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死のうと思わないで行った行為で「自死(自殺)」してしまう現象について 過料服薬(オーバードーズ)「自死」未遂をした人からお話を聞きました。 [自死(自殺)・不明死、葛藤]


おそらく多くの方は、誰かが自死したという情報に接すると
死にたいくらいつらいことがあって
そのつらいことから逃れようとしたのだろう
と思うことでしょう。

何か自死するほどの出来事があったはずだという前提で
自死の理由をあれやこれや詮索するでしょうし、
あるいは誰かを自死に追い込んだ犯人として非難するかもしれません。

また、自死を予防するとは、死のうとしている人を発見して
死ぬことを思いとどまらせることだ
と考えていらっしゃるかもしれません。

しかし、話を聞くと、いろいろな自死の形があるようです。
うつ状態をともなう精神疾患にり患した方々から聞いた話を紹介します。
もしかしたらこういう形の「自死」が多いのではないかということです。

まずは仮にAさんとしましょう。
Aさんは、何年か前に職場で同僚との人間関係をきっかけに
うつ状態を伴う精神疾患にり患し、
労働災害であると認定されました。

Aさんは、抑うつ状態が長く続くこともあるのですが、
一見普通に話ができているように見えることもあります。
ただ、私たち健常者からすれば普通の日常生活である
仕事とか、他人との交流とかをすると
それだけで疲れ切ってしまい、
反動で数日間も寝込むという状態が起きてしまうそうです。
とても出勤をすることはできない状態です。

そんなAさんが、自死未遂で救急搬送されたことがあったそうです。
睡眠薬の過剰服用でした。
ところがAさんは、死のうという気持ちは全くなかったと言います。

ただ眠たいのに眠れない。だから睡眠薬を飲んだ。
それでも眠れないからもっと飲んだ。
それでも眠れないからもっと飲んだ。
この連続が結果として過剰服薬になり、
命の危険があったため救急搬送された
というのです。

睡眠薬を飲み続けているときは
何かにとりつかれているように飲まずにはいられなくなり、
自分で自分を抑制することができない状態だったようです。

Aさんの言葉は印象的でした。
「死ぬつもりはなかったのに
気が付いたら自死していたということになったかもしれない」
と言うのです。

うつ状態を伴う精神疾患ですから
周囲は、本当はそういう事情だったということは分からずに
自死したのだと判断することになるでしょう。
死のうとして薬を過剰に飲んだと考えることでしょう。

もしかしたら、
自死と認定された事例の中で
相当程度はこのような事案があるのかもしれません。
つまり、
(Aさんの場合は突発的に)①強い精神症状が起きてしまい
②精神症状が原因で自己制御が効かなくなり、
③今解決すること(Aさんの場合は眠ること)だけを目指してしまい、
④他の事(死んでしまうこと)を考えることができなくなり、
⑤結果として死んでしまうということが
あるのかもしれないということです。

実際の自死事案でも
このような①から⑤の流れで自死が起きたとすると
とてもうまく説明できる事案はあります。

次にBさんの話を紹介します。
Bさんも、症状の波のある方で、
精神症状(病的状態)が急に悪くなる時期があるそうです。
抑うつ状態がひどくなるようです。

ある夜、家族に
「死んでしまおうかな」とぽつりと言ったそうです。
家族はびっくりして、一晩中Bさんを監視していたそうです。
うっかり眠りに落ちてしまうとすぐに目覚めて
Bさんが生きているか何回も確認をしていたようです。

ところが後で、精神症状が落ち着いてから家族がそのことを話すと
Bさんは、「そんなこと言ったかなあ。」
とまるで覚えていなかったそうです。
Bさんとご家族の両方からお話を聞いたので、
どうやらそういうことがあったようです。

何か原因があって死のうとしているわけではなく、
突発的に死にたいという気持ちがこみあげてきてしまったようです。
これがうつ状態を伴う精神疾患の
本当に恐ろしいところだと思いました。

