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「嘘」をつく人間はいくらでもいる それで人生を台無しにされた人間もいくらでもいる 自由と民主主義のために杉田水脈議員を擁護しなくてはならないのか [弁護士会 民主主義 人権]



杉田議員の辞職要求の署名が13万筆集められたそうです。
それを自民党に対して提出しようとして、受け取りを拒否された
という報道もなされました。

どうも私は人と感じ方が違うようで、
この動きには大変な不安を覚えています。

この動きの元になったのは杉田議員の言論です。
直接のきっかけになったのは
「女性はいくらでも嘘をつく」という発言です。
この発言をしたことは杉田議員も認めているようですから
発言自体は存在したのでしょう。

また、この発言だけで13万筆署名が集まったというよりも
新潮45に寄稿した文章や
伊藤詩織氏の事件をめぐる言動など
これまでの言動の蓄積が背景にあることは否定できないことでしょう。

しかし、これまで内閣の中枢にいる人物や
与党の役職を担う人物が失言をしても
13万筆の辞職要求署名は集まるということはあったでしょうか。
自由や民主主義、三権分立を否定する発言に
ここまでの抗議活動はあったでしょうか。

そして、今回の杉田発言が
それらの失言以上に非難されるべき言動だったのでしょうか。
この点を吟味する必要があると思いました。

報道によりますと、杉田氏の発言は、自民党内の会議の中で
性暴力被害者の相談事業について、民間委託ではなく警察が積極的に関与するよう主張。「女性はいくらでも嘘をつける。そういう方は多々いた」などと発言したとのことです。

確かに、「女性は男性と比較して嘘をつくことに抵抗は少ない
という属性を持っている」という発言であれば
これは人間の個性を無視して類型的に属性によって評価するもので
差別であると思われます。

しかし、性暴力の文脈で、
嘘をつく女性は多々いたということ
つまり女性の中にも嘘をつく女性はいくらでもいる
という発言ならば間違ってはいないと思います。

痴漢冤罪の例が典型的でしょう。
この事件類型は
男性が自分は痴漢をしていないという発言に対して
被害女性はうそをつかないという先入観から
無実の男性が痴漢扱いされて仕事を失い
家族も加害者家族とされてしまうという悲惨な出来事であり、
自死に追い込まれたケースもあったとおりです。

無実の人間が証拠もなく
嘘に追い詰められていき
孤立化させられ精神を破綻させられるのです。

夫婦間の問題でも女性の嘘(この意味は後で明らかにします)
が横行しているというのが実務感覚だと思います。

夫婦間においては暴力や暴言がなくとも
女性が追い詰められてしまうケースがあり
「適切な支援」が必要な事例は山ほどあります。

それにも関わらず、
夫からの暴力はないと言明してしまうと
相談機関はとても冷淡になり、
それはあなたのわがままだという扱いを受けた
という私の依頼者も複数いらっしゃいます。

だから、情に厚い相談機関は、
この女性は保護しようと思うと
どうしても暴力や暴言があったという方向に
誘導してしまうのかもしれません。

目の前の人を救おうとする気持ちが強く
それによって人生が台無しにされる人間たちが生まれてしまうことを
きちんと考えることができなくなるのです。

女性も支援を受けるためには
夫から何らかの暴力や暴言があったと
言わざるを得ない状態に誘導されているケースもあります。

夫婦間暴力に関する「女性の嘘」の多くはこうやってつくられている
というのが実感です。
それは民間の相談機関に限った話ではありません。

それでもひとたび嘘が発せられると
保護命令が虚偽の事実で裁判所から出されて
保護命令を背景として離婚手続きを有利にする
結果的にはこういう事態が相当数あるということが現実です。

そうして、DV夫とされた男性は
妻を失い、子どもを失い
自分が全否定された感覚となり
家族と関係の無いところの人間関係さえも
自分を排除しようとしていると過敏に受け止めるようになってしまうのです。

こういう男性群は、
不思議と仕事や趣味や社会活動に有能な人間が多いのですが、
喪失感によるダメージや
過敏反応による攻撃性のため
自分の力を発揮できなくなってしまいます。

