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保護命令下に申し立てられた面会交流調停が成功した理由 [家事]


今にして思うと無謀だったかもしれませんが、
保護命令が出された2か月後に面会交流調停を申し立て、
1年近くかかりましたけれど無事解決した事例があります。
調停成立前に直接面会交流も行われ、
祖父母も同席できています。

もともと妻側と調停を行う合意があったのですが、
調停委員や調査官からは、保護命令の期間中ということもあり
相手が調停に応じない場合はどうするんだと
ご心配をいただきました。
こちらには、もともと出してはいけない命令が出た
という認識がありましたし、
妻との会話もあったということから
まあまあということで押し切ってしまいました。

結局妻側も誠実な対応をされまして、
着地点に落ち着くことができました。

実際は、保護命令の要件である
生命身体に重大な危険があるかといえば
客観的にはないと言ってよいのですが、
色々な事情がわかると、
なるほど、客観的にはそのような事情はないけれど
妻にとってみれば、主観的には、
それくらいインパクトのあることがあったのかもしれない
ということは理解できました。
また、
そういう理解をした方が解決のためにはよさそうだ
ということで事を進めることに依頼者と決めました。

つまり、普通に葛藤の高まりの中で
子どもを連れて別居したという典型事例だと把握しました。

その中で無事直接面会ができた一番の理由は、
本人である夫が、「第1目標は家族再生」
ということを貫いたことでした。

どうしても、相手や弁護士や裁判所
あるいは法制度や運用を責めたくなるのですが、
ただでさえ不安と恐怖と息苦しさを持っている妻を
攻撃することや誰かを攻撃している自分をみせることは
家族再生と逆行します。
この感情を抑えることは大変苦労します。

怒りで夢中になって、
相手の落ち度を強調したり、
(やりくりが下手とか、掃除ができないとか、子どもに手を挙げるとか)
一方的な連れ去りは子どもに深刻な影響を与える
とか言うことを主張したくなるのです。
それらはおそらく正しい主張なのでしょう。
しかし、家族再生と逆行します。
相手を余計に怖がらせるだけで、
あるいは息苦しくさせるだけで
とにかく近づきたくないという気持ちにさせるだけです。

夫は妻の弱点をピンポイントで攻撃できるのです。
一番してはいけないことをしてしまうのです。

だから弁護士が少し冷めた視点で、
それを言ってはダメだというか
こういうデメリットが発生するということを言わなければなりません。
これは何度も何度も激しいやり取りがありました。
しかし、家族再生という第1目標がぶれなかったので、
依頼者を信頼してやりあうことができました。

彼は、もともとこのブログを読んで依頼されたので、
私が忘れているようなことも思い出してくれました。
また、どんなに感情的になっていても
私の話をメモをしながら聞いてもらいました。
こちらも必死で考えて、必死にアドバイスしていたようです。
帰りは、すぐ別れて解放させていただきました。
それくらい密度の濃い時間でした。
毎回へとへとになっていました。

第2の理由は、
法律や裁判所に解決してもらうのではなく
自分が相手を安心させる工夫をすることで
相手の解決しようとする気持ちを誘導する
という姿勢に立てたことです。

正しさよりも相手の気持ちを優先する
ということですね。

ところが、現実は
家庭の中でもそうですが、裁判所の中でも
どちらかが正しくて、どちらかが間違っている
という論理の枠組みを前提としてしまうために
非難合戦が始まってしまうのです。

要するに自分は悪くないということに
終始しているだけなのです。

これは、離婚を進める側の人たちの論理の枠組みです。
だから同じ土俵に立ってやり合ったのでは
ただ家庭が壊れていくだけに決まっています。
家庭の中に勝者も敗者もあってはならないのです。

ところが人間ですから、自分が攻撃されていると思えば
守りたくなる、つまり相手を攻撃したくなることは
当たり前なのです。
いかに早くここから脱却するかがポイントです。
つい攻撃してしまうのが人間だと気が付くことが必要です。

