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Kさんからのお便りに返信 離婚調停で妻側の意思決定をしているもう一人の代理人を感じるときの対処方法 夫(妻)が戦うべき相手は、夫婦が協働で戦うべき相手だということ。 [家事]



前にお電話でお話をさせていただいたKさんからお便りをいただきました。
Kさんは、奥さんの典型的な「思い込みDV」によって妻子に会えなくなり、
現在調停中ですが、電話ではお子さんとお話しできているそうです。

少しずつではあるけれど、奥さん本人の歩み寄りが感じられるエピソードが
増えてきたとのことです。
私がこのブログなどでぼんやり考えていたことを
より精緻に再構成して果敢に実践されているとのこと、
もはや私の考えというよりはKさんの理論になっているのですが、
お便りをいただきました。ありがたいことです。何よりの励みになります。

何が事態を前進させたか、
何が事態の前進を邪魔しているか
ということについて考えましたので、共有したいと思います。

1 攻撃より感謝のアクション(感謝の「気持」よりも大切なこと)

離婚紛争を抱えている当事者の方に伝えたいことは
感謝の行動が事態を好転させるという成功のカギになっている
ということです。
私に感謝しなさいということではなく、
妻が軟化した姿勢を示せば、すかさず感謝を伝える
不十分でも子どもとの交流ができれば感謝を伝える
(Kさんのお子さんがとても良い子でうらやましい)

このアクションが、相手に伝わり、相互作用でプラスに作用していくようです。
誰でも不合理な状況におとしめられれば
自分を守ろうとして、怒りがこみあげてくるのは
人間として当然のことです。
それでも、希望をもって突き進む中で
怒る気持ちを見せず(怒りを持っていても相手に見せないということ)、
一つ一つのエピソードを「事態打開の通過点」だと認識できることによって
着実に前に進んでいくことができる。
そういう印象を受けます。

2 離婚調停が建前通り機能しない本当の原因、戦うべき本当の相手

今回、Kさんの手紙の中に
私が、時々ぼんやり感じていたことが
極めて正確に言葉で記載されていたので
これはぜひ多くの方々と一緒に考えてもらいたい
そう素直に思いました。

どちらかというと子どもを連れて夫と別居し、
居場所を隠して保護を受け
支援を受けて離婚調停を申し立てた
お母さん方にこそ読んでもらいたいのです。

先ず、現在の離婚調停の問題点の第一は
「離婚についての、あるいは家族の在り方についての
実質的な話し合いになっていない」
というところにあると感じています。

申立人本人が裁判所に来ない。
代理人だけが調停期日に出頭するのです。

本来の離婚調停ならば
離婚を要望する申立人側も相手側も
「どうして離婚をしたいのか」ということを
できるだけ具体的な形で
話し合いの「まないた」に乗せるべきです。

少なくない事例で
「離婚をしたい気持ちは固く変わらない」という結論だけが
他人から幾度も声に出されているのですが、

素朴な感情として、どうして
ということが知りたいわけです。

割と弁護士になってそれ程の期間がたたないうちから
私は気が付いていたのですが、
本当に離婚したいのであれば
ここを丁寧に説明し、相手に対して最大限の理解を示すことが
早期の遺恨が残らない離婚になる
離婚後のこまごまとした問題解決にも役に立つのです。

これをしないのだから
離婚手続きは長期化し、遺恨が残り
離婚後の処理も弁護士が間に入らないと進まない
という状況になると思っています。

離婚という当事者や子どもにとって重大なことを決めるのだから
大人の責任として、相手に説明する責任があると思います。

しかも本人が調停に出席しないで
他人である弁護士だけによって、「離婚の意思は固い」
ということを繰り返されるだけですから
不信感だけが強くなることは当然です。

これでは家事調停はなりたちません。

ただ、
Kさんのケースや私の代理人として担当した別件では
こちらの働きかけ方によっては
妻の「夫よりの感情」が漏れて出てくるような印象を持つ出来事があることがあります。
妻の譲歩が突然現れることもあるのです。
弁護士が書面などで主張していることと
まるっきり矛盾する好意的な行動を提案してくることがあります。

妻側の弁護士が、妻の時折見せる夫への配慮、心情を
調停などで情報提供をすることがあるのです。
でも、それにもかかわらず、相変わらず妻は出てこないで
その弁護士が妻の離婚の意思は固いということを繰り返します。

Kさん曰く

裁判所に来ないもう一人の代理人がいるみたいだ

まさにそんな感じです。
但し、離婚を切望している妻であっても人間としての情があるわけですから、
夫否定一辺倒ではなく、肯定的評価をコメントすることもあり、
だからといって離婚という結論は変わらない
という場合ももちろん多いのです。

妻の弁護士が揺れる妻の心情を
大体は妻の強い要望に押し切られる形で
伝えることが少なくありません。

こういう肯定評価を最大限大切にさせてもらい
仮に離婚になったとしても
子どもとの関係をより広く自由に行うための
手掛かりにするということも大事なことです。

でも違うのです。

こういう、妻の要望を伝えようとする弁護士の他に
もう一人の代理人がいて
妻の代理人よりも、妻本人よりも
離婚の意思の固い人間がいて
離婚に向かうスピードを緩めることを許さない監視者がいる
そういう感覚を持つことが確かにあるのです。