社会的地位の高いとされる男性たちが
かなりの人数自死に至っています。

DV夫とされた男性には反論の機会も
是正する手段も与えられません。
不合理を是正しようと戦うと
妻の心理的圧迫を強くするうえ
解決手段がないという本当の不合理に沈んでいくしかありません。

だから、杉田水脈議員の言い方はともかく、
女性の暴力被害の真実性を吟味する必要がある
という主張ならば
少なくともそれは取り上げられて、十分検討する必要はある
ということになります。

言い方が悪かったから辞職しろという短絡的な
暴力的は行動は
議論するべき議論をさせない効果しかうまないでしょう。
未だにどのような文脈でこの発言出てきたか
詳細は明らかにされていません。

確かに、いま何を言っても否定される
という事態だと杉田議員自身は感じているでしょう
身内からリークがあったことにも恐怖を感じていると思います。
しかし、衆議院議員という立場ならば
正々堂々と、ご自分の主張を国民に伝達することに
粉骨砕身努力するべきだと思われます。

また、民主主義に価値をおく人間たちならば
きちんと公開での議論を主宰し
発言の機会を与えるべきだとも思います。

辞職署名というやり方は
言論活動を否定し、議論によって最良の方法を見出していくという
自由と民主主義を否定する行動になる可能性があると思います。

ニーメラーという牧師が
ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった 私は共産主義者ではなかったから
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった 私は社会民主主義者ではなかったから
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった 私は労働組合員ではなかったから
そして、彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった
という演説をしたとされています。
これは共産主義者を守ろうというところに主眼があるわけではありません。

自由と民主主義を守るためには
自分が不愉快に思う言論も守らなければならない
ということを言っていると思います。

これまでどう考えても言い訳の効かない政権与党の重鎮の発言で
辞職要求署名活動が起きなかったに
今回の辞職要求署名が集まったことには
我が国の自由と民主主義の状態の脆弱性が見えるように
私は感じます。

杉田議員の発言には
私の実務家としての立場からも批判するべき点があります。
仮に民間委託先ではなく警察権力が介入するべきだという発言が
それによって、女性の嘘から無実の男性を守ることができる
と考えているのならば
全く現実を分かっていない勉強不足です。

警察も、女性の発言が真実かどうかの
調査をしないことがほとんどだからです。
なぜか、
まずいわゆるDV法がそういう法律だからです。
女性が警察に相談をすれば、それだけで
要支援者、被害者とされ
支援措置が取られます。
夫から逃がすために子どもの連れ去りと
連れ去り先の隠匿を警察が支援してくれますし
役所も支援します。

つまり女性の発言が真実であるか否かは
初めから調査しない手続きだからです。
そして、総務省は、
夫が女性に加害を与えていなくても
「加害者」と呼ぶことにしているのです。

加害を与えていなくても
相談をして要支援者、被害者とされた女性の夫
という意味が加害者なのです。

実際に公文書の記録で残っているケースでも
統合失調の患者さんが夫の暴力があるという妄想に取りつかれて
警察に相談に回されたら
DVは一生治らない、命の危険があると言われて
2時間も説得されて別居したというケースがあります。

男性は言いがかりのような容疑で逮捕勾留され
職場の映像までテレビで全国放送されました。

幸い職場の上司にも理解していただき
多くの支援者が集まり
刑事事件も起訴猶予となり
保護命令申立も棄却されましたが
子どもとは会えないままです。

杉田議員のこれまでの言動からすると
民間相談機関の攻撃をしたかったのだろうということは理解できます。
本当の原因に敢えて蓋をして出先機関だけを攻撃しているような
印象を持ってしまいます。
もっと、全体の国民の正当な利益を擁護するという観点に立って
主張を展開していくことが必要だったと思います。

誰かを攻撃するということよりも
この場合では即時的には無実の人間に不利益を与えないということと
何よりも子どもの健全な成長という視点から
議論を再構築していただきたいと考えます。



