものだという
ジェンダーバイアスのかかったアドバイスをする人が
今の世の中にも多くいるようです。

特に保守的だと自覚している相談担当者は
女性は男性に尽き従うものであり、
日々男性の提案に従うものだ
だから、男性が不十分であれば男性が悪い
女性から関係を作っていくための働きかけをする発想をもっても
女性にできるはずがない
というジェンダーバイアスの濃厚な相談回答をすることは
公的相談機関ではしてはいけないことです。

女性も家庭の主人公であり
自分たちのことにイニシアチブをとることを予定している
自分の思い通りの関係を作り上げていく
一個の独立した人格であるということを肝に命じましょう。
これこそが男女平等、男女参画の思想なのです。

このような積極的なアドバイスや問題解決の選択肢を提起するにあたって
必ず、相談者の改善するべき点について指摘しなければなりません。
それは必ずしも「悪い」という評価をされるべきことではなく、
あくまでも修正するべき点なのです。

あなたも「悪い」という言い方は、やはりだめな理由3なのかもしれません。

ここで相談担当者が気を付ける時は
修復可能な家族は修復するという観点から
相談者も「悪い」わけではないけれど修正するべきポイントがある
相手も「悪い」わけではないけれど修正するポイントがある
という言い方に徹底するべきことです。
これが人間の関係としては
当たり前の話なのだということを
相談者に対して説明するとともに
自分でも改めて自覚しなければなりません。

相談や支援とは
上から真実を教えるというものではありません。
あくまでも相談者に敬意を払いつつ
一緒に考えていくという作業なのです。

完璧な人間はいない
色々な人たちが不完全な人間に関わり合って
成長していくものだ
と思えば、人間みんなが尊敬できる存在だし
幸せになってもらいたい存在だと思えてくるものです。

それにも関わらずマニュアル通り
あなたも悪い(修正するべきところがある)
ということを言えないのでは
対等平等のアドバイスをすることができなくなります。

あまりいないかもしれないのですが
「あなたが悪い」と言えないからと言って
即物的に
でも相談者には困りごとがある。
先ず「あなたは悪くない」と言ってあげたい
そうすると「悪いのは相手だ」と言うべきなのかとして
他人の家庭を壊すだけの「支援」をする人も
いないわけではなさそうです。

また、本当に人間関係に悩んで
深刻な状態にある、絶望の淵にある人に対して
「あなたは悪くない」ということは
また、「あなたが悪いわけではない」と相談が終わることは
致命的な打撃を与えることがあります。

「悪くないのに自分は苦しい目にあわせられている」
という観念を持つことは解決不能感、絶対的孤立感を抱きやすくなり
危険な状態にさせます。

そもそもマニュアルなんてものがなければ相談に乗れない人に
深刻な相談を担当させることは
厳に慎むべきだということを最後に言っておきます。
人の相談はマニュアルで処理するものではありません。



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