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【宣伝・広告3】本日発売! 「イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術」(遠見書房) 心理士と弁護士の東日本大震災後の自死対策活動のコラボレーションの中から生まれた本 [自死(自殺)・不明死、葛藤]


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本になってみて気が付いたのですが、「はじめに」という個所(私が書いた)や「あとがき」に自死対策や自殺予防などという言葉がやたら出てきて、初めて読まれた方には訳が分からない感じがするかもしれません。

実はこの本は、実際にこういう経緯の中で生まれた本なので、裏話シリーズ第3弾として、その内訳をお話ししようと思いました。

東日本大震災から10年が経ちました。私の歳のせいでしょうか、まだ10年しかたっていないということが実感です。今年は10年目ということで津波の映像がテレビでバンバン流れたのですが、とても平気でいることはできません。かなり具合が悪くなりました。

震災直後、仙台ではこのあと自死が増えてしまうのではないかという心配の下で、様々な活動が行われました。自治体での精神保健活動や民間のワンストプ相談の立ち上げや、解決策の研究会等、様々な人たちが様々な活動を行いました。特徴的なことは、業種の垣根を越えて、研究や実践の交流を行ったり、共同での相談活動を行ったりというところでしょうか。何かもっと良いものを求めてみんなどん欲に考えていました。今はそれほどではないにしても、それでも、この人からお話を伺いたいと思えば、連絡を取ってみるということは昔よりも気軽にできるようになったような気がします。

この本の心理監修をしていただいた東北大学の若島孔文先生は、被災者の救助活動をしていた警察官や消防職員、自衛官といった人たちのカウンセリングを精力的に展開されていらっしゃったと伺っています。仙台市の自殺対策連絡協議会でも、当時先生は宮城県の臨床心理士会の副会長をされていて仙台弁護士会の担当者であった私も協議会をご一緒していました。ちょうどその頃、若島先生のお師匠様の長谷川啓三先生(東北大学名誉教授)とも偶然ボランティア活動みたいなことをご一緒する機会があり、いろいろ勉強させていただいたのですが、若島先生をご紹介いただいたという感謝しきれないできごともありました。
震災後は、出会いの機会が大変多くあったと思います。

仙台弁護士会は、震災の直前ともいうべき平成21年から自死対策プロジェクトチームを発足させ、他の弁護士会に先駆けて弁護士会として自死対策に取り組み始めました。私もメンバーですが、それまで私は過労自死の問題しか取り組んでこなかったということもあり、何をどうするのが弁護士会としての自死対策なのかが全く分かりませんでした。幸いなことに宮城県医師会のご協力を得て、シンポジウムをやったり協定を結んだりして、マスコミにも取り上げていただきました。自死問題は個人的な問題ではなく、社会的な問題だとアッピールできたと思います。
弁護士向けの自殺対策マニュアルも作成していたのですが、震災のために印刷がずれ込むということもありました。そのマニュアルの中で、自死が多いと、離婚が多い、失業率が多い、犯罪認知件数が多い、破産件数が多いという統計的な関係があることに目をつけてマニュアルの序文で発表しました。つまり、弁護士という職業は、自死のリスクの高い人と接する職業であるというようなことを主張しました。

県の心理士会も自死対策に取り組むということで、担当副会長だった若島先生にお声をかけて弁護士会と共同で対策を検討しましょうということで、東北大学に行って研究会を始めたような気がします。いつしか、県の心理士会が抜けて、先生の研究室の学者さん方に引き継がれるような形で、実践的なコラボレーションが開始されました。

弁護士の依頼者の中で、事件の問題もあって葛藤の強い、自死リスクの高い方がいらっしゃって、それでも法的問題を抱えていて、弁護士だけの対応だけでなく、カウンセラーのカウンセリングも並列的に行いながら裁判を乗り切るということが行われました。
うつ的傾向がある方が離婚調停を起こされて、ますます不安定になった事例
暴行事件の被害者の方の事例、
刑事事件の被告人、
と事件は様々ですが、やはり家族問題が多かったと記憶しています。

