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弁護士はいじめ防止対策推進法を学習することが求められている。知らないではすませられない。 [弁護士会 民主主義 人権]



最近実務的上、気になることが何件かありました。
いじめで長期間不登校になった、あるいは自死を図った事案の場合の、法が予定している制度を知らない弁護士がいるようなのです。知らないなら相談を受けるべきではないのですが、知らないことを知らないなら対処がありません。

あたかも、労災(公務災害)申請制度を知らないで、労災の相談を受けるようなものです。

また、学校もある程度、法律を知っているようなのですが。その制度のあるべき運用について十分に知らないか、あるいは意図的に文部科学省の行政指針とは異なる運用をする管理者が増えてきているようです。

そうであるから、弁護士は、児童生徒の保護者から相談を受けた場合は、第1次的にいじめ重大事態であることを適切に評価して、学校設置者や学校に対して、法律によれば教育委員会への報告、重大事態に関する組織を設置しての調査(第三者委員会の調査)を行うことが適切に行われるように働きかける対応をしていかなければなりません。

第三者委員会について、文部科学省は、弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有し、当該いじめ事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない第三者の参加を図ることにより、当該調査の公平性、中立性を確保するように指導しています。

先ず、この第三者委員会によって調査を行うことが、学校という密室でいじめ被害に遭った可能性のある児童生徒、保護者にとって有効であるということを認識するべきです。

ところが、この実際の第三者委員会については、実務上以下の通り問題が見られます。

・ 児童生徒やその保護者に対して匿名で行われている。⇒ これでは、利害関係のある者が参加しているかどうかがわかりません。とても公平性・中立性の外観がはかられません。
・ 学校関係者が多すぎる。退職校長、スクールソーシャルワーカー、中にはPTAの役員が入っている調査組織もありました。⇒ これは学校にとって都合の悪い事実は認定しないという外観が作り出されてしまう。
・ 教育委員会への十分な報告がなされていない場合がある。⇒ 自己流で行う危険があります。
・ 児童生徒、保護者に対して事情聴取を行わないで、結論をまとめようとする。これは案外多いようです。⇒ これは文科省の指針とは全く反対の行動です。
・ 児童生徒、保護者に対して委員会開催さえも知らせない。⇒ 同じく。
・ 重大事態であると理屈をこねて認めない。⇒ 文科省の運用指針では自由な解釈の余地がなく細かく設定されていて、重大事態ではないとごまかすことができなくなっています。

こういう調査が行われれば、保護者は納得しません。法の知識がなくても、自分の子どもの案件が学校によって握りつぶされるという危機感を持つことは当然のことです。

先ず、相談を受けた弁護士は、このような法律や文科省の運用指針に反した学校、場合によっては教育委員会の運営を、文部科学省の運用指針をもとに是正させる行動をするべきだと私は思います。

誰に対してどのように働きかけるかという問題は、その時々の運用の在り方によって異なりますので、そこはいろいろなノウハウを交流させる必要があると思います。ここを具体的に研修することが大切です。

なんにせよ、いじめ重大事態の起きた場合のフローチャートをしっかり理解しておくことが大前提となります。そうでなければ法律の条文文言からは違法性が無いように見えてしまいますが、文科省の運用指針を知っていればそれから全く逸脱していることがはっきりします。知らなければ是正を求めようもありません。法律の条文だけを知っていても役に立たないわけです。

いじめ防止対策推進法も法施行から10年となりました。当時は最先端の議論、政策論が割と活発に議論されていましたが、現状、法の知識もない人たちが弁護士や学校関係者にも増えてきたようです。

しかし、法律を知らないということは弁護士の場合、言い訳にならないこともあります。また知らないことによって不利益を受けるのは、いじめられた児童生徒であり、その保護者の方々です。

学校や教育委員会の現状からすれば、弁護士や弁護士会に相談が来ることも増えることが予想されます。この機に各単位会で学習会を開いて、適切な事案対応をすること、制度が分からない場合は分からないから別の習熟した人に回すということができる状態にしておくことが求められていると思われます。

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