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うつ病患者さんの家族に対する支援を充実させなくてはならないのではないかということ [自死(自殺)・不明死、葛藤]



「うつ病が伝染する」という表現が使われることがあります。
もちろんうつ病はウイルスや細菌に起因する病気ではないので
おそらく伝染の定義には該当しないと思います。

ただ、うつ病患者を抱えている家族は
精神的にも追い込まれて、家族も治療が必要な状態になる
ということは少なくないようです。

ある母娘の話ですが、
年配のお母さんがうつ病の方で、
私が継続的に法律相談を担当していたのですが、
お願いして付き添ってもらっていた娘さんが
とても険しい顔つきをした方でした。

お母さんには、私の師匠とも言うべき精神科の先生を紹介して
順調に回復してゆきましたが、
ある日、お母さんの付き添いでやってきた娘さんが
とても晴れ晴れした表情をしていました。
ずいぶん若返ったみたいなことを
年配の私だったから図々しく言ったら、
「そうなんだ」というのです。

お母さんの治療が効いたため
うつ病からくる後ろ向きの発言をしなくなったから
一緒にいて苦しくなくなったのだというのです。
なるほど、眉間のしわがなくなっていました。

うつ病の治療経過は
家族の表情で分かるのだなあと学びました。

後ろ向きの発言とは
他者の言動を悪くとらえる被害妄想
自分や家族の将来に対する悲観
自分の存在価値の矮小化
自己否定など
その本人の気持ちが家族に伝わってしまうことは
家族の持つ共感作用を発動してしまい
耐えられない気持ちになってしまうのは想像ができると思います。

(そう考えると、むしろうつ病の方々は
そのような悲観的な思考に苦しまれていらっしゃるのが
毎日のことなのですから
それに耐えておられると考えると
もしかするとむしろ精神力が強いと言えるのかもしれません)

うつ病患者さんの家族こそつらい思いをしているということなのですが、
なかなかそのことが世の中に知られていないように思います。

友人から紹介された事例では
二人暮らしのご夫婦で、奥さんが重いうつ病の方の場合、
旦那さんは仕事をしながら奥さんの看病をしているのですが
奥さんには時々大きな精神症状が出現して
旦那さんは会社を休みながら看病をしているという
ご苦労をされているという訴えがありました。

政令指定都市や都道府県の
精神保健センターを紹介することしかできませんでした。
利用可能なショートステイみたいなものがないと
夫婦共倒れになりかねないと心配です。

うつ状態を伴う精神疾患の場合、
精神状態に波がある場合も多く
良いときは普通に散歩もできるのですが、
悪いときは、布団から起き上がることも容易ではなく
トイレに行くのも支えないと転んでしまう
ということがあるようです。

患者さんが眠っているときには
家族は起こさないようにと
台所で調理をすると寝どこまで聞こえてしまうので
戸の閉まる風呂場で調理をするという方もいらっしゃるようです。

患者さん本人は忘れていることがあるようですが
「死にたい」とか、「消えてなくなりたい」とか
夜中に突然言い出されると
一晩中心配していなくてはならず、
何度も起きては布団に本人がいることを確認して
夜が明けてしまったという話も聞きます。

通院が物理的には一人で行くことが可能である場合でも
途中で何か発作のようなものが起きてしまわないか心配で
結局同行するのですが、
病院では本人の様子を話すばかりで
家族の献身的な介助はお医者様にも伝わりません。
本人に自覚がないことも多く
家族からの聴取も必要だと思うのです。

結局なるべく一緒にいることになりますので
家族は自分の時間を持つことができなくなるようです。
こうなる前は色々と趣味もおもちなのですが、
患者さんを一人家において出掛けることができないのでなかなかできない。

そういう状態のようです。

社会で何とか荷を分かつような制度があればよいのではないかと思います。
そうでないと、
病気の家族を捨てる人も出てくるのではないかと思います。
24時間、365日、個人が一人で行えることではないように思います。

そのためにも、家族の方こそ、社会に向けて
当事者として発言してもらいたいのです。
そうでないと、親切だけど頓珍漢な人たちが
頓珍漢な制度を作ってしまったり、
実態を知らないために反発を買うようなことを言ってしまったりするからです。

私は今、
うつ病の患者さんを抱えた家族が
家族をうつ病にした相手に対する損害賠償請求の
訴訟を担当しています。
家族の介護費用の請求をしています。
それだけ大変な状態なのだということを
世の中に知ってもらいたいと思っています。

うつ病患者さんだけでなく
すべての人のために頑張っている人たちが
社会から支えられることが
人間らしい社会なのだと思います。



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