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心理学(確証バイアス)・対人関係学を学べるウクライナ報道の見方の違い 主としてプーチンに怒りを持つ人と主としてバイデンを攻撃する人の違い [進化心理学、生理学、対人関係学]


<確証バイアス>
「一度支持した仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと」

YouTubeで面白いたとえを見つけました。

1,2,4,8と4つの数字が「ある法則」で並んでいます。その「ある法則」とはどういう法則でしょう。あなたは、無制限に法則について質問をすることができます。答えがわかった段階で質問をやめて回答してください。

そうするとたいていの気の利いた人は、
一番左の数字を起点として、隣の右の数字が左の数字の倍になっていくという法則なのではないかと思うわけです。
そこで質問として、
この数字を、2,4,8,16と置き換えてもこの法則通りでしょうか。
と尋ねます。出題者は肯定します。質問者は「やはり」と思うわけです。
一応慎重に、念のために
3.6.12.24でも法則に合致するかと尋ねます。
出題者は深くうなずきます。
ここで質問者は、正当を確信して
一番左の数字を起点として、隣の右の数字が左の数字の倍になっていくという法則と答えるわけです。

しかし出題者はそれを正当だと認めません。答えは、「左から右にかけて数字が大きくなるという法則」だと告げるというものでした。

質問者は、自分の回答が真実だと思い、自分の考えた法則に都合がよい質問だけをしてしまったということになります。こういうことが確証バイアスという先入観にとらわれて真実を見落とす見方、行動傾向ということを表しているわけです。

ウクライナ戦争に関しても、ロシア非難一色でしたが、最近はアメリカやNATOを非難する声も大きくなってきました。テレビや新聞の巨大マスコミや、革新政党も含めた日本の政党がロシア非難一色に染められている状況の中で、様々な意見が出てくることは驚きでもあります。

確証バイアスという理論を理解するうってつけのチャンスです。

A ロシア一国(プーチン単独)悪論
Aタイプの方は、テレビで流される悲惨な動画、爆撃シーンや傷ついた人たちの避難の様子、爆撃後の建物の様子、子どもが泣いている様子などを見て、ロシアに対する悪感情を高めていくわけです。CNNやAP、EP通信の情報で、プーチンは精神的に破綻しているとか、ロシアにはもともと野望があるとか、ロシアが行った悪事を過去にさかのぼって聞き出してロシアに対する憎しみを高めようとします。そして、ロシア軍が追い詰められている等の記事を探し出しても読もうとするわけです。そして、ロシアが生物化学兵器を持っているという記事を探し出し、ロシアに対する危機意識を自ら高めていくようです。もちろん、その動画が何年か前の使いまわしだという情報も偽情報だと確信してみようとしません。湾岸戦争の時の油にまみれた水鳥を使ってアメリカがイラクを悪者に仕立てようとしたことや、イラクにありもしない生物化学兵器があると言って侵攻した事実も思い出そうとしないし、日本の公安調査庁や国連や人権団体が2014年以来、非ウクライナ人で構成されているアゾフがロシア語を話す人たちに極右的な思想の元人権侵害をしていたという公的情報もアクセスしようとはしません。少し憎むことにつかれてきた人はともかく、どんどんロシア、プーチンに対する憎悪は高まるばかりです。

B 戦争の原因を作ったのはバイデン大統領であり、グローバル企業の利益のために戦争は起こされ、NATO諸国がそれを知りながら自国の利益のために協力している

Bタイプの人はへそ曲がりであり、それを誇りに思っている節があります。別にロシアに対して親近感もないのですが、マスコミがあまりにも「プーチンが悪い」一色であることから、これは違うのではないかと直感的に思い始めて、いろいろ調べ始めるわけです。