妻の意思決定に干渉し、代理人の活動に口を出す
そういう人間がいるということならば理解ができる
そういう現象は確かにあるような気がします。

これ、私のホームであるS裁判所での事件では
というより、S弁護士会の弁護士が代理人に就かれた場合は
あまり感じないのです。
他県の裁判所で多く感じるということに気が付きました。

S弁護士会の弁護士は、男女問わず、男女参画政策との距離を問わず
本人の意思を尊重し、自分の頭で事件処理をなさっているのでしょう。

それでもS家庭裁判所で、
その「もう一人の代理人」を見かけたことがありました。
夫も知らないその女性は、おそらく
婦人保護施設のセンセイという職業の人のようでした。
NPOの職員というわけです。

婦人保護施設というのは、
売春防止法が制定され、管理売春が禁じられ
職と住居を失った元売春婦の方々を自立させるための施設でした。

文芸作品等を読むと施設ではたらく人たちは二種類の人がいて

社会構造によって売春を余儀なくされた女性に
幸せな生き方を提供しようという理想に燃えた人と

売春という女性として屈辱的な仕事をするしか生きていけない
男性に従属して生きるしかない女性に対して
矯正してまともな人間にしてやるという
そういう発想を持った人たちがいたようです。
つまり、自分達女性の足を引っ張る人たち
という見方があったようです。

現在、夫のDVがあった場合の保護施設が
この同じ婦人保護施設なのです。
DV保護のための作られた施設ではなく
元売春婦の保護施設をそのまま利用しているということになります。
それは建物を利用しているという形の問題だけではなく、
保護を受ける人たちに対する見方もそのままだということです。

そうでなければ、元売春婦の保護施設を
そのまま利用しようという発想になるわけはないのです。
夫との結婚生活が
売春宿で売春してきたことと同じに考えているわけですから
無茶苦茶だと思います。

だから施設の職員は矯正を担当する少年院の職員みたいなものですから
センセイと自分たちを呼ばせたいわけです。
(施設によってここは異なります。)

ここまで素材がまな板の上に上がると
以下の通り、すべてがつながります。
原則に反する調停の形の理由が見えてきます。

1)
妻は、自分の体調の理由が主たる理由で
特に出産直後に、漠然とした不安感が生まれ
この不安感から逃れたくてたまらなくなります。
当初は夫に相談をすることも多いのですが、
気の迷いではないのでなかなか解決の方法が見つけられないでいます。
2)
妻は経産婦というか、頼れる女性に対して安心感を抱くので
公的な相談所に相談に行きます。
公的な相談所が家族解体が女性の幸福だという考えの影響を受けていれば
「それは夫の精神的虐待がある。DVだ」と何の根拠もなく言うわけです。
真面目で正義感を持っているだけの人はマニュアル通りに言うわけです。
とにかく不安から解消したいと切望している妻は、
だんだんと夫に嫌悪感や恐怖感を抱くようになります。
つまり、不安の原因が夫にあるかもしれないと意識するようになります。

夫から離れることによってこの不安が解消されるかもしれない
と思い込むようになるわけです。
思い込みDVの完成です。
3)
妻は不安を解消したいという一心で
DV相談所に言われるがままに子どもを連れて別居し
夫から姿をくらまし保護施設に収容されます。
収容所では、離婚調停や保護命令の手続きを紹介され
法テラスで弁護士の援助も受け
離婚調停などを申し立てます。
4)
中には、このあたりで、不安が何も解消されないし
生活が不自由であることに気が付いて
保護施設を出て夫の元に帰る妻、脱走する妻も現れます。
5)
婦人相談所は
逃げ出す女性は男性に対する依存傾向が強いという
情けない女性だとみなすと同時に
逃げ出しの予防措置をとろうとするわけです。
結局確実に離婚させようと
「正義感」を発揮してしまうわけです。

先ずスマートホンなどは施設入所の段階で取り上げ
夫と連絡をとれないようにします。
そのままにしておけば夫と連絡を取るだらしない女だと思っているので
自分が保護した女性を信用していないのです。
自分で考える力のない人間だとみているから
自分で考える余地を奪おうとするのです。
自由を奪っていると言えるのではないでしょうか。

保護施設と関係の深い(付き合いの頻繁にあるお得意様の)
弁護士を妻に紹介し、離婚調停などを申し立てさせます。
別居した日の直後に申立書の日付が記載されていることが多いです。
じっくり離婚しかないのか考える時間を
与えられていないわけです。

保護命令の申立書の用紙も施設に備えおき
妻に自分で保護命令を申し立てさせるところも多いようです。
保護施設の職員のアシストもあって作成するのですが
法律家からすると、稚拙で必要事項も記載されていないような
内容の申立書です。
ずさんな申立にもかかわらず、
かつては裁判所は今よりも頻繁に保護命令を出していたようです。

これが正しければ、申立人本人である妻を
調停にも出席させない理由は明白です。
調停の場で妻の本音が出たら困るからです。
夫の元に戻ることを思いつかせないという戦略なのでしょう。

