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【実務家向け面会交流調停期日メモ】拒否の度合いが比較的小さい連れ去り妻が2回目の調停で裁判所外の直接面会に応じた事件の分析 [家事]

この記事は面会交流の実現を仕事として行っている方に向けて書かれています。
事案は、本質を変容させない範囲で変えています。

夫婦は20歳代後半
子どもは二人(小学校低学年と幼稚園年中)
結婚8年目で妻が子どもを連れて、他県の実家に別居

別居に至る原因
妻の主張は夫の説教と子どもへの暴力というDV
夫の主張は妻の浪費を追及したら別居

別居から比較的早い段階で双方弁護士が受任
3か月に1度くらいで弁護士を通じて子どもの写真などが送られてきた。
現在別居して1年。子どもからの夫への返事は一度あったが
あとは双方向性のないやりとり。
婚姻費用は早期から送金。金額に不満あり。

調停は、面会交流調停、離婚調停、婚費調停
裁判所は県庁所在地を管轄する裁判所

1回目の期日と2回目の期日の間に
子どものための親に対するレクチャーと
子どもの調査官調査実施

調査官は中堅からベテランの調査官
やる気も能力も高い
報告書を読むと
子どもの様子は、わずかな葛藤も見落とさず
極めてリアルに再現されている。

夫からするとやや女性保護のバイアスがかかった質問がなされたとのこと

2回目の調停では
夫側の主張
子どもとの関係が安定したならば離婚も考える
妻側の主張
離婚が決まれば面会させる。

夫の側の主張
面会交流は子どものために実施するもの
親の紛争に子どもを巻き込むことはいかがなものか。

妻側の主張
直接交流は嫌だからテレビ電話など
調査官の意見
夫の反省を引き出せないために
妻を安心させられない
もう少し反省の弁はないか

夫側の主張
妻が嫌かどうかではなく、子ども本位に考えるべき
二人の事実認識には食い違いがある
それは大人の問題である。
面会交流は子どもの権利なので
妻側の主著はともかく、母親として頑張ってほしい。

交代中に、なおも妻側が抵抗を示した場合に備えて用意したこちらの論法
「調査官調書には、子どもが父親に会いたいということが明確に記載されていた。
これでも子どもが会えないのならば
子どもはどんなことを言えば自分の親に会わせてもらえるのか教えてほしい」

しかし、おそらく調査官の奮闘により
直接面会交流の実施方法について妻側が検討に入る。

その結果、短時間であるが
ファミリーレストランにおいて食事をしながらの面会が実施されることになり実施された。

<検討1 妻の複雑な心理>
妻側代理人が比較的鷹揚に間接面会の仲介の労をとってくれた。
頻度は少ないが、夫側としては一定の精神的安定が図られた。
写真や手紙の送付すら拒否する事例が多い中(連れ去り事例の場合)評価するべきだ。
但し、居住地などの情報秘匿は徹底していた。

もしかしたら、妻側で離婚はしたいけれど夫には嫌われたくない
という複雑な心理過程がありうるのではないかということは検討するべき。
嫌われたくないけれど、子どもは手放したくない。

このような場合、安心感を得られる形の面会方法であれば
実施される可能性が高くなるようだ。
調停の話し合いを見ていて絶対無理だという葛藤の強い事案でも
映画やサーカスの干渉という形で面会交流が実施できていることも多い。
妻は、子どもに時間を過ぎてももっと父親と交流しろと促すこともまれではない。

直接面会交流を大胆に提案するべきだと思う。

<検討2 調査官の役割>

今回間接交流にこだわった主張はしたものの
調査官の強い働きかけて直接面会が可能となった。
コロナでこれまで実施されていた面会さえ中止になることが多いにもかかわらず
画期的なことである。

調査官の女性保護バイアスは確かにあったが
思想的なものとして反論するより
弱者保護の観点からの正義感だととらえることが肝要である。
但し、それは調査官の役割ではない
調査官や家庭裁判所の役割は最弱者であるこどもの利益である。

このことを気づかせるのが代理人の役割であり
喧嘩してしまうことはデメリットしかないだろう。

正義は人の視野を決定的に狭めてしまう。

このために、できるだけ早い段階で
子どものためのプログラム、ないし、面会交流プログラム
を実施するべきではないかと考えている。

実際よくできていて、子どもの利益を第一にという
共通言語が生まれる効果がある
無い場合も大きいが、
この考えに照らして主張を強めることができる。

そして、調査官にもこのプログラムを主宰することで
親の紛争を子どもに及ぼさないということを
調査官自身が再確認するきっかけになる。
代理人は、現実の調停の中で、
そのことが問われる場面を特定し、気付きを促す
という役割を果たすことが求められる。
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