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家族の機能③ 群れを作る、生理的な、メンタル的な必然性 [進化心理学、生理学、対人関係学]



人間は、飢えや肉食獣の脅威、自然現象の脅威から常に命の危険を感じてきたわけです。それでも、相当年齢を積まないと繁殖能力を持てませんし(他の動物との比較)、そもそも生きていくための能力すら獲得できません。なるべく成体が長生きをする必要がありました。

体や脳の大きさや、食物連鎖の位置づけから考えると、ヒトはかなりがんばって長生きをしていると思います。

その秘密は、群れを作るところにあったのだと思うのです。

人間は、細胞レベルで昼と夜を区別する体内時計をもっているといわれています。朝方から夕方にかけて、交感神経が優位になり、活動しやすい状態になります。逆に夕方から朝方にかけて副交感神経が優位になり、活動で傷ついた血管など体のあらゆる臓器、仕組みを修復しているそうです。これを概日リズム(サー下で慰安リズム)と言います。このリズムがくるってしまった状態が時差ボケです。時差ボケには、太陽の光を浴びて、強制的にリセットすることが有効です。

小動物を狩ったり、植物を採取したり、肉食獣から集団を守ったりするのは、昼間に行うことは大変都合が良いことです。交感神経が活発になり、筋肉を流れる血流が増えることによって、走って逃げたり、追ったり、腕力で戦ったりすることに都合が良い状態になっているからです。夕方に群れに帰り、群れが合流して大きくなれば、肉食獣からの攻撃の可能性も低くなりますので、安心感を持つことができます。怒りを鎮めて、些細なことを気にしないことによって、副交感神経を優位にして昼間の疲れ、微細な傷つきを修復していくことを効率的に行うことができます。それによって効率的な睡眠をとることができます。

また、何があっても、自分は守られている、尊重されているという安心感はこの副交感神経をさらに優位にすることができるでしょう。

逆に、群れの中で、自分に対する風当たりが強いとか、歓迎されていないようだということがあれば、副交感神経が優位になり切れず、絶えず不安が渦巻きますから、寝ている場合ではなくなり睡眠不足にもなりますので、副交感神経による臓器修復がうまくいかなくなり、早死にしてしまいます。

これの現代的な形態が過労死です。

メンタル的な要因によって、あるいは生理的問題がメンタルに影響を与えて、概日リズムがうまくいかなければ、不安が増大し、不安解消要求も増大し、精神が破綻して自死が起きてしまうわけです。

メンタルとは、肉体から分離された何かではなくて、肉体を反映したもの、あるいは肉体の状況に直結しているものだと考えた方が良いと思います。

このように考えると、狩猟採取時代は群れという小集団を、現代では家族を作って生きることは、ヒトとして生きるために不可欠な営みであり、それは体にしみこんでいるという言い方もできるのではないかと思われます。
ただ、狩猟採取時代の群れと、現代の家族は環境がだいぶ異なります。お金さえあれば、飢えるとか、肉食獣などに襲われる心配はありません。

収入を得るための就労と家事育児を分担すれば狩猟採取時代と同じ合理的に家庭を営めるのでしょうが、現代では専業の主婦、ないし主夫は、よほど相手が良い収入が無いと成り立たないこともありますし、働いて収入を得ることが人間の価値だなどという昭和のDV夫みたいな価値観が世の中の価値観になっているようです。

家事育児と外に出て就労することの分担ができない状況になっており、これは一般的傾向としては人類史上かつてない現象だと言えるのではないでしょうか。

さて、役割分担もしないのに、夫婦を中心とした家族を形成する合理性はあるのでしょうか。合理性がないならば家族という制度は早晩消滅する定めなのでしょうか。

現代社会の中で家族というのは、200万年に及ぶ人類史で示された群れという小集団の機能と何らかの変化があるのか、どのような環境によるのかについて、また、本当に家族は必要なのかということについて次回の記事で考えていきたいと思います。

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