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Yamanaka

>社会的地位の高いとされる男性たちがかなりの人数自死に至っています。

 根拠となるデータや調査はあるのでしょうか?
by Yamanaka (2020-10-19 21:32) 

ドイホー

お久しぶりです。データありますよ。
by ドイホー (2020-10-21 15:32) 

仙台のH

お久しぶりですm(_ _)m 為になるブログいつもありがとうございます。最近は元妻との関係も修復し時間にも余裕が出来たのでよく先生のブログを読んでます。先生のブログは鋭くとても深い内容なのでとても参考になります。

杉田議員の件は実は私も単に「杉田議員はとんどもないやつだ」で済まされるのか考えていました。きっかけは杉田議員の知人の漫画家です。内容は「枕営業大失敗!」というイラストです。初めは杉田議員の知人もとんでもないと思いましたが、身近にあるのではないかと考えました。そしたらありました(笑)私は今の職場に異動した時驚いた事があります。それは保険のセールスレディーが毎日来てるのです。5社が入れ替わり立ち替わり来てます。酷い時は5社勢ぞろいしてトイレまで掻き分けないと行けません。しかも新人を売りにした若い女性達です。きれい系やギャル系までいます。私はギャル系は絶対に入りたくないです。年配の女性やセールスマンは来ません。一度だけベテランのセールスレディーが来ましたが、それは理由があります。男性職員がしつこくセールスレディーに食事に誘うので危険を感じたセールスレディーがベテランのセールスレディーを呼び男性職員を追い返したくらいです。今時ネットでも入れるのになんで毎日来てるのか分かりませんでした。しかし直ぐに毎日来る理由が分かりました。それは私の職場は男の職場なのですが、男性職員の足元を見られているのです。更にそれを見越してか知りませんが、男性職員もコバエホイホイのようにセールスレディーに吸い込まれて行くのです。挙げ句の果てに全然関係ない清掃の委託男性職員まで「こんにちは!アンケートに答えますよ!」と言う始末です。アンケートに答えることは悪くないですがセールスマンだったら絶対に自分から声をかける事は無いなと思うのです。みんなスルーすると思うのです。コバエホイホイのようにセールスレディーに吸い込まれた職員はアンケートや挨拶をするだけではなくコーヒーなど飲み物まで差し入れをするのです。更に彼氏がいるかなど保険と関係ないプライベートな事まで聞きます。年配の男性職員で「若い女性が保険を売り、男性職員は保険に入る。そしてその見返りにデートをする。そういうのもありだ」と言った人もいます。女性を見下した思考で時代錯誤も甚だしいですし、男性職員の足元を見てセールスする方もする方です。しかしこれが現実です。私はとんでもない部署に異動してしまいました。前に居た課とギャップが大き過ぎます。こういう事はこの職場だけであって欲しいです。少し主旨とズレてるかもしれませんが杉田議員の発言を考えるきっかけでした。安易にとんでもない議員だと言えなくなりました。

仕事にブログに多忙とお察しします。どうぞお体に気をつけて下さい。これからも先生のブログを楽しみにしています。
by 仙台のH (2020-10-22 00:20) 

Yamanaka

>データありますよ。

 具体的に、どのようなデータでしょうか?
 例えば、国(厚生労働省・警察庁)がまとめた「平成30年中における自殺の状況」(https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H30/H30_jisatunojoukyou.pdf)によれば、日本全国で平成30年(2018年)に自殺した弁護士は8人、「議員・知事・課長以上の公務員」が22人、「会社・公団等の役員」が193人、「会社・公団等の部・課長」が103人となっていますが、他方で、「サービス業従事者」が799人、「技能工」が922人、「労務作業者」が1045人、「大学生」が336人、「主婦」が1095人、「失業者」が682人、「年金・雇用保険等生活者」が5484人となって、動機を問わず、社会的にエリートないし権力者とみなされる範疇の人々の自殺者の絶対数自体が、土井先生のおっしゃるように突出して多いようには見えません。
 この調査データの「表6 職業別、原因・動機別自殺者数」を見ても、「家庭問題」を動機として自殺したエリート男性の数が際立って多いとは思えませんが。
by Yamanaka (2020-10-22 21:39) 

