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社長さん、偽装請負ですよ。その契約は違法で、後から賃金を支払わなければならなくなる可能性があります。 [労務管理・労働環境]



最近増えている事例として偽装請負があります。
本当は自分の会社で雇っている労働者、従業員なのに、
雇用契約書を取り交わさずに請負契約の体裁で
契約書を取り交わすのです。

あまり詳細に説明するとまねをする危険があるので、
架空の話で説明します。

例えば、ガソリンスタンドの従業員に対して、
「今日から請負契約にするから覚書に署名して」と言い、
従業員は署名しなければ仕事を失うという不安がありますから
覚書に署名をします。

すると、それからは賃金が出ません。

社長は、
「あとは、自分でお客さんを獲得して、
 お客さんの支払った金額から経費を除いた金額の
 30%を請負代金として支払う。
 但し、スタンド使用料として月10万円を支払うこと。
 自分のやる気と工夫で今以上の収入になるよ。」
等と言うパターンです。

不思議なことに、ガソリンスタンドの従業員には
売上ノルマが課されることが多く、
自分のお得意さんを確保しなければならないのです。
指名してくれるお客さんが多くなければ
ノルマは達成されません。

いつものノルマを達成してもう少し稼げば
今よりも収入が上がる
と思う人もいるかもしれませんが、
一般の従業員は、もともと不可能なノルマだと感じているので、
今より収入が上がるとは思わないのです。
思わないけれど、嫌だというとやめろと言われることが分かっているので、
従ってしまうのです。

これで経営者は、
経費を労働者に負担させた上に、
賃料として毎月定額の収入を確保することになります。

働いている人たちが多ければ
けっこうな収入になるでしょう。
労働者も自分の利益に直結するから
売り上げをあげようと頑張るでしょう。
楽してお金が入ってくると思う経営者もいるようです。
そう言って、このようなスタイルを勧める
経営コンサルタントがいるようです。

しかし、これは後からとてつもないしっぺ返しを食う恐れがあります。

先ず、労働者の収入が出ないため、
労働者は借金を抱えて仕事を辞めていきます。
つまり売り上げが上がっても経費と家賃を支払うと
お金がほとんど残らない場合が多いのです。
つまり事業が成り立たなくなり、
店をたたむことになることが多いです。

そこをうまくやったとしても
お役所から指導が入り、
取引先から信用を失い、仕事が成り立たなくなる事例です。

役所からいろいろ言われることにもなります。
労働基準監督署の指導がまずあるでしょう。
なんせ、契約が請負でも実態が労働者ですから
労働基準法の適用を受けます。
それにも関わらず賃金も支払っていない、残業代も払わない
年休も与えないということになりますので、
違法です。
これらの違反には罰金と懲役刑もあるので、
悪質な場合には刑事事件にもなってしまいます。

さらには、脱税を指摘される可能性もあるわけです。

労働者からの家賃や経費負担を
収入として申告しない場合は
収入をごまかしたということになるのです。
こんなのちょっと考えればわかることなのですが、
なかなか気が付きません。

コンサルタントも
これらの危険をはっきりとは言いません。
経営者も間違った経費削減ということに夢中になり、
「違法行為だからやめよう」という意識が
薄れていくようです。
莫大なコンサル料を支払っていますから
引くに引けないという事情もあるようです。

また元々の経営状態が悪く
起死回生のギャンブルに出ることを余儀なくされている
そういうすきを狙っている人たちがいるのです。

よわりめにたたりめ

これも経営の真実でしょう。

ところで、契約名でなく、実体で
労働者か請負かを判断するとしたら
その判断要素はどのようなものでしょうか。

労働契約と請負契約の一番の違いは
仕事を任された方が、自分の自由に仕事をしてよい
結果を出せばその過程に文句を言われない
というところにあります。

だから、どこでその労働をしてもよいし
納期までにいつやっても良い
道具は自分のものを使ってよい、
誰かに手伝ってもらっても、下請けに出しても原則良い
そもそも仕事を断っても良い
ということになります。

この反対で、
例えば特定のガソリンスタンドで仕事をしなければいけない
(場所的拘束性)
朝8時から夜8時まではガソリンスタンドにいなければならない
(時間的拘束性)
自分の代わりに別の人をあてがうことはできない
(非代替性)
与えられた仕事は自分の都合で断れない
(依頼の諾否の自由がない)
会社の道具で仕事をしなければならない
(生産手段を持たない)
等の事情があれば
労働基準法の労働者であり、
国は労働基準法その他で、
当事者の契約などの合意があっても
強制的にそれを無効だとして排除して
労働者を保護することにしているのです。

最近は、この生産手段でさえ、
賃料、リース代金の名目で
労働者に負担させていますので、
これらについては厳しい法律の制定されていくことになると思います。

このような闇営業が横行しているということは、
隙だらけの経営者が増えているということです。
隙が生まれた事情を良く分析して
国としての対策を立てる必要があるのではないかと
感じています。


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