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慢性・持続性ストレスへの旅 1 キャノン 「生きる知恵」 対人関係のhomeostasis [自死(自殺)・不明死、葛藤]

先日、過労死弁護団の年に2回の会議に出席してきました。
その会議に向けての研究報告書が出されていて、
それによると、
現在の労災認定基準では、エピソード的な出来ごとが重視されるが
もっと有害なストレスがあり、それは慢性・持続性ストレスであるとし、
この解明が重要だというのです。

私は、最近はいじめの問題でこの論理を主張していたのですが、
さすがは過労死弁護団だと改めて敬意を表したくなりました。

私は平成27年6月に
「交感神経持続による反応群」という概念と対人関係的アプローチの提案
http://www001.upp.so-net.ne.jp/taijinkankei/koukanjizokuhannougunn.pdf

という拙文を作成していますが、

改めて、勉強し直そうと思い、
先ずはキャノンから読み始めることにしました。
本当は、弁護団の報告書ではセリエの論文が紹介されていて、
それを入手しようとしたところ、
キャノンの本も、紹介されていたので、
ついでに買ったところ、先に来たので読み始めたということでした。

大変な驚きでした。
これまで、色々な文献やネットで引用していた物だけを見て
キャノンを認識していたのです。
だいたい20世紀前半の科学者ということなので、
正直ここまでとは思っていませんでした。

要するに、今から100年前に活躍した人なのですが、
既に体系ができていて、
それまでの研究を
homeostasis(訳者のルビでは、ホメオステーシス)
という観点からまとめた本が、
「からだの知恵 この不思議なはたらき 」(講談社学術文庫)
という本でした。

特に驚いたことは、
私のあちこちでお話しする三分の1くらいは
この本に書いていあることだったことです。

有害なものを認識すると
逃げるか戦うかという体の準備が起こり、
交感神経が活性化し、副腎髄質からホルモンが分泌され、
血圧が上昇し、脈拍が増加し、体温が上昇し、
瞳孔が広がり、血液が内臓から筋肉に向かう
さらには出血に備えて血液が凝固しやすくなる。
これは全部キャノンがこの本の中でも述べています。
さらにその仕組みについて解説しています。

さらに、さらに、
キャノンは、実際に攻撃行動や、逃亡行動に出る前に
このような反応が起きてしまうことを述べていて、
準備段階として反応が始まっている
ということも明確に述べています。

これで、おっかなびっくりいう必要はなく
「100年前にすでにキャノンも言っているとおり」
と科学的に述べることができるようになりました。

そうして、キャノンは、
こういう反応は、
体の状態を一定に保つための仕組みだ
=homeostasisということでくくっています。

今回の私のテーマもhomeostasisとストレスの関係だったので、
どんぴしゃりのことを約100年前にテーマとして本を書いている人がいたのでした。

気を取り直すと、
私のテーマは、身体生命の有害を覚知した場合ではなく、
対人関係的な有害を覚知した場合のストレス反応なのですが、
この点については、これからの課題のようです。
まだまだやりつくされているわけではないと。

結局、対人関係的な危機感、不安感も
homeostasisの観点から論じることが
有効なのではないかという
観点を獲得したことが大きな収穫です。

とにかく、キャノン先生とお呼びしたくなるような
上質の刺激をいただきました。

最後にマメ知識を一つ
鳥肌というか、さむイボというかありますよね。
あれは、人間に太い毛があったことの名残なのだそうです。
寒さ(身体に有害な事情)を感じると
交感神経が活性化され、
太い体毛や羽毛を逆立てて
皮膚近くに空気の膜を作り
体温の低下を防止していたそうです。

人間の体毛が薄くなったため、
毛を逆立てても空気の膜はできませんが、
その名残としてこのような反応だけ残ったそうです。

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