依頼者の許可を得て、事案の報告とカウンセリングの効果の検証などを行い、次にするべきことを検討したり、依頼者の心の状態の解説を受けたりと、極めて実践的で、心躍る時間でした。
それから、弁護士自身の精神問題についても研究は進み、弁護士が事件の中で心が折れた事例の報告などについても解説をいただき、対処方法を話し合ったりしました。

リスク者への個別対応ということを丁寧に実践的に研究していたということになりましょうか。

2018年には、若島先生の研究室が主体となり、日弁連の協力も得て、弁護士が業務で出会う自死リスクについてのアンケート調査を実施しました。弁護士は長く業務を続けるほど、依頼者の自死を経験する可能性が高くなり、多くの弁護士が依頼者の自死や自死未遂を経験しているという結果となりました。業務の分野としては、債務関係、家族関係、刑事事件が多いという結果になりました。

そうこうしているうちに、弁護士会の自死予防対策の概要が見えてきました。葛藤の高い人、自死リスクの高い人が弁護士の元を訪れることはそれほど期待できない。むしろこちらからその人たちの元に出向いて行って、弁護士という敷居を下げなければならないということが一つです。もう一つとしては、葛藤の強い人、自死リスクの高い人の、相談の機会を増やすことが必要だということで、例えば無料で弁護士が相談を聞くということであれば、話しても良いかもしれないと思うのではないかということです。自分の心理、精神の相談ということは敷居が高いけれど、その原因となっている対人関係の解決ということであれば、相談しやすいのではないかということです。東日本大震災の影響を受けて弁護士会としての予算が心もとないということであれば、各自治体の自死対策として、高葛藤の人向けの弁護士相談会をしてもらうということを考えました。

実はこれは仙台市では実施されています。純然とした法律相談ではなく、自治体の保健所の保健師さんや心理士、ケースワーカー、医師と一緒に相談を行うということで、できれば定期的な開催にするということです。
葛藤の高い人が相談に来やすい相談会の名称がポイントになるかもしれません。

さて、そうなると、どんな弁護士が担当しても良いというわけにはいきません。葛藤の強い人の葛藤をさらに高めるような回答をしていたのでは本末転倒になります。そもそも行政の方も弁護士に任せることができるだろうかと信用してもらえないのだと思います。

これに備えて、希望する弁護士に、研修をしてもらい、マニュアルも作成して(最近マニュアルがはやりのようですが、作るのは楽しいですが、活用には疑問がないわけではないのですが)、参照資料として提供しなければなりません。そうして、必要な研修を終えた弁護士を例えば「カウンセラー弁護士名簿」という名簿に登録して、自治体の相談会の担当を名簿の中から選んで派遣するというシステムが必要になります。

どうやって研修をやって、どうやって研修資料を作るかということの解決が先ず行われなければならなかったわけです。
本書が企画されたのは、こういう事情が元々はあったということです。但し、弁護士会の研修と言っても、弁護士だけで行ったのでは危険であります。そういうことで若島先生に図々しくお願いに上がったところ、本書の一般的な出版という話になり、本の内容も少し変わり本書が今日発売されるという運びになったわけです。

研修会の専用資料は別途作成しました。もう少し実務的な細かい話が具体的に盛り込まれています。服装や視線をどこに置くかとかそういうことから記載されています。当初の予定では、この本もそこまで盛り込んだ本にすることが予定されていましたが、いつの間にか誰かが原稿から落としていました。今一番有力な犯人は私で、執筆していなかったから落ちたのかもしれないということがオチのようです。おかげで一から執筆しなければなりませんでした。これも東日本大震災の被災者相談のマニュアルを作った経験が大いに役に立っています。

あまり書店には並ばないと思いますが、もし見つけたら手に取って目次だけでも見ていただければ幸いです。

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