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【ご報告】うつ病休職からの復職支援シンポジウムが開催されました。 [労災事件]



令和7年1月25日、エルパーク仙台の会場で、実行委員会形式で、うつ病からの復職支援シンポジウムが開催されました。ご報告します。

ある中学校教員が、パワーハラスメントでうつ病となり、11年余りでのべ約2000日休職した後に、復職して現在も就労しているという体験をもとに復職できたポイントを検討していくことがテーマでした。

この企画の画期的なところは、うつ病休職をした当事者が自身の体験を語るだけでなく、闘病を支えた妻も登壇して報告をしていたところにあると思います。

うつ病も重症期に症状が活発に出るときは、本人自身にその記憶が無いこともあるようなのです。例えばオーバードーズをしているときは、ほとんど本人は意識がなく、症状を緩和させる薬が効かないので、次々お菓子を食べるようにぼりぼり飲んでいくということも、本人は覚えていないようです。妻が近くにいて、それを止めなかったらどうなっていたか分からないというエピソードは迫力がありました。

抑うつ気分がよく知られている症状ですが、どちらかというと疲れやすさや首の後ろから背中、肩にかけての痛みを訴える人は、うつ病に長期罹患している人に多いようです。この疲れやすさがあるのですが、ここを理解することが大切です。うつ病の人は概して真面目な人が多く、ここまでやらなければならないという目標を比較的高いところに掲げて、やりきるまでやめようとしないということが多いです。そして頑張ったり、時間をかけたりしてやり遂げてしまうわけです。例えば私なんかは、「ここまでやった方が良いけれど、今日はこれだけやって疲れた。頑張ったご褒美に帰ろう。」といって帰宅するわけです。そういう隙間を作ることを潔しとしないのがうつ病の方なのです。

だから、人の中に入ると、自分の役割を果たそうと頑張ってしまいます。第三者の視点でみると、活発に活動しているようにみえます。しかし、「やらなければならない」という責任感というか真面目さというかで、気力を振り絞ってやってしまっているので、それが終わったらぐったりしてしまっています。

また、奥さんの話では、「病前と発病後で、性格は変わっていない。ただ、症状が出てしまっているだけだ。」という感想も貴重でした。病前の性格で、他人を楽しませようという行動をとる人は、発病後も、気力が残っている限り、同じような行動をしてしまう。しかし、それはエネルギーが極端に消耗するので、家に帰るとガス欠の自動車のとおり、動かなくなってしまうようです。こころも動かないし、体も動かないというのがうつ病のようです。

ところが、素人の人たちは、「元気そうじゃないか、それだけできるならもう大丈夫だ。」みたいな感覚になってしまうのです。さすがに精神科医はそういうことはないでしょうが、医療スタッフでもそのように言う人が結構報告されています。うつ病かどうかは、診察に訪れた病院の様子からは分からないというべきだと思います。

こういううつ病の実態が分かれば、うつ病の人に行ってはいけない言葉はおのずとわかります。

だからあれを言ってはダメ、これを言ってはダメというよりも、相手の状態を理解した上で声がけをすればよいわけです。失敗したら、誤って訂正する人間関係を作る方が前向きであるとも思われます。

また、うつ病には波があります。重症化しているときは、自己抑制が効かなくなることがあります。それは一過性のものですから、その人のベースとなる人格ではありません。

ただ、その人の病前性格を知らないと、一番問題のある時の状態がその人の人格ではないかと思ってしまうことがあります。ここにも支援必要性があると私は思うのです。

何か問題行動を起こしても、その人の人となり、その人の症状の特徴を、職場に説明できれば復職もスムーズに進みます。

つまり、その人をできれば病前から知っている人、発病後の知り合いであっても、病前から知っている人を交えたコミュニティーがあれば、その人のアウトラインを理解することができます。そういうコミュニティーの中で、役割をもってうつ病者が交流できる状態を持つことが、復職後にも役に立つのですが、実は復職をしようと思える大きなきっかけにもなるようです。ここがこのシンポジウムのキモの部分だったと思います。

つまり、本件教員は、うつ病の公務災害認定や裁判を進めていたのですが、その時の支援者や弁護士と、月1くらいで弁護団会議をやっていました。10年近くの付き合いになっている人たちもいました。ここでの交流の体験から、復職という人間関係の形成の再出発の訓練をしていたようなものだったようです。だから、不安はあるものの、思い切って復職の扉を開けることができたのだろうと思われます。
もう一つ貴重な発言がありました。「うつ病をすっかり良くしてから出ないと復職してはだめだ。」ということでは復職ができないということです。復職していく過程の中でうつ病を克服していく、うつを抱えながらも仕事をできるようにしていくということが前向きの話なのだということでした。

症状にもよりますが、「うつで休んでいるから人前に出て行ってはいけない。」ということが一番の間違いなのでしょう。家に帰って2,3日寝込むことがあっても、そこに行きたいという人間関係を作ることは、実はとても有益なのです。人の中で発症したうつは、人の中で症状を軽くしていくということが復職の大きなポイントになりそうです。

とても貴重なシンポジウムだったと思いました。

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