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【+宣伝】「イライラ多めの相談者・依頼者とのコミュニケーション術」(遠見書房)の熟読が必要なコールセンターの電話担当者の労働実態 [労務管理・労働環境]

本当はこの本は、弁護士とその依頼者の事例を踏まえて書かれたものです。法律分野なのか心理分野なのかイソップのコウモリみたいな本にもかかわらず遠見書房様のご英断で昨年7月下旬に初版が出ました。10月に重版となったとのことで、それほど遠見書房様へのご迷惑が甚大というほどではなくすんだのかなと胸をなでおろしているところです。それでも、やはり、自分でも宣伝をしないと義理が果たせないと思って、宣伝をしようとそういう記事です。

本当の本の目的は、依頼者は弁護士に頼むような紛争を抱えているわけだから、冷静ではいられないわけで、冷静でいられなければコミュニケーションに難が出てくるのは当然のことです。それにもかかわらず、もともと冷静ではない人ではないかと弁護士に思われて、コミュニケーションが取れなければ、弁護士に頼む意味がなくなるわけで、そのために弁護士があらかじめ冷静ではいられないという事情を熟知して、それを差っ引いてコミュニケーションをとりましょうというそのための技術書だったのです。

ところが実際の反響としては、「話す相手との苦労は、自分だけのことでなく、みんな感じていたことか。安心した。」という弁護士(初心者から大ベテランまで)の声が寄せられ、弁護士の精神安定にも役に立っているようです。

あと、サービス業の会社がまとめ買いをしていただいたり、学校現場で結構読まれていたりするようです。これは、結構発売当初から情報をお寄せいただいておりました。

今回、新たな情報をいただいたので、宣伝を兼ねてご報告します。

それはコールセンターの電話担当の方にも読まれているということでした。
コールセンターは、私、ちょっと前に、スーパーバイザーとしてセンターにどでんと座って仕事をしていたことがあるのです。電話担当の方を指導する人が何人かいて、その人を指導する人という役割でした。モニターで実際の応対を聴いたりもしていたのですが、そういう経験が何かの役になったのかも知れません。

このコールセンターの仕事って、かなり精神的ダメージがあるようで、精神的に悪化する人の話を最近よく聞くようになりました。精神疾患を発症させて休職する人、精神的不安定になって夫に対して敵対心をもって連れ去り別居をする人。男女関わらず様々です。

コールセンター職場の精神的ダメージは二種類あって、一つは職場の人間関係からくる精神的ダメージ、もう一つは電話の相手から受けるダメージです。今日は後者について少し考えます。

一口にコールセンターと言っても、どういう人から連絡が来るかということはそれぞれ違うようです。しかし、メーカーのコールセンターであれば製品のトラブルがあって電話をかけてくるだろうし、損保のコールセンターというか事故処理担当であれば、事故があって精神的に動揺している人から電話がかかってくるわけです。最近は、相談事の相談先の紹介というコールセンターもあるようで、やはり冷静でない人の相談を受け付けなくてはならないようです。

結局、電話の向こうの人は、精神的に追い込まれている事情があるということになります。私は、事務所の電話が不具合を起こして、コールセンターに電話をして直したことがつい最近ありましたが、やはり精神的に動揺していたと思います。うまく言葉による説明ができなかったかもしれません。例えば、パソコンが不具合を起こした人、給湯器が故障した人、照明がつかない人、それぞれ日常生活が通常通り営めなくなることでパニックになることはありうることです。交通事故の被害者、加害者はなおさらでしょう。

多くのコールセンターでは、電話対応はマニュアルで行われます。しかし、複雑な内容になればなるほど、その解決方法についてはマニュアルがあるのですが、電話の相手の状態別の対応方法はありません。少なくないマニュアルでは、マニュアル通り返答することで、相手を余計に怒らせてしまう回答が掲載されているようです。でもマニュアルからはみ出した回答をするわけにはゆきません。間違った回答をしないという目的では、マニュアル通りに回答をしてほしいという要請があるわけです。電話担当者の考えで臨機応変に回答方法を変えることも禁止されていることが多いようです。
そういうマニュアルががちがちになっていると、電話担当者は、ある程度経験を積めば、こういう言い方をしたら、相手を逆上させるとわかるわけです。しかし、
マニュアルからはみ出たことを言うわけにはいかない。そうすると、この回答で相手を怒らせることが分かっても、自分から相手を怒らせる行動をとらなくてはならない、自分を危険な目に合わせることを自分から行うということになってしまいます。「自分で自分の身を守ることができない。」という、人間に限らず動物全般にとっての極めて大きなストレスが生じてしまいます。

この現象は理解ができない人が多いと思います。「だって、電話で文句を言われても、あるいは怒鳴られても、命が奪われるわけではない。身の危険があるわけではない。電話担当者はどこの誰だからわからない。そもそも相手が逆上しているのは、相手の事情であって、電話担当者には責任がないのだから、おどおどする必要はないではないか」と思う人がいると思います。これはどうやら違うようです。