Wikipediaでウクライナとロシアの天然ガスの問題を調べたり、世界史のスラブ民族大移動なんかを復習したり、2014年問題を思い出したり調べたり、歴史を調べ始めるようです。そうして、フェイクニュースのことを調べた直後、アメリカからロシアが作るフェイクニュースの情報が流れだし、そちらは信じずに逆に余りにもわざとらしいタイミングでの情報発信だと思うのです。アメリカが作るのはフェイクニュースだけど、ロシアが作るフェイクニュースは偽物だとわけのわからないややこしいことを考え出すわけです。ウクライナの閣僚の過半数はアメリカ国籍だなどと、閣僚の名前もわからないでそういう情報を入手するわけです。バイデンの息子が、ウクライナで経営コンサルタンや貿易商をやっているという情報にも真偽を確かめないで飛びつきます。そうして前述の、2014年の日本の公安調査庁のアゾフに関する分析結果を読み、アムネスティの警告をグーグル翻訳を使って読み、2016年の国連高等弁務官の人権侵害の勧告書を読んで、やはりロシア語を話す人たちが迫害されていたと確信を持ち、迫害していたのはウクライナ人ではなくゲルマン人の白人至上主義者たちだなんてことを確信するわけです。ウクライナ侵攻の前から小麦が高騰していたのにもかかわらず、ウクライナ侵攻を原因としてというマスコミの対応はいかにもわざとらしいと思うようになるわけです。すべてが、天然ガスと小麦の生産をグローバル企業がロシアから奪ってコントロールするためだなどと思い込んでいくわけです。そして、ウクライナとアメリカの合同軍事演習があり、対洗車ミサイルであるジャベリンをバイデンがウクライナに提供したことからロシアが侵攻を始めたのだと確信していくわけです。そして、ロシア軍が劣勢だというニュースは、ロシアが劣勢を挽回するために核兵器やあるかどうかもわからない生物化学兵器を使う危険が高まったからロシアに対するアメリカやNATOの攻撃を正当化するための口実準備だなんて思うわけです。

興味深いのは、Bタイプの情報ソースとなっている論者たちは、自分の主張がロシアに同情的な論調としか思われないのに、最初か最後に、「ロシア侵攻を肯定するわけではないけれど」という、とってつけたような断りを入れることです。また、トランプが意外と平和の人であり戦争を起こさない方向で頑張っていたというような態度を示すということです。だからと言って保守派とは限らないことが面白いところです。

これはAタイプ、Bタイプどちらも言えることです。左派だから、保守だからと言って対応関係にはなっていないようです。親米保守、現政権猛烈支持という人たちは当然Aタイプです。しかし、社会党や共産党もロシア制裁決議に賛成しているので熱烈なAタイプです。保守系メディアで活躍している人が論理的なBタイプの主張をするかと思えば、革新よりだった人たちが大政翼賛会のような国会情勢や大本営発表のマスコミに疑問を呈するようになってきています。とはいえ左翼系のBタイプは元々反米的な立場を保っていた人たちのような気がします。アメリカ発信の情報に乗っかって制裁決議を上げるのですから左派政党は必ずしも反米ではなかったというなので驚きですが。

どちらにしても、自分で体験したことではないので、真実がまるで分らないことなのですが、感情的にはどちらかの主張を信じて疑わなくなっていくということが起きているわけです。ただ、被害を受けている人がウクライナ人であることはまず間違いのないことのようです。

長くなって申しわけありません。ここまでが前振りです。Aタイプが多数派になる理由について考察をするということが今日の本論です。

<対人関係学による説明>
対人関係学は、人間には群れを作るモジュールとして、
・ 弱い仲間を助けようとする。
・ 仲間を攻撃するものを敵とみなして憎しみ戦おうとする。
という本能が遺伝子に組み込まれていると主張しています。その本能の前提として群れを作ろうとする本能、群れから外されそうになると不安になるという本能があるということも言っているのですが、今回は主として上に掲げた二つです。この二つがあったために、強いものばかりが群れの財産を独り占めにして群れが縮小していくことを防ぐことができたし、戦う能力も逃げる能力も貧弱だった人間が集団で戦うことによって生き延びてきたという、200万年前には不可欠の行動パターンだったと主張しています。

そうだとすると、爆撃によって逃げ惑う人たちの動画、戦うために家族と離れていく場面の動画、病院や学校という弱い者のいる場所に対しての攻撃動画などは、特に脈絡を知らなくても、その場面を見るだけで、こういう困っている人を助けたいと思うようになるわけです。人間はそういう動物だということで説明が付きます。そうして、弱い者、悪くはないのに攻撃されている者をみると、何とかしてあげたいという焦りを伴う切迫感を持つようになります。
また、怒りという感情は、危険を感じて、危険と戦うことで危険を回避するときの感情です。基本は自分が危険であるときに起きますが、仲間を作る動物である人間は、仲間が危険に陥っているときにも怒りの感情がわきます。怒りは危険回避のためのツールですから、危険が回避されるまで消滅することはなく、怒りによる逆襲が功を奏すれば奏するほど強くなっていきます。だから、反撃して優位に立っても、相手がひるんで逃げだすか死なない限り、怒りは高まり続けるのです。仲間のために戦うことは人間の本能だと思います。
こうして、プーチンに対する怒りが起きていきます。

