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うつ病、PTSDが原因として慢性疼痛が発症する可能性を論じてほしい [進化心理学、生理学、対人関係学]



私の依頼者で、10年くらいうつ病やPTSDで苦しんでいる患者さんが数人いらっしゃいます。このような慢性的な精神疾患の場合、ほぼ必ず体が痛いという症状が出現します。順番で言えば 精神疾患が発症して何年後かに疼痛が発生するのです。痛みの部位は、後頭部や後頚部、背部が多いように思います。検査をしても痛みの原因がわかりません。慢性疼痛とか線維筋痛症等の診断名が付くようです。

慢性疼痛の本を読むと、しつこい慢性疼痛が原因でうつ病などの精神疾患にり患するということが書いてあることが多いです。確かに慢性的感覚異常というのはとても強いストレスになるようです。痛みだけでなくかゆみも深刻な苦しみになるようです。

一般的にはそのように慢性的な感覚異常になれば、精神的に圧迫されるというのは感覚的にわかりやすいと思います。しかし、私の周囲の現実はうつ病やPTSDが先ず発症して、そのあとに痛みが出現しているのですから順番が逆なのです。しかし、この逆の順番は説明がほとんどありません。

疼痛を扱う医学分野は整形外科や神経内科でしょうから、患者さんは痛みを主に訴えて医師の元に行くわけです。医師は先ず痛みから向き合いますので、患者さんの精神状態は後回しになるのではないかと思います。だから、整形外科の医師から見れば、疼痛が原因になって精神疾患が発症したと受け取りやすいのではないでしょうか。

しかし、元々うつ病やPTSDがあって、後に疼痛になることをこれでは説明できません。

医師の中には向精神薬の副作用ではないかと考えている人もいるようです。そうかもしれませんが、病院などではそのような診断はなされず、疼痛があって苦しくても精神科の処方は代わりません。(もっとも患者さんが、疼痛は精神科ではないから精神科のお医者さんには痛みを報告していないという例も結構ありそうです。)疼痛の副作用があると正式にアナウンスをしている向精神薬もなさそうです。

近時脳科学が発達して慢性疼痛の仕組みが解明されつつあるそうです。それによると、整形外科ないし脳科学的な説明をすれば、脳が痛みを感じても、脳にはもともと痛みの感じ方を抑制する対応策を自動的に行う仕組みがあるのですが、痛みを長期的に感じ続けるとこの対応をする脳の部分の機能が低下してしまって、痛みの抑制という対応がうまくいかなくなってしまって疼痛が起こるということらしいのです。

そうであれば、痛みによらなくても、慢性的なうつ病やPTSDの継続、持続によって、同じ対応をする脳の場所の機能が低下してしまい、痛みを感じやすくなるということがあるのではないかと思います。

アメリカの精神科学会の病類分類では、痛みを感じる精神病という病名があるようです。これとの関連性は全く分かりません。いずれにしても、慢性疼痛が外傷からくるものではなく、脳内変化により引き起こされるものであり、それは精神疾患り患が契機になりうるのではないかというつぶやきをさせていただいた足代です。



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お名前

興味深く記事を拝読しました。
痛みは脳が感じるものであり、必ずしも身体のどこかが病んでいるとは限らないという話をお医者様と議論したことがありました。脳が痛みを感じないようにするため、痛みの記憶を忘れて行けば、脳が感じる痛みがなくなる、という、記事で触れられているのと同じ「整形外科」の医師の考えでした。

医師によると、CTやMRI検査の結果、手術が必要そうに見える重篤な神経障害があっても、その痛みを克服してイキイキしている人もいれば、逆に検査では大したことがなさそうだったり痛みの原因がわからない場合でも脳が感じる痛みに耐えられないと愁訴する人もいるそうです。

一方では、身体の一部が「痛い」という事実が必要な人がいる場合もあるとか。痛みが生じた過程が、自分が虐げられた結果であったとすれば、加害者への恨み恨みで痛みが生じて長い年月あいだその痛みが身体に(脳に)温存されてしまう、ということのようです。

それはさておき、薬物の力を借りて痛みを鎮め、その間に身体を動かして筋肉を鍛え、患部から障害を取り除いて行き、最終的には痛みの記憶を消していく、という療法もあるそうです。
by お名前 (2023-05-10 22:48) 

ドイホー

コメントありがとうございます。また、色々教えていただき感謝です。大変勉強になりました。「特に一方では、身体の一部が「痛い」という事実が必要な人がいる場合もあるとか。」という点が大変心惹かれました。痛みも他者とのかかわりの中で考えるべき場合があるのかもしれないなどと感じました。
by ドイホー (2023-05-11 09:16) 

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