夫への嫌悪感、恐怖感があるから裁判所に来られないと裁判所に話すのは
それが真実の気持ではなく逆の気持だからという場合がありそうです。
(もちろん、夫に理由があり、そのような感情になる
古典的な離婚申立てももちろん少なくはありません。)
7)
但し、完全に保護施設に収容されてしまう場合より
実家や実家の近所で居住している場合の方が
夫の働きかけに対しての良好な反応が
漏れてくる確率は多いようです。
8)
ここからは想像なのですが、
おそらく妻が弁護士と打ち合わせをする際には
婦人保護施設のセンセイも同席して
妻の決意が揺らがないように監視しているのでしょうね。

徐々に妻抜きでセンセイと弁護士が打ち合わせをして
妻にはセンセイから連絡が入り
必要な資料を取り寄せて弁護士に渡しているのではないでしょうか。

弁護士との打ち合わせや調停の前の打ち合わせなどでも
決意が変わらないように妻に働きかけをしている場合もありそうです。

そしてこれらのセンセイの行動を
「支援」と呼んでいるのでしょう。

<ではどうするか>

このような仮定が間違っていようと
このように「もう一人の代理人が存在している」ということは
とても役に立つ想定ということになります。

つまり、
今の事態を引き起こした元々のきっかけは
夫婦関係かもしれませんが、
事態を悪化させた原因として
もう一人の代理人が存在すると想定するということです。

夫はもう一人の代理人と、妻のこころをめぐって
綱引きをしている場合がどうやら多くありそうです。

怒りは、もう一人の代理人だったり
夫婦関係で不具合を起こしただけの女性を
売春婦と同じように扱っている国家政策に対して向ける
大いに向けるということ、これが第1ステップです。

もう一人の代理人は、離婚が成立した後の面倒を見ない
期間限定の「支援」であることが多く
途方に暮れた元妻が色々なところに相談しますが
離婚をした以上は解決する方法がありません。
離婚訴訟などで、夫はたいそう傷ついていて
その怒りの対象が妻に行っていますし
色々なお金を負担していますから
妻と連絡をすることさえもこりごりになっています。
子どもを抱えて途方に暮れています。

その先を考えると
妻子を守るのは夫の役割であり
そのためには正しく戦う相手に標的を定めなければなりません。

すると調停に出てくる代理人さえも形式的なものに過ぎないのだから
あまりムキになって相手にする必要はなく
漏れ出る情報を漏らしやすくするということが得策です。

あるべき調停の姿に戻すために調停委員には一緒に考えてもらう。
「本人が出てこないで、本人の意思がわからないなら
 調停は成り立ちませんね。」
と共感を引き出すということが正攻法だと思います。

私は申立人が出頭しない調停は、相手方が同意しない限り
期日を開くべきではないと考えています。

そうして、妻から攻撃されているわけではないという意識をもって
妻に対して、自分の存在が安心できるものだということを
準備書面や陳述書を使ってアピールしていく。
抽象的に言えばそういうことが正しい戦略のようです。

綱引きをしているのに
悪の張本人が妻だというような主張立証をすると
益々妻のこころはもう一人の代理人の方に傾いていきます。
「思うつぼ」ですね。

もちろん、必ず成功するわけではありません。
しかし、そこに可能性があるならばやってみる価値はあると
参考にできるのではないかと
そういうケースもあるのではないかということで
ご紹介してみました。


ところでKさんはお怪我をされたということで心配です。
一日も早いご快癒をお祈り申し上げます。

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ドイホー

先生のブログをたまたまみつけました
私自身も今年の三月から突然妻、子供二人が消え
パブリックを謳う弁護士から離婚の代理人になったといわれ、一方的に向こうの主張をくりかえされていました。持ち家をマイナスがでようが、売却をしなくては子供との面会はできないと不動産会社まで紹介されました。笑
私は自営業でしてたべていくために毎日一生懸命はたらきました。産後妻のサポートはできなかった反省はありますが、有責事項はないため、この8か月、向こうにも攻撃せずひたすらたえました。11月ごろに
まさかの妻側の弁護士が解任されたみたいです
私自身もはじめは相談などにも弁護士にしたんですが、
いざ剣を持てと煽る弁護士しかいませんでした
先生のブログを読み私は剣をもたず盾をもつように
考え、自分の頭で考えひたすら殴られる方をえらびました
先生のブログなど毎日勉強になり、ひたすらたえています。私自身家族を愛し修復を考えているのでこれからもがんばります。今後もすてきなブログたのしみにしてます


by スイ (2022-12-08 10:58)
by ドイホー (2022-12-08 14:36) 

ドイホー

スイ様 コメントありがとうございました。困難な道かもしれませんが、同か頑張って成し遂げてください。一緒に住んでいなくても家族の一員としてしかできないことは多くあるというのがこれまでの実感です。正義の攻撃、因果応報を乗り越えて、家族のためになることを工夫して努力していくことは最も人間らしい素晴らしい行動だと思います。応援します。(個人情報を消して投稿しなおしました。)
by ドイホー (2022-12-08 14:40) 

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