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なぜ、普通の企業なのに、中間管理職のあなたはパワーハラスメントをしてしまうのか [労務管理・労働環境]

例によって、講演の草稿をここでつくるわけです。
誰かに読んでいただけると考えるだけで、
実力以上の力を発揮できるような気もするからです。

今回のお題は、決してブラック企業ではないはずなのに、
どうして中間管理職が部下にパワハラをするのか
どうやって防止するかにあります。

そもそもパワハラとは何かということですが、
後で理由は述べるとして、
とりあえず、
1 身体的暴力又は人格的攻撃を含む言動
2 部下を孤立させる言動(顔をつぶされる、立場を無くす)
3 その上司の言動に対して部下が解決不能に陥るもの

要約すると
攻撃、孤立、絶望を与える上司の言動です。
指導の要素が含まれていても、
上記3要素がある場合は、パワハラだと考えましょう。

パワハラの定義は目的によって異なりますが、
ここでは、部下特に新卒の健康を守るための目的とします。
加えて
上司が不意な損害賠償や懲戒を受けないために
ということも加えておきましょう。

もう少し具体的に新卒者に対するパワハラをみてみますと、
客観的に、あるいは新卒者の主観として、
仕事を教えないくせに、
できないことを叱責し、制裁が課されるということがあります。
具体的な言葉として
「社会人のくせにそんなことも分からないのか」
「1度きいたら覚えろ、俺は2度は言わない」
「なんでも人に聞こうとしないで自分で調べろ」
ということがよく言われているようです。

少なくとも新卒者は、これでは
どうすればよいかわからない。
どうやったらわかるようになるかもわからない。
「不可能を強いられている」と感じています。

こういうことが同僚の前でいわれてしまうと
強烈な孤立を感じます。

また、当然、これは自分が攻撃されていると思うわけです。
3要素そろった完全なパワハラ言動というべきだと思います。

このような言葉を出してしまう新卒者側の要素もあるようです。
中間管理職だけでなく、経営者も
今どきの若い者は、社会常識がない
10年前と比べても気転が効かなくなった
コミュニケーション能力がない
等と嘆く傾向にあるようです。

こういう傾向は実際あるかもしれませんが、
とりあえず、「若者は変わらない。変わったのは環境だ」
という仮定をたててみます。

ピラミッドに刻まれた世界最古の落書きを解読したら
「今どきの若い者は・・・」という内容だったということで、
若者とコミュニケーションをとることは
そもそも人類は苦手なようです。

また、採用試験を潜り抜けて採用されているのだから
それほどコミュニケーションに問題があるとは思えません。
さらには、若者同士はコミュニケーションをとっているようです。
実際の事例では、
部署が変わったら急にパワハラが始まったということもあるようです。

若者が変わったのではないとすれば
何がパワハラの引き金なのでしょうか。

一つは、上司に余裕がなくなったということがあるようです。
やるべきノルマが多く、期限が迫っていると、
結果を出すことだけを考えるようになります。
仕事ですから結果を出すのは常に求められているのですが、
常に、短期間に結果を出さなければならない。

本来即戦力ではない新卒採用なのに
長期的に育てるという観点を持つことができない。
そのため、自分が管轄するセクションにとって
頭数として計算できるほど成長していない場合、
ノルマを達成するためには、邪魔な存在
妨害者のように感じてしまうということがあるようです。

上司も焦っているので、
懇切丁寧な説明はくどくどしくてできない。
部下は言われた言葉はわかるけれど、
経験がないので、それに着手するまで自分が何が分からないかが分からない。
この段階で聞き返そうとすると
上司は別のことを必死にやっているので答える余裕がない。

本来こういう時は、経験者やせめて同年代と相談できれば良いのですが、
最近の職場は、同僚間の打ち合わせを禁じるようなところも出てきています。
また、上司の「あたり」が強く、
その者がターゲットになっているとおもうと
下手に助けると自分に叱責が飛んでくると思って
助けられないということが多く、
その結果、新卒者は命じられた仕事ができていない
最初の質問の前の段階で止まっているということになるようです。

あるいは、やるにはやったが、
使い物にならない代物を提出する。
言葉は埋められているが読んでも理解できない。
音声は録音されているが、良く聞こえない。

AパターンとBパターンのやり方があるのに、
Aパターンばかりをやってできないという。

これらは上司の指導が十分できていないことから
部下がセクションの妨害者となり
怒りが募ってパワハラとなるパターンです。

会社が一つのチームになれば良いのですが、
実際の人間関係は一つにチームになりにくいようです。

経営者と中間管理職のラインがあり、
そのライン上の人間は仲間関係が成立しているのですが、
そのラインからは一般従業員は外れてしまう。
そうすると、中間管理職は、
一般従業員に対して過酷な対応をしてしまう。
言われた方の立場にたって考えることができなくなるのです。

新卒社員が別ラインになってしまうのは、
中間管理職自身が身分が安定しておらず、
自分が管轄するセクションの結果次第で
有利になったり不利になったりする
そうなると自己防衛という意識が強くなり、
なんとか中間管理職自身が
経営者とのラインに乗るように強く求めてしまう。

また、部下を含めてセクションで仲間意識が強くても、
つまりセクションがラインとして成立していても
お荷物的な労働者がいると
セクション全体の足を引っ張るものということで、
その者だけがセクションの仲間から外されてしまう
その結果、その者だけが「いけにえ」になってしまう。

自分を守るため、セクションの仲間を守るため
という無意識の防衛意識が、
新卒者に対して過酷な対応をとらせてしまうわけです。

中間管理職は、
部下、特に新卒の部下について
・仲間だと思えなくなった(弱点をかばう気がない)、
・攻撃するし、感情的になる、
・不可能を強いている(新卒者の主観的に)
・新卒者が他の同僚から冷たい対応をとられることに
 喜びを感じてしまったら

自分は既にパワハラをしているかもしれないと思うべきでしょう。

そしてこの三要素がないかどうか
何が自分を焦らせているか
じっくり振り返る必要があると思います。

例えば、経営者から無理なノルマ、無理な業務指示があれば
無理だと洞察することも中間管理職の仕事です。
もちろん無理だからやらないのではなく、
やってもメリットが少ないということであれば
長期的な戦略を一部導入することです。

プロ野球で9月になって最下位に沈んで
3位に10ゲーム以上離されているのに
優勝しようと思っても仕方がないので、
新人にチャンスを与えてチームの若返りを図る
こういうことですね。

一つの方法としては、
新卒労働者に自分がつきっきりになり
懇切丁寧に仕事を教えていく。
基本はまねをさせるということ、
一つ一つのアクションの意味、狙い、目標を繰り返し刷り込む。

弱点、不十分点を徹底的に補うということです。
分からない時にはどんどん質問させる。
くだらない質問でも質問したことに肯定評価をしていく。

やる気を出させる方法は、
お金をかけないで手間をかける、心を砕く
という方法で可能ですが、
これは、また改めて。

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