ドイホー

仙台のH様 いつもありがとうございます。杉田さんは、公務員時代の経験を踏まえてこの種の発言をしているようです。言葉が足りないということもあるのですが、なかなか伝わりにくいことを無理に主張しているので、ますます伝わらず、こういう結果になっているようです。但し彼女がどうのと言うよりも、ネット炎上と同じような構造で政治的運動が起きているような所が危ういという問題意識があります。
by ドイホー (2020-10-24 23:04) 

ドイホー

ヤマナカ様 いつも読んで頂いてありがたいのですが、突出して多いとか際立って多いとかということを統計的に言っているわけではないことはご理解されているところと思います。このブログの特に家族のテーマについては、記載して文章に責任を持つのは私ですが、一人で作成している訳ではありません。私たちは、実際に孤立して自死している人たちを名前や職業、生き様と亡くなった状況という具体的なデータを共有しているのです。生前の時間を共有した人もいます。具体的な人間を念頭において書いているのです。
by ドイホー (2020-10-24 23:16) 

Yamanaka

>私たちは、実際に孤立して自死している人たちを名前や職業、生き様と亡くなった状況という具体的なデータを共有しているのです。

 その種の「データ」は一般に公開されておらず、客観的に検証可能なもの、第三者の眼で同じように読み取れるものではありません。その種の「データ」に価値がないわけではなく、政策変更を公的機関に求める根拠としては説得力に欠ける、ということです。
 土井先生がいくら「私たちは具体的なデータを共有しているんだ!」と声高におっしゃっても、実際に政策変更の権限を握る政治家や官僚は何も動かないと思いますよ。
by Yamanaka (2020-10-25 19:02) 

ドイホー

yamanaka様 貴重なご意見ありがとうございます。ほかのブログを書く人たちはわかりませんが、政策変更の権限を握る政治家や官僚を私のブログで動かそうとはさすがに考えたことがありませんでした。志が低いのかもしれません。しかし、誰かを動かそうとするとき、その誰かが科学の成果を尊重して動くという習性がある場合には、検証可能な主張を行う必要があるということはごもっともです。政策に限らず、人間の感情を考慮できない裁判など他者を動かすときに何らかのデータという説得力が必要で、それは課題とされるべきだという意味ではその通りだと思います。
by ドイホー (2020-10-26 09:39) 

Yamanaka

>突出して多いとか際立って多いとかということを統計的に言っているわけではない

 普通の人は、「多い」という言葉で形容されれば、統計的・数量的な意味で理解すると思います。少なくとも、先生がおっしゃるような

>名前や職業、生き様と亡くなった状況という具体的なデータ

 という意味での「多さ」は、歴史や社会学の専門研究者なら理解するでしょうけど、一般市民には近づきがたい概念ですよ。

>志が低いのかもしれません

 ブログを拝見するかぎり、先生は「志が低い」どころか、社会を変えよう、そのために、根本的には、法制度のあり方を変えようとされているとお見受けします。
 日本は良くも悪しくも「行政の国」であり、子どもの一方的連れ去りを禁ずるハーグ条約に日本が加入する動きも、総務官僚の中堅どころの人たちが根回しに動いたからこそ実現したのでしょう。今でも、総務省のキャリア官僚の人自ら国会に出て、かなり早い時点で実態を証言している動画(https://www.youtube.com/watch?v=s7vvZ-0Z4Ng&ab_channel=%E6%A6%8A%E5%8E%9F%E5%B9%B3)が残っていますよ。このような証言は、総務省の組織としての意向をバックにしなければ、あり得ないことです。

>具体的な人間を念頭において書いている

 そういうことであれば、土井先生や先生を支えておられる人々で、濃密な事例記述を軸とするエスノグラフィックな著作を世に問われてはどうでしょうか。他に類書の少ない良書になると思いますよ。
 
by Yamanaka (2020-10-28 22:04) 

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