こちらはこちらで戻ってきてほしいという切実な気持ちがある
相手は相手で戻ることのできない心理的な負担がある
お互いが真実であり、
その原因が必ずしも二人のどちらかだけにあるわけではない
ということがリアルのはずです。

双方認めあわないと話が始まらない
双方が少しでも相手方の言うことが
嘘ではないかも知れないなと思わないと
譲歩は難しいようです。

時間はかかりましたが
お二人とも高次の域に上られたようでした。

結婚する直前のように
相手の気持ちを一生懸命考える
調停の時はそれをしなければいけないようです。

面会交流実現の理由の3

現在を未来につながる通過点ととらえる。

結論としてはそういうことになると思います。
本人もいろいろ知識を増やしてきましたから、
例えば調停条項はここまで書き込まないと
強制執行できないとか主張するのです。

しかし、家族関係は強制執行してしまうと
形は作られても中身がぶち壊れてしまう場合が少なくありません。

余り将来のことまで事細かく決めてしまうと
相手方が心理的に圧迫されてしまい、
面会を行ことが嫌になり、
徐々にフェイドアウトしてしまうことも多くあります。

相手を安心させる
そのチャンスをひとまず与えられたのだから、
少ないチャンスを生かしてどこまでも安心させて、
将来の家族再生への方向へつなげる
こういう方針です。

子どもたちはまだ入学前ですから、
将来のお泊りのことまで今決めるわけにはいかないのです。

子どもたちが小学校に入学して
安心の記憶を定着させていき、
さらなる共有時間を提案してもらおう
ということで、
調停条項に同意しました。

離婚さえも、
このまま拒否しているよりも
受け入れた方が
将来の関係をよくするのではないか
ということで同意しました。

仲良くするために分かれるということは
とても切ないことです。
ある意味自分を捨てても家族の安心につなげるということで
彼は自分を少しだけ取り戻したように感じました。


最後に一つだけ。
劇的に相手の対応が変わったポイントとなったと思われる
エピソードを教えてもらいました。

実は相手は調停期間中のある時、
一度だけ約束を実行しなかったことがありました。

これは事前に想定できたことでした。
おそらく遅かれ早かれそういうことは来る。
どうしても、こちら側は、
相手が自分に攻撃した行為ととらえるけれど、
こういう時こそチャンスなんだと
繰り返し打ち合わせをしていました。

小さな子どものことだから不意の病気などの事情はある。
そうでなくても子育てに夢中で忘れることだってある。
また、気分が乗らなくて、
どうしてもこちらに接触したくないときもある。

そういう時に、相手の約束違反に腹を立てないで、
そういうこともあるさと大きいところを見せる
そうすることで、相手を許す気持ちになることで、
相手は安心感を獲得する。
責めない批判しない。

通常は相手のミスがないので
なかなか安心感を持ってもらうエピソードはでてきません。
大きなポイントを稼ぐ場面がないわけです。
ところが、相手の失敗があれば許してあげるという
大きなポイントをゲットできる貴重な機会になるわけです。
代替日なんて言わないで
むしろ鷹揚に構えた方がよいと打ち合わせをしました。

案の定、相手から埋め合わせを逆提案されたし、
直接面会交流の打ち合わせが充実した
というサプライズが待っていました。

約束の日がすべてではないわけです。
その日をなしにすることで
さらに大きな明日が生まれる可能性があるということ。
そしてそうなったという報告を受けました。

離婚しても離れて暮らしても
子どもがいる以上
私は家族は家族だと思います。
先ずこちらがそういう意識をもって、
永く続いていくということを意識しながら
対応を考えるということを学びました。

いろいろありましたが、
調停委員、調査官の方々に恵まれまして、
無事調停が成立しました。

もっと一般的な考察も含めて報告を書きだしたのですが、
考察を深めると本一冊になることがわかりましたので、
ご報告はこれまでとさせていただきたいと思います。


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