こういう冷静な人の感覚は、冷静に考えた場合の理屈にすぎません。感情は合理的に生まれるのではなく、反射的、予防的に生まれるようです。
反射的にという意味は、その言葉を聞いたときに即時に感情が生まれてしまうということです。冷静に考え直してから、さあおびえましょうという仕組みではないということです。予防的にということは、どの程度の危険があればどの程度おびえるかということではなく、おおざっぱに危険があれば程度を大きなものと想定して怖がったり、逃げたりするということです。おもちゃのピストルを向けられても、突然であれば恐怖を感じます。実際より大きな危険が起きてしまうという無意識な想定のもと、飛び上がったり目を大きく開いたりするわけです。その方が生き残る可能性が高くなるからです。「おや、このピストルはおもちゃかな。本物ならば何発弾が込められているのだろう。」とか考えていたら、本物のピストルだから命の危険があるという思考にたどり着いたころには撃たれているからです。そうすると、誰か人間が自分に対して怒りをぶつけてきただけで、まず感情は恐怖を感じてしまうわけです。電話の向こうで相手は確実に怒っています。そしてその怒りが自分に向けられているわけです。そうなると、人間の本能として、そしてその恐怖の原因となった危険認識は、暴行などが行われるような、あるいはもっと大きな危険認識を抱く可能性があるということになります。これが電話担当者の感じているストレスなのでしょう。

そしてその危険を自ら招く回答をすることが命じられているということで、ストレスはますます強くなるわけです。

こういうストレス職場なのですが、マニュアルには、電話の相手の感情に対する対処方法はあまり書かれていません。特に講習もないようです。これが、私が少し担当したコールセンターのように、大勢の人数で電話担当をして、何人かに一人のアドバイザーがいて、さらに総括的なスーパーバイザーがいれば、それだけで安心感がありますが、自宅に転送されてくる電話で電話応対をしている人はそれもないことになります。

それでも担当者の報告や相談などで、上司が親身に対応して恐怖や不快の感情を手当てしてくれれば少しはましなのでしょうけれど、上司もマニュアル通りの仕事にせいぜい自分の経験しかプラスすることができませんので、有効なクールダウンをすることができないようです。かえって、マニュアルに従って、感情的になっている相手の対応に困って時間が取られているにもかかわらず、「対応時間が長すぎる」とか「対応アンケートで『不満がある』との回答だった」というマイナスの事情を持ち出して、電話対応者を注意してしまうという流れになることも少なくないようです。会社は、そのことに言い訳をきちんと用意しています。「そういうイレギュラーな電話対応の結果で、査定を下げるということはありません。」というのです。あたかも査定さえきちんとやれば、使用者としての安全配慮義務は尽くしたというかのようです。これは落とし穴を見逃すことになります。

電話担当者ではなくとも、人間は日常、危険を感じることがたくさんあります。例えば、交通事故の可能性がなくても、鉄の塊である自動車が近くを通行していれば、初めて見たときは危険に感じるわけです。しかし、自動車というものは交通ルールに従って走行し、歩行者と接触することがないので危険なものだということを学習していく中で怖さがなくなっていくわけです。このように、日常の生命身体の危険や対人関係的危険は、学習によって危険意識が軽減されていきます。良くも悪くもこうなります。但しそれは、「実は危険ではなかった。」という学習ができた場合です。

電話担当者は、この実は「実は危険ではなかった」という学習ができません。感情的になって怒鳴り散らされ、何も危険性の解決がなされないまま電話が切られ、また次の電話がなるわけです。上司が危険意識を解消する手立てをとらない。そうすると、毎日毎日解決しない危険意識、ストレスが蓄積されていきます。不安感が蓄積されてしまうと、些細な刺激も怖くなります。例えば、あなたが務めている会社の近くで、発砲事件があり人が死んだという事件があり、犯人は逃亡中だという解決しない危険意識があるとします。たまたま夜遅く、人通りがなくなったときに会社を出たとたん、タイヤのパンク音、あるいは花火の音がしたとしたら、また発砲があった、自分が撃たれるかもしれない。と思うことは想像しやすいのではないでしょうか。

危険意識が蓄積されてしまうことによって、「危険を感じ、安全を感じる」という脳の正常な機能が乱されていくということは想像しやすいことのように思われます。

コールセンターは、誰からかかってくる電話かにもよりますが、このような危険をはらんだ仕事の内容だということになります。使用者は、このような感情や脳のシステムを考慮して、電話担当者の危機意識が解消される手立てを講じる必要がありますし、最低でも、相手を選べない以上、相手が感情的になったことで起きる一切の不利益、それが電話担当者の責任であるかのようなアクションを一切やめるべきです。

そして、電話の相手がなぜ感情的になっているのかについて、また、感情的になっている相手に対してどのような対応をするべきなのかについて、宣伝ですが「イライラ多めの相談者・依頼者とのコミュニケーション術」遠見書房を一人一冊買い与えて、
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みんなで学習会をするなりして心の準備をしてもらわなくてはならないと思います。このような本は、実際にはあまりないということを電話担当者の方はおっしゃっていました。ほかにないかどうかは、私にはわかりませんけれど。

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