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闇バイトに応じる背景 「そこまで考えていなかった」その2 [進化心理学、生理学、対人関係学]



銀行強盗だったり、殺人だったり、オレオレ詐欺であったり、インターネットのアルバイト募集に若者が気軽に応じてしまい、大事件の犯人として刑罰を受けるという報道を目にするようになりました。

色々な意味で、よくわからないことがあります。応募する方であっても、見ず知らずの人間を採用してしまうことによって、事前に情報が漏れてしまうリスクもあるはずなのですが、これまではそのような事前情報によって事件が未然に防がれたという話は聞いたことがありません。

一つにはマニュアル等によって、様々な不具合が無いようにシステムが整備されてしまっているのでしょう。もう一つは、アルバイトを遂行して現実の報酬を得たいという切実な意識の高い人が応募してしまうということが理由なのかもしれません。

それでも、強盗にしろオレオレ詐欺にしろ、被害者の被害は甚大で経済的問題にとどまらず、精神的にも取り返しのつかないことになることがあるのですが、そのように他人を苦しめることによって、闇バイトの応募を思いとどまることは無いのでしょうか。

自分自身も、見つかれば逮捕されて実名がさらされてしまい、将来の働き口は制限されてしまうでしょうし、評判は消えない恐れもあります。自分の人生にとって取り返しのつかないことになることは、想定しないのでしょうか。

私の弁護経験からすると、前回の記事と同様
1 切実なお金の取得の必要性があり、
2 アルバイトを行って、報酬をもらうということは考えていても
  被害者の被害や警察に捕まるということまで考えていなかった
ということがどうやら実態のようです。うすうす警察に捕まることを考える人もいるのですが、リアルには考えないようです。だから捕まると困るからやめようというくらいまでは考えが及んでいないようです。

問題は、なぜそこまで考えないのかということなんです。

極端な話、仮に警察に逮捕され、刑務所に行くことになっても、現状よりもそれほど悪くはならないのではないかというあきらめがある場合があります。

闇バイトの事件ではないのですが、無銭飲食の常習者の弁護をしたことがあるのですが、70歳近い人で、刑務所から出て何日かで、ホステスが接客するバーで豪遊して、お金が無かったということで再び刑務所に行くことになった人がいました。外で生活する自信がなく、刑務所に戻りたいという節があるように感じられました。

とはいえ、彼らはもちろん刑務所に行きたいわけではないのです。刑務所が住みやすいところだとはだれの口からも聞いたことはありません。それでも現実社会や人間関係の苦しさや不自由さを感じ続けていると、そこまで日常のストレスを感じていない通常の日常を送っている人と比較した場合は、刑務所に入る抵抗感は「相対的に」だいぶ低くなるようです。

おそらく、「犯罪をしない」、「不道徳な行為をしない」、「他人を苦しめない」とか、自分自身が困ることをしないように気に掛けることのできる人は、将来的な自分の像を思い描いたり、目標を持つことができる人なのかもしれません。将来的な自分を思い描くと、不安や絶望しかない人は、自分が障害をくぐり抜けて生きるということが一番の関心事になってしまい、社会や他人のことなどが自分の行動原理に影響を与えることが少なくなるのかもしれません。特に自分の行う犯罪や不道徳な行為によって具体的に被害を受ける人の顔がわからない時は、その人の被害に思いをはせることが無くなる傾向にあるように感じています。

もしかしたら、社会、他人は、自分を守る存在ではなく、自分を苦しめる存在だと感じていたなら、社会を敵に回す行為と言っても、元々が敵であり、自分を苦しめているのだから、これ以上悪くなることを考えようとしなくなるのかもしれません。

こういうことを言うと、「じゃあ社会が悪いのであって闇バイトをする奴は悪くないというのか」と言う人がいますが、次元の違う話です。犯罪を行ったものは、適正に処罰されればよいだけの話です。私が考えたいのは、被害者を増やさないためにはどうしたらよいか、闇バイトみたいな安易な方法で犯罪を行う集団が簡単に結成されてはいけないということです。

もう一つ深く掘り下げたとするならば、彼らは何に絶望しているのかということです。彼らは何を思い描き、自分の在り方としての最低ラインがどこにあり、何を大切にしようとして、それができないと言って絶望するのか。この点について現在考えを進めているところです。

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