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なぜ虚偽DV、おおげさDVの主張に逃げ込むのか、それは妻の苦しみを弁護士が理解していないことと、心情を表現することが成功していないから 離婚後の幸せを明確に意識した離婚手続きの勧め [家事]



25年以上前、弁護士になりたての頃
「弁護士は事件を解決するのではなく紛争を解決するのだ」
ということを先輩弁護士から叩き込まれました。

先ず人と人との間に紛争があり、
それを法律の枠でとらえ直して事件とする。
判決などで事件は解決するけれど
逆に紛争が長期化したり深刻化したりするならば
それは弁護士として二流だという意味です。

離婚事件などを担当する場合も、
当事者の言い分をだらだら清書するのではなく、
しっかりと解決の道筋を考えて
紛争を解決する視点で仕事をしなくてはならない
と未熟な私はご指導をいただいておりました。

だから初めから、「勝訴判決をもらえば良いのだ」
という発想は持てませんでした。
自分の依頼者はもちろんのこと相手方も、
離婚事件後の再出発によって
ご自分の大切な人生を歩んでいただく
という壮大な目標が常に頭の中にはあったのは
こういう先輩方の厳しいご指導があったからだと今気が付きました。

この視点は、実務的に大変役に立ちました。

私の離婚事件の依頼者は25年を振り返るとどちらかという女性が多く、
中にはDVをにおわせるような離婚理由を述べられる事件もありました。
明白な暴力や暴言はなかったのですが、
あたかも暴力や暴力が日常にあったように
女性側は嫌悪感や恐怖感を持っていました。

ここで、暴力だ、暴言だと離婚理由を述べたら
おそらくそれは虚偽だ、ねつ造だと夫は主張するでしょうから
収拾がつかなくなったことと思います。

私は、依頼者の女性と丹念にご自分の心の経過を振り返りました。
そして、どのような夫の言葉やどのような態度が
どのように妻が不自由な思いをし、ストレスが生まれ
かつどのような怖さを与えていたか、
そしてそれが継続することによって
どのように苦しくなっていったか
どのように無力感が生まれ希望が無くなっていったか
ということを述べていきました。

この女性の気持ちを理解しようとしなければ
「どうせDVなんでしょ」と
安易な聴き取りで終わってしまい
相手方が反発するだけで、立証もできないような主張になるわけです。
無駄な精神的葛藤が大きくなってしまい、
裁判でも和解できず、判決が出てもなかなか終わらないわけです。
控訴審で引き継いだ離婚訴訟では
かなり危険な状態になっていることもあります。
これでは離婚判決が出ても、緊張が継続してしまいます。

大切なことは、本人も忘れていたような事実を正確に抽出し、
心理過程を丁寧に、できるだけリアルに再現することだと思います。

その上で大事なことは、
だからといって夫