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他人を応援しようとして犯罪に巻き込まれる人 そのメカニズム 何に注意すればよいか [刑事事件]



支援者の「支援」の在り方については、これまでもお話ししています。
基本的原理は同じなのですが、一般の方々や専門家と呼ばれる人の中にも
他人の紛争に入り込んで、
自分も犯罪に手を染めてしまう方々がいらっしゃるので、
注意喚起しようと思いました。

一人でも犯罪者となる人が少なくなるための記事です。

例えば同族会社でもめていて
父親が社長で、息子が取締役だったのですが、
息子は代表社印なども使って契約をしていたようです。
ところが、息子が不始末をしでかしてしまったので、
会社を辞めさせられて、別会社に行くことになってしまいました。

ンで取引先の奥さんと息子は趣味のサークルが一緒で
あれやこれや父親が自分を一人前と認めてくれない
等と愚痴をしょっちゅう言っていて、
奥さんは、仲間の一人として
「それはひどいですね。」等と普通に相づちをうっていたようです。

そして、決定的に解雇されたということを愚痴ったところ、
奥さんは相変わらず、「そこまですることないと思います。」
とか言い出したものだから、
息子は
奥さんのところの取引の契約書をつくっていないので、
本当は商品を50個の代金を一括して支払うのだけれど、
今回1個分ずつの50回払いにしたことにする
というのです。
まだ自分は会社には出入りできるからハンコも自由に使えるし、
最初の契約書が無いのでばれることはありません。
また、振込先も自分が通帳と印鑑を持っている
××信用金庫に振り込んでください。
と告げたところ、

奥さんは、「ぜひ協力させてください」
とその話を受けてしまったようです。
しかし、会社からは既に、50個を一括で支払う様式の
請求書が届けられており、
振込先も○○銀行にと指定されていました。

息子は、既に契約書を作成する権限がありませんので、
有印私文書偽造罪が成立します。

問題は奥さんです。
その偽造した契約書を会社に提示して
支払拒んだら
偽造有印私文書行使罪と詐欺罪が成立する可能性が高いのです。
10年以下の懲役が法定刑になる重い罪です。

また、これはどうなるかはっきりはわかりませんが
すべての事情を知って、請求書と異なる口座に振り込んだら
有効な弁済とはならないで二重に払う危険も出てきます。

本当はこの奥さん、人情味があって、
困った人を放っておけないという
人間的に素晴らしい人なんだと思います。

それでも、やっていることは犯罪なので
刑事処分を受けることになる恐れが高いのです。

そして、息子の不始末というのは
息子がひいきにしている水商売の女の人にせがまれたものを買うために
会社の会計をごまかしたことだったようなのです。
父親は、従業員に示しがつかないために息子を解雇し、
修行のために別会社に修行にやるということだったらしいのです。
息子は、水商売の女の人に
自分が社長だから金を自由に動かせるというようなことを言っていて
女の人の要求に断れなくなっていたようでした。

奥さんは、それにもかかわらず
息子の不良行為に加担してしまったのです。
罪がない父親を追い詰めてしまったということになります。

一番大事な基本は、
他人が紛争を起こしているときに
一方に加担することは
他方を攻撃することになる
ということを忘れないことです。

だから相づちをうったり、慰めているだけなら
まだ罪が軽いのですが、
紛争に参加する形で
相手に不利益を与えることになることには
注意が必要だということになります。

「この人が悪いことをするはずがない
悪いのは父親だ。」
ということに疑いを持つことができないのも人間です。

先ず、息子の方はサークルで長い付き合いですから
どうしても見方をしたくなるものです(単純接触効果)
そして、息子から父親の悪口を聞かされていますので
初めから父親は頑固で融通が利かなく
若い芽をつぶす老害だと思い込んでしまっているのです(プライマリー効果)
息子が会社の切り盛りをしている次世代のエースだと思えば
息子が言うことはさらに信用してしまうでしょう(プライマリー効果)

この結果、間違いを信じてしまったわけです。

そして人間は、自分の仲間だと感じた相手を
自分を犠牲にしても助けたいと思う時があります。
典型的には親の子に対する愛情ですが、
義憤に駆られて手をさしのべるということは
通常は美談です。

しかし、だまされて、やりすぎをしていると
犯罪になってしまうわけです。
罪もない他人に損害を与えていることと
社会秩序を乱す方法だったからです。
仲間を助けたいという人間の本能が
冷静な判断を奪ってしまい、
被害者である仲間を無条件に信じて
犯罪さえもやってしまう流れができてしまうのです。

この父親も関係者一同も
当初の約束通りお支払いいただければ
事を荒立てようと思っていません。
悪いのは息子ですから。
ただ父親だけが困るならまだよかったのです。
会社が不当な扱いをされてしまうと
公私のけじめをつけなければならなくなります。

奥さんはどうすればよかったのでしょう。
答えはそれほど難しくありません。
父親に事情を聴きに行けばよかったのです。
これはそれほど難しいことではありません。

義憤に駆られれば通常行うべきことはそれなのです。

他人の紛争に、一方の味方としてかかわることは
他方からすればただの攻撃者になってしまう
これは、弁護士だけでなく誰かを支援しようとする人は
頭に入れておく必要があるのだろうなと考える次第です。

それにしてもこの息子
多くの人を巻き込んでいます。
専門家と呼ばれる人たちも違法な行為をさせられています。
専門家としてきっちりと謝罪をするなりすればよいのですが、
みんなごまかそうとしているのです。
定められた定型的なサンクションが課せられることになることでしょう。

この息子、こうやって人を動かす才にたけているわけですから
もったいないなあと思っています。

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