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家族問題に警察の介入の余地を広げることに反対する。警察は家族紛争の調整機関ではない 紛争の断面だけが評価の対象となる。 [弁護士会 民主主義 人権]

警察を目の敵にしているわけではなく、職務として対応する場合、それぞれの職務内容にふさわしい発想で対応してしまう傾向になるということです。今進められている警察の家族への介入の拡大は家族と国家という観点からすると、デメリットが大きいという理由で反対するわけです。

現在、家族の問題に対して、警察の介入が拡大されようとしています。大きいところでは、夫婦問題と親子問題です。

夫婦問題というのは、いわゆるDV保護の強化ということで、これまでは身体的暴力があった場合にだけ警察が家庭に介入することが許されるという法律を、身体的暴力がなく精神的虐待があるだけでも警察介入を導入するという動きです。親子問題については、前回の記事で書いたとおり、虐待されている子どもがいる場合、警察が介入して子どもを保護するということです。

これだけ言えば、DVや虐待を警察が防止するのだから結構なことではないかと考えてしまうことは当然です。介入拡大を推進する人たちはここだけを強調します。そうして、法拡大の世論が形成されていけば、私のようにそれに反対する者は、批判の的になってしまいます。もっとも私の意見が広まればの話です。おそらく、リアルな予想としては一顧だにされないというところでしょうか。

<言葉のマジックの落とし穴>


この落とし穴のポイントは、言葉のマジックです。
例えば「DV」防止というと、具体的には何が起きているかもわからないのに、聞く者のイメージとしては、酔っぱらって毎日のように理由もなく妻を殴って妻の体中をあざだらけにする夫とか、会計が10円合わないだけで夜通し家中を探させる夫、些細な失敗で何時間も妻を正座をさせて説教する夫などが思い浮かぶことと思います。しかし、DVを理由として離婚調停が申し立てられますが、そのような典型的なDVというのは、まずお目にかかることはありません。私が弁護士になってから30年近くたちますが、そのような夫の身体的暴力があった事案は記憶にありません。身体的接触がある典型的なケースは、精神的に不安定な妻が、はだしのまま家を飛び出そうとしたのを心配してとどめようとして夫が身を挺して止める場合です。裁判などで妻がする主張は、どうして夫が妻を止めたのかということについては一切触れず、ぶつかって床に倒れたというところだけを主張してDVだというわけです。「どうして自分が床に倒れていたかわからない」ということを正直に書いている妻の書面もあります。どうも曖昧な記憶のまま、DVを主張していることが多いように感じます。
確かに間接的な暴力が存在することがあります。妻の言動に対して腹を立てて、ゴミ箱等をけるとかそういうことはこれまでの事例でありました。ところが、これが、裁判では、小さい子どもの近くにめがけてゴミ箱を投げつけてきたとして主張するのです。かというと、夫から殴られた事案でも、それがDVだとは認識できない女性も多くいます。その一度の暴力が徐々に夫婦間の緊張を高めて離婚に至るのですが、そのことを覚えていないというケースです。これは、私が控訴審で妻の代理人になり、暴力の影響について丹念に説明をして、1審敗訴事案がひっくり返ったことがありました。
つまり、DV事例には典型的な執拗な暴力という事例はほとんどなく、それがDVに当たるか否かよくわからないという事例と、実は精神的に深刻な影響が生じる暴力なのにDVの自覚がない事例、そして、離婚を有利に進めるための虚偽DVがあるのです。

これまで、身体的暴力という条件を課していたため、警察の過剰介入を制限する建前がありました。身体的暴力が夫婦間で行われた場合は、暴行罪や傷害罪に該当しますから、当然に刑法犯ですから、警察の介入が元も予定されています。刑法犯の被害者保護のバリエーションということで、犯罪として立件するだけではない柔軟な対応を可能とするという意味では、現行のDV法はある程度合理性のある規定でした。