直接の原因がなく、死のうと思ってしまい、
その手段を考えついてしまい
その手段を思いとどまろうとする自己制御ができなくなり、
後先考えずに死の危険のある行為をしてしまう
ということになってしまいます。

このようなパターンの自死の危険のある人に
「命を大切にしましょう」と言えば
「それはそうですね。大切ですね。」
と心の底から同意されると思います。

「悩みがあったらどこどこに相談してみてください」
と言えば、
「悩みがあったらそうしましょう。」
と心の底から納得され、本当に悩みがあれば相談するだろうと
ご本人も思うわけです。

しかし、①精神症状が強くなると
そのようなことは一切忘れてしまい、
②自分の一番自覚している感情を何とか解消しようと思い
③考えついた手段を止めることができなくなり、
④その結果、自分の命がなくなり取り返しがつかなくなることも忘れ
(あるいは正確に認識できなくなり)
⑤死の危険のある行為を実行してしまう。
ということになるようです。

そうなると、
既に精神症状が出てしまってからだと
命を大切にしようとか
悩みがあったら相談しようといっても
自死予防には有効性が乏しいのかもしれません。

但し精神症状が強くなる前であれば
誰かに相談することによって
悩むことを解消できるならば
自死予防への効果があると言えるかもしれません。

今あなたが抱えている悩みが
精神症状を引き起こしてしまい
死の危険のある行動をする原因となり
結果として自死に至るということを
みんなが理解する必要がありそうです。

どうやら人間は我々が思っているよりも
簡単に精神的な破綻を起こしてしまい、
簡単に死んでしまうことができる
ということのようです。

また上に述べた①から⑤の流れが起きるとすると
それは過剰服薬に限ったことではなく、
他の手段を使った自死の場合も
同じかもしれません。
①精神症状(病気というわけではないにしても)が強くなり
②当面の課題を解消することだけが要求になってしまい、
例えば翌日のプレゼンを行うことをしたくない
嫌な上司と顔を会わせたくない
何かいじめられて馬鹿にされたくない

③課題解消の手段として死の危険のある行為を止めることができなくなり、
④課題解消をすると命を失い、さまざま
⑤死の危険のある行為を実行してしまう。
ということが起きることがありうることを意味しているような気がします。

②の心理状態が理解しにくいと思われます。
例えとして挙げることも躊躇するのですが、
戦前の拷問にこの心理を応用したものがあります。

人間は眠りたいという要求がとても強いそうです。
拷問の内容は、無理に眠らせないというものです。
大量の光線を浴びせたりその他の手段で
眠ろうとするところを眠らせない
そうすると、どうしても眠りたいというのが生物のようで、
眠らせてほしいために、
捜査機関の都合の良い自供を始めてしまう
一度自供をしてしまうと再び抵抗する力が失われてしまい
捜査機関の言いなりになってしまう
ということがあったようです。

これは、人間の動物としての生理的問題でどうしようもないのですが、
自供をするのは、思想が甘いとか、信仰が薄いとかいうことになってしまうので、
一度自供してしまうと堰き止める手立てがなくなってしまうようです。
禁煙を誓って煙草を1本吸ってしまい、
抵抗力がなくなって禁煙をやめてしまうことに似ているようです。

死の危険があるほど深刻な問題でなくても
かゆいからと言ってひっかいていると
ますますかゆくなって、皮膚がボロボロになっていく
ということも
痒さからの解放のために
ひっかくことをやめられなくなっている状態
ということになると思います。

掻けば掻くほど悪くなるという理性が働いているうちは良いのですが
痒みが強くなってしまうと理性が働かなくなる
ということと似ているのではないでしょうか。

意志の力というものに
それほど期待はできない
ということを
頭の中に叩き込んでおく必要がありそうです。

自死予防の柱は
今死の危険のある行為をしようとする人を
力づくで止めるか
死につながりかねない精神症状を起こさないために
人間関係の状態と言う環境を改善すること
となるのではないかと
考えさせられた対話をご紹介いたしました。

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