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児相の保護という隔離の後に、直ちに親子再生の働きかけを行う切実な必要性 [家事]

痛ましい児童虐待の事件が報道されると
二者択一的な論調は、
実力による保護を訴え、警察権力の導入などを声高に叫びます。

しかし、私のように保護期間終了後の方々に関わる者からすれば、
問題は保護という名の家族の隔離をした後のことが
当該児童にとっては何よりも大切なことなのに、
それが十分行われていないということを常々感じます。
そのことを議論しないで
隔離だけを優先するということはあまりにも
児童のその後の人生において無責任だと思っています。

結論から言えば
家族を一時的に分断した直後から
方法を工夫しながら面会などの交流を開始しなければならない
ということです。

肝心なことは、
保護や施設入所は高校を卒業するまでなのです。
それまでは、施設所長の名前などで
保護者の代わりを書類上は行っているのですが、
進学や就職に関しては
保護者の関与が必要であることがほとんどです。

また、住居一つとっても
児童養護施設を出ていかなければならないのに
住む場所もないわけです。
生活費も何か保証されているものでもありません。
極端に言えば、社会に放り出されているのです。

家庭に戻れれば良いのですが
児童は家庭に戻れないことがあります。

一番の原因は、
自分が家族に受け入れるという自信が持てないからで、
その原因は長期に生活を別にしていることです。
家族だからと言って、長期間別々に住んでいながら
さあ、出てきたから一緒に暮らしましょうということは
時間の経過ということが原因となってできないみたいです。

例をあげます。
施設を卒業して
住み込みでの仕事をしていた方の自死の介入に関与したことがあります。
まるで、愛着傷害の子どものように、
自分を尊重してくれる人間に対してはべったりとした関係になるけれど
普通にルールを厳守するよう指示をしただけの人も毛嫌いして
自分が排除されているのではないかというような
精神的ダメージを受けてしまっていたようでした。
その結果、
リストカットがどんどん増えて、また深くなっていき、
緊急で入院して一命をとりとめたという事案もありました。

幸いなことも多く
入院費用も、いろいろな協力を得て社会保障の制度内で支払うことができ、
その後も多くの人の好意で働くまでに回復したのですが、
どうしても人間関係がうまくいかず
その後の連絡は来なくなってしまいました。

そういう場合でも
家族の元に戻ろうとはしませんでした。

このケースでも形式的な家族の再統合は試みられたようです。
しかし、再び家族として生活をするということまではできず、
この現代日本の中で子どもは孤立してしまいました。

自分に自信を持てないために人の顔色を窺っていました。
それは生きづらさを感じるでしょう。
自分が相手から受け入れるかどうかは、初めから決められていることではなく、
自分の相手に対する働きかけによってもだいぶ変わってくる
ということを学ばないで社会に出されたということなのだろうと思います。

別のお子さんも
元々は仲の良い親子でした。
どうして保護分離がなされたのか納得のゆかない事案です。
私から見ると
そのお子さんは、
親とうまくいかなかった出来事を記憶の中から穿り出して
敢えてうまくいくはずがないという結論を出しているような
そんな印象を受けることばかり言っていました。

単に自信がないのです。

これまで何年も親子を分断して
誰からも保護されなくなるからさあ保護しろと
親に言っても、親も反発するでしょうが、
もっと深刻なことは子どもが親に関わる自信がなく
親に会うことすらおっくうになっているということです。

色々な事例で個別的な理由があるとは思いますが、
一番は会わない期間が長すぎるということです。
家族分離をさせたこと自体で
小さい子供は自分が悪いから孤独になっているのだと思いますし、
少し年齢が上がれば
自分が当たり前だと思っていた日常が
実は親が自分を虐待していた日常だった
自分の記憶に反して、自分はひどい目にあっていたのだ
という意識が蓄積されていきます。

それでは、日本の制度では、子どもいつまでたっても孤立していくのです。

今子どもが虐待死しなければ良い、
本当は理由がなく不合理に苦しむ人たちが出ても
一人の子どもの命を救えればそれでいいやという思想ならば
現在の制度でよいかもしれません。

養護施設卒業後は、また別の問題だというのかもしれません。
それなら早くその別の問題を解決してもらいたいです。
実際は少なくない子どもが18歳で社会に放り出されているのです。

どうしても今の保護制度、今の日本社会では
最終的には親の力が必要になります。
それが現実なのに、当然訪れるはずのこの出口に向かっての活動が
極めて不十分だと思う事例が多いのです。

その一番の問題は
親子の絶対的な分断の時間が長すぎるということです。

分断を始めたら
できるだけ早期に
親子面会が実施されなければなりません。
様々な工夫が必要ですが、
このまま18歳まで一緒に暮らせないという絶望を抱かせないことが
スムーズな面会実施のポイントになると思います。

また、ファミリーソーシャルワークの専門家も同席し
各家庭の課題ないし改善目標を明確にすることも必要でしょう。
それを上から押し付けるのではなく、
一緒に考えていくことが必要だと思います。

そのためにも長期の分離という絶望的な事態は
くれぐれも必要最小限度の範囲にとどめるべきです。
希望を持てること、希望への道筋をはっきりすること
そしてそれに向けて応援されているという実感を持ってもらうこと
これが大切だと思います。
そのためにはあらゆる工夫をして、直接の家族交流が
定期的かつ必要な時に随時行われる必要があると思います。

大切なことは警察と権力の増強ではなく、
一緒に考えるスタッフの増員のはずです。

分離後も子どもの人生が続くというリアルを
どうか考えていただきたいと思います。
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