<警察の行為の逸脱と思われる事例>

しかし、それでも私が相談を受けた警察の介入には、逸脱だと思われる事例も多くあります。
妻も暴力があると主張していない事例で、身体的暴力がある場合に限定された警察施設を利用させた被害防止交渉をさせて、夫が預かる合意があった子供を警察の圧力で妻に引き渡させた事例。精神的に不安定な妻が、包丁を持ち出して暴れていたので、夫が110番をしたら、警察は妻を保護し、子どもまで連れて行ってしまったので、半年ほど子どもが母親によって監禁されて、行方不明となり、ようやく子どもが自力で交番に逃げ込んで父親のもとに帰れた事例。やはり精神的に不安定で、二つの精神科をはしごして向精神薬を入手していた妻が、まったく虚偽の事実で相談にいったところ、警察官は「夫から殺されるから、早く逃げ出せ」と妻に申し向け、妻は驚いて警察官の説得に抵抗したところ、2時間説得して逃げ出させた事例。この事例では、妻は別居に際して限度枠いっぱいでカードキャッシングをしていました。どの事例も、裁判所で妻の主張は認められていません。DVは、警察以外では認められていないのです。
その他にも、離婚して何年かして、家族で住んでいた家を売却することになったのでその案内と転居先の案内の通知に、事務的に「お近くにおいでの際にはお立ち寄りください」と書いたら、ストーカー警告がなされた事例。突然、妻が子どもを連れて出て行ったので、妻の実家に行ってみたら、実家付近で警察官に取り囲まれて、警察署に連行され、「今後は妻に暴力を振るいません」という誓約書を書くまで返さないと言われた事例。この警察官に、現行のDV法を説明したところ、「DVとは身体的暴力だけではないのです。」と悪びれることもなく、法律を知らないことを自白していました。研修で教わったそうですが、自分の行動の根拠となる法律こそ研修を受けるべきだと思いました。やはり妻が子どもを連れて出て行ったので、親戚に相談しに行ったところ、妻の出ていった先が隣の町内という結構近いところだったということから、ストーカー規制法の警告を受けた事例。保護命令も出ていないのに、ストーカー警告がなされるという事例は多くあります。ストーカー警告の予告を出されるという自由な法執行もありました。

まとめますと、「警察は、女性が被害を訴えると事実を吟味せずに警察官の立場を生かして女性保護を図ろうとする。」ということになると思います。

この理由については、男女参画局として、女性保護案件数を増やすことが行政的な使命となっていることもさることながら、もっと本質的な理由があることを見逃してはいけません。

第1に、警察官は正義感が強く、被害者保護を第1に考えること
第2に、そもそも真実がどこにあるかは、捜査を開始してから探し出すという職業であり、ファーストアタックにおいては、被害防止が最優先となるため真実性の吟味は最小限にとどまる職務内容。
ということを重視するべきです。

<最初の接触が先入観を与えやすい職業であること>

警察官は、通報があって当事者に初めて接するわけですが、通常は被害を主張する妻とだけコンタクトを取ります。「夫が追いかけてきて暴力をふるう恐れがある。私の身の安全を確保してください。」というような感じです。夫婦喧嘩だろうということで取り合わないわけにはいきませんから、現場に行くわけです。一人で行くことは危険である可能性があるから複数人で行くわけですが、用心のために10名程度が現場に駆け付けることが多いようです。警察官も生身の人間ですから、自分の身を守るという意識は当然なければなりません。緊張と警戒をもって現場に到着するわけです。そこにわれらの夫が妻の言う通りやってくるわけです。夫は心配で、ともかくも無事を確認したくてやってくるわけです。日中の仕事で疲れて帰ったら、何も連絡もなく妻と幼い子どもが消えているからかなり動揺しています。動揺して、目が血走っている男を見て、警察官は緊張を高めるわけです。警察官に大勢で取り囲まれてそれでも暴力的抵抗をする人間はほとんどいませんから、大勢で取り囲むわけです。夫は、どうして警察が自分を取り囲むか理解できません。通常それはそうでしょう。まさか妻が自分が来るから危険が生じていると警察に通報しているとは思いません。取り囲まれても、家族の安否が心配なので、実家に行こうとするわけです。すると、警察官から夫を見た場合どういう風に映るでしょうか。「この男は、これだけ警察官に取り囲まれてもなお抵抗をしようとするのか。」と映り、警戒を強めます。また、妻や自分たちを守ろうという気持ちが起きます。身体生命に対する危機感です。身体生命に対する危機感が生じた場合に動物の行動は二者択一的になります。「逃げるか戦うか」です。言うまでもなく警察官には丸腰の男一人に対して逃げるという選択肢はありませんから、攻撃的アプローチが発動されてしまいます。その時の感情は「怒り」です。ただただ、夫を妻に近づけないという任務を怒りをもって遂行するだけの行動になるわけです。
こうしたファーストアタックの段階で、妻は守るべき弱い者、夫はこちらの身の安全を脅かす駆逐する対象となっているわけです。そうなれば、正義感はもっぱら被害を訴え、困っているか弱き妻を保護する方向で働き、夫に対してはDV男で妻から隔離する対象という方向で働く定めにあるわけです。警察がDV案件に公平中立でかかわるということは土台不可能なことです。
明らかに先入観を抱いて、その後の対応をするわけです。
被害防止交渉として、警察の会議室に夫を呼び寄せて、やってもいない暴行等について夫を説得すれば、説得される夫は委縮して従うしかありません。夫婦の話し合いではなく、実質的に、客観的に、警察の威力で夫を従わせようとしていることがリアルなものの見方でしょう。
その時になっても警察は、犯罪が認められない夫婦関係がどうしてこじれたかということについて、聞き出す知識も経験もありません。先入観が維持されれば、弱い女性を保護する、すなわち弱い女性の言い分を前提に行動するしかないのです。弱い者を守るという素朴すぎる正義感は、継続的な人間関係である夫婦の機微に適切に対応することは不可能です。ところが、警察という威力を背景に事が進んでいきます。夫婦間で夫が子どもを養育するという合意があったとしても、その場で子どもを妻に引き渡すという合意をさせられて、子どもを渡したきり会えなくなるということが実際に起きていることです。警察は、子どもは母親が育てるもの、母親が子どもを育てるといったならそれはかなえるべきだという素朴なジェンダーバイアスがかかった見方をするわけです。しかしその威力はすさまじく、波の一般人は抵抗することはできません。いったい何人の親が、警察を通じて子どもと会えなくなったことでしょう。
本来親の監護権については、当事者の合意が整わない場合、家庭裁判所の判断によらなくてはなりません。しかし、現行法下において、既に身体的暴力が認められない場合でも子どもは警察の素朴な感じ方によって母親に連れ去られているわけです。児童保護のケースもそうですが、子どもが親から強制的に分離される場合に、実質的に裁判所が関与しないのは日本だけではないでしょうか。国際的批判を浴びているところですが、あまり報道もなされません。この結果子どもが同居親から虐待を受けていたり、同居親の交際相手から虐待を受けていることこそ問題なのです。
裁判所は、両当事者に公平に、申立書と答弁書など両当事者の意見を聞いて、子どもの心理や行動科学精通した調査官が調査を行って子の監護について判断する建前を持っていますが、警察にはそのような建前すら初めから用意されていないのです。

