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言った言わないで解雇の有無が争いになった件で、解雇と損害賠償が認められた事例。 [労務管理・労働環境]



今回は私は労働者側の代理人でした。
結局は会社代表者が口頭で解雇を言い渡した事件なのですが、
会社代表者の主張は、
「解雇を言い渡してはいない。労働者が勝手に怒って任意退職したのだ。」
というものでした。
さらにその解雇を言い渡した日も1日ずれて主張されたという
少しミステリー掛かった事件でした。

確かに、解雇通知の文書はありません。
言った言わないの争いという困難案件ではありました。

会社側は、解雇を言い渡した証拠がないので
解雇を言っていないと主張したわけです。
解雇であれば、その解雇が正当かという司法判断が入るのですが、
任意退職であれば、正当性の判断をまぬかれることになり
会社にとっては有利になります。
辞めろと言っておいてそれはないだろうということになりますが、
敵もさるもの引っ搔くものという戦術できたわけです。

情けないことに労働基準監督署は
解雇をしたという認定ができないということで途中で放置し
それが会社の自信にもなってしまったという事情があります。
嘘をついても何とかなるということですね。

労働者側は当初は労働審判を申し立てました。
ある程度の損害を払ってもらってさっさと手を切ろうというものです。
裁判所からもあっせん案が出たのですが、
会社はあくまでも解雇していないということで応じませんでした。
審判が出ても会社が応じないために本裁判になりました。

結局裁判では解雇をしたことが認定されたわけですが
どうやって言った言わないの事件で勝てたのか。
一つには、それ以外の事実を丁寧に積み重ねていき
解雇を言ったことを浮き彫りにしていくという方法で証明していった
ということです。
決定的証拠がなくても裁判は勝てることがあるので
文書がないから負けるとあきらめるのは早計です。

次は、余計なことを会社はしゃべりすぎた
という自滅が起きています。
辞めさせたいくらい嫌な労働者ですから
つい解雇は正当だと
当該労働者側の落ち度を主張したくなるわけです。
そうであれば解雇を認めたうえで主張をするべきです。

解雇を否定したまま、解雇されるべき労働者だという
主張を全開にしたため
裁判所からは、
「なるほど、会社は解雇したい事情があったのね」
「じゃあ、解雇したんじゃん。」ということになるわけです。

解雇日もずらしてしまったのは致命的なミスです。
会社側の主張では、その日は既に解雇していたのだから
できるはずのない労働者の行為が
実際は行われていたという動かぬ証拠が出てきてしまったのです。
証拠がなかったはずの事件にわざわざ証拠を作ってあげた
という自滅行為をしたことになります。

会社の従業員が証人になりましたが、
わからないはずのことを答えてしまっているところを突かれて
反対尋問にはまったく答えられず
信用ができないことが裁判所においてはっきりしてしまい
やはり自滅になりました。

結局、労働審判の3倍の請求が判決で認容され
高等裁判所まで争ったので当初の和解金と同額の利息が付いてしまい、
会社は和解案の金額の4倍を払う羽目になってしまいました。
おそらく会社の弁護士費用も合わせると
提示された和解金の6倍くらいを支払ったということになるでしょう。

労働者側の完全勝利で事件は終了しました。

教訓
会社側の教訓は
被害を無かったことにしようとするとかえって莫大な損害を受ける
最小限度に止めようという発想こそ経営の発想である
というところでしょうか。
また、自分の依頼した弁護士の説得を真面目に検討することは
結局は自分の利益になるということです。

労働者側の教訓は、最後まであきらめないことです。

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