怒りは危機回避のツールです。危険は確実に回避されなければなりません。怒りが起きているときには、他のことを考えにくくなります。攻撃に集中するためのツールともいえるでしょう。だから、「ロシア憎し」という怒りが起これば、もしかしたらそれはフェイクかもしれない、悪いのはバイデンかもしれないなどということを考えてみたりすることはできにくくなります。また、どちらが悪く、どちらが善かという二者択一的な思考しかできなくなります。複雑な実態などどうでもよく、歴史なんてことも煩わしいだけです。ただ、怒りの感情を放出したいことに集中していくことだけが要求となります。これが人間の感情の仕組みです。ロシアに対する制裁決議を上げて、それがどうウクライナ人たちの利益に結び付くかなんてことを考えずに決議に賛成するのはこういう原理です。もはや仲間を守ることより、攻撃対象を攻撃することが優先されているわけです。

もう一つ怒りには特徴があります。それは、自分の安全が確認できないと怒りという感情は起きにくいということです。圧倒的に強い相手、対処しようのない危険だと感じたときは、怒りではなく恐れを感じて、危険が回避されるまで逃げようとするということになります。それでも、近しい群れの仲間、端的に言うと自分の子どもの危険に対しては、時にかなわない相手に対しても怒りをもって戦いを挑むことがあります。子連れの母熊などを思い出すとイメージできると思います。


Aタイプの人たちは、善意の人たちであり正義の人たちです。直感的に弱い者を守ろうとするわけですし、悪に立ち向かおうとするのですから、こういう人が多くなければ人間は滅亡していたのでしょう。200万年前はヒトの群れは数十人から150人程度の群れであり、他の群れとは出会わなかったため、自分の群れの人間を守ろうと考えても間違いが起こりうることはありませんでした。群れの仲間がほとんど人間のすべてですから、仲間を守ろうとすることと人間を守ろうとすることは一緒だと考えてよいでしょう。仲間を攻撃するのは肉食獣などですから、怒りに任せて反撃することに何のためらいも必要はありませんでした。おそらく99.9パーセントはAタイプの人間だけだったのだろうと思います。

しかし、農耕を始めてから現代まで、より狭い空間により多くの人と生活をするようになったため、世の中はたいそう複雑になりました。人間を攻撃する一番の動物は人間になったと言えるのかもしれません。そういう時に、おそらく例外的な遺伝子を持った人間の活躍する余地が出てきたのでしょう。即ち、誰かが感情的になっていると逆に冷静になる人、善意や正義感に従って行動しようと思わない人、多数の意見に従いたくない人、こういう遺伝子を持った人たち、それまではその遺伝子を隠そうとしていた人たちが、時代が進むにつれて主張を始めたのかもしれません。裁判官等の法律家というのは案外Bタイプでなければ務まらないのかもしれません。

基本としてAタイプの人がいて、補助的役割としてBタイプの人が自由に発言する。そうして、全体として行動の修正をして進んでいく。これがおそらく民主主義という制度なのではないでしょうか。Aタイプを馬鹿にせず、Bタイプを排撃せず、多様性を認め合う仲間は強い群れになり、永続性を得るというのはこういう理屈です。人間は間違うものだということを認めるのが、行動経済学をはじめとする21世紀の認知心理学の基本的スタンスです。多数は多数であるがゆえに間違いを起こしている可能性がある。だからと言って、Bタイプばかりだとギスギスしてなかなか物事が進まないということかもしれません。

日本の国会の民主主義の程度が、ウクライナ情勢ではっきりしたということは大変皮肉な話だと思います。野党としてBタイプの行動をする人がいなければ、民主主義は成り立ちません。もしかしたらBタイプの保守に民主主義の継続を期待するしかないのかもしれません。

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