<ある一断面だけで、夫婦関係を評価してしまうこと>

どうしても警察がこのような対応をしてしまうのは、経過のある夫婦の人間関係のある断面だけを見ているという理由もあります。それは被害を受けた妻を見ているというのは不正確で、被害を受けたように精神的にダメージを受けている妻だけを見ているということにあります。大人が一人、とても不安な様子を見せていて、精神的に消耗しているようだ。これには理由があるはずだ。誰かが、妻を子のようになるまで攻撃していたに違いない。DVがあったに違いない。原因がなければ結果はない。というこれまた素朴な感想のもと事実を決めつけてしまうようです。だから、統合失調症で包丁を持って暴れた妻の方を保護するわけですし、子どもがけがをしていれば、父親の児童虐待があったはずだということになるわけです。乳児の脳挫傷があればゆすぶられ症候群があったはずだという論理です。しかし、私が「思い込みDV」となずけたように、疾患によって、不安が増大し、収拾がつかなくなる情勢はとても多くいます。その不安や焦燥感について、何も根拠がないのに夫のDVがあると妻を説得する警察、役所の相談員は事欠きません。事実関係を吟味しないのです。少し常識的な考えで話を聞けば、不合理な事実関係があることは本来すぐにわかるのですが、素朴な正義感がそれを邪魔するわけです。

<警察庁自身の立場は私と同じであること>

このように、警察が家族の問題に介入すると、家族が崩壊する方向にしか進まなくなります。これは、警察官が横暴だというわけではなく、そういう職業だということなのです。むしろ、素朴な正義感が家族調整には邪魔なものだということなのでしょう。これは、私が警察官を低く評価していっていることではありません。警察自身が言っていることです。インターネットで検索できると思いますが、平成25年12月20日付、警察庁生活安全局長、警察庁長官官房長、警察庁刑事局長連名の通達において、身体的暴力があったときでなければ、警察が家族紛争に介入してはならないことについて、「精神的暴力や性的暴力は犯罪に該当しない行為を幅広く含むものであるため、警察がこれに実効ある措置をとることは困難であり、他方、警察による配偶者間の問題に対する過度の関与となり、その職務の範囲を超える恐れがあると考えられるためである。」と全く正しい認識を示しているのです。

さて、現在、国の方では、身体的暴力がない場合でも警察の関与を拡大しようとする動きがあるようです。これらの警察の能力の限界が変わる何らかの事情があるのでしょうか。ないとするならば、どうして拡大することのデメリットを防止するつもりなのでしょうか。


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