「一言多い。」と言われるその「一言」とは何か。自分が過小評価されていると思うときに考えること。 [進化心理学、生理学、対人関係学]
能力があるのに、それにふさわしい役割を与えられない人がいます。能力がまともに評価されないどころか、初めから評価の対象から外されることもありそうです。仕事上のミスをしなくても、煙たがられているために悪い査定をされたり、契約の更新を拒絶されたりします。こういう場合、「もしかしたら自分は一言多い。」のかもしれないと考えてみると良いかもしれません。
また、よく「一言多い」と言われるけれど、何がその一言か分からない人も多いと思います。余計なこと、言わなくても良いことを言っているのですが、どうしてそれが言わなくても良いことなのかがわからないようです。「空気を読めない」と言われる場合も、もしかしたらこの一言余計な言葉を発しているからかもしれません。
いろいろなバリエーションがあると思うのですが、一番多いパターンは、
誰かを否定評価している
場合です。
もちろん、本人は否定評価しているつもりはありません。また、相手を傷つけようと思っているわけでもなく、不快に思わせてしまうかもしれないとは考えてもいません。
例を挙げてみましょう。
① 事例
例えば仲良し10人グループが二つのチームに分かれて、大食い大会を開いたとしましょう。ケーキでも、パスタでも、回転寿司でも何でもよいです。
この時、ひそかに闘志を燃やして、自分がチームに貢献しようと思っているAさんがいたとしましょう。二人のキャプテンが、チーム決めをして、自分のチームを勝たせようと、10人の中からメンバーを選抜していきます。そうして最後に残ったのが、そのAさんともう一人としましょう。一方のチームのキャプテンが二人を選べるのに、義理でAさんを自分のチームのメンバーに選んだ時、他方のチームのキャプテンだったあなたXさんが、「え?Aさんそんなに食べないでしょうに。」と言ってしまったという例です。
Xさんにとっては、大食は実生活で役に立つ能力ではないので、その能力を否定したところでAさんが不快な思いをするとは思わないわけです。Xさんは、純粋に有利なチームにするために戦力を調える行為をしているのだという意識を持ってしまっています。それで他方のチームのキャプテンのAさんをチームに入れる行動が純粋に理解できないので、思わず言ってしまったということになります。
大食い大会は、純然とした遊びですから、本来勝ち負けにそれほどこだわらなくても良いのですが、一時的に真剣勝負のモードにみんななっています。Xさんの疑問はある意味自然です。
しかし、Aさんにとっても、真剣モードになっていましたし、自分は自分のチームに貢献しようとひそかに思っていました。そこでのカウンターパンチを食らったので、通常はどうでも良いことなのですが、その一瞬では不快に感じ、「馬鹿にするな。」という気持ちになってしまうわけです。
XさんとAさんの受取り方の違いの理由はまだあります。
Xさんは自分がこれから言葉を発する方です。言葉を発する前からAさんに対して悪意もないし、傷つけようとしていないことを自分で知っています。このため、「発言しても悪いことはない。」と思って発言することができます。
しかし、Aさんは発言を受ける方です。Xさんが発言して初めて、Xさんの言葉だけが、あるいは語調も含めて入ってくるだけです。AさんからするとXさんの真意はわかりません。このため、「自分が低評価されている」と感じてしまうわけです。
② 事例
別の事例では、取引先に、XさんとAさんが一緒に赴いて商談をしているとします。Aさんがある言い間違いをしました。Xさんはすかさず、言い間違いを指摘してしまいます。Xさんは、Aさんが間違っていることを教えてあげようとしていたとか、取引先との信用を損なわないようにしようとしていたかもしれません。また、そういう是正をしなくてはならない場合もあるでしょう。しかし、案外どうでもよいような漢字の読み方のような間違いのような場合は、取引先から帰るときに二人だけになったときに指摘すればよいようなことです。あるいは主観の問題でどちらともいえる場合(それが変か変ではないかとか)に、取引先の面前で、あたかも致命的なミスをしたように指摘してしまうと、Aさんとしては、取引先の前で恥をかかされたという気持ちになるわけです。間違った自分が悪いとしても、そういう気持ちは出てくることを止めることはできません。
③ 事例
もう一つ例をあげます。Xさんともう一人がAさんをからかっていたとします。そのもう一人とAさんは特別仲が良いという場合はAさんからすれば、からかわれても否定評価されているわけではなく一過性の「からかい」だと認識できますのでそれほど不愉快にはなりません。しかし、そのもう一人ほど仲が良いわけではないXさんのからかいは、Aさんとしては言葉通りの受け止めをしてしまいます。また、本当はその仲の良いもう一人の人から言われることだっていやだった場合は、その仲の良いもう一人に文句を言わないで、すべての怒りをXさんに向けるということもよくあることです。
まとめますと、一言多いその一言とは、「相手に対して自分が否定評価されていると思わせる言葉」ということです。
そして、何が「相手に対して自分が否定評価されていると思わせる言葉」かは、「言葉を発する方はわからない」と考えた方が無難です。
だから、「一言多い」と言われている人は、相手に関しての評価を含む言葉はしないということが無難なわけです。どういう場合が相手に関しての評価の言葉になるかは、3つの例から考えていただくと良いと思います。
特に注意するべきは、「自分が正しい」と思っての発言とか、「相手の言動に合理性がない」という指摘をする場合です。こういう場合は、必要がなければ言わない、言ったとしても控えめな態度に終始するべきなのでしょう。
2025-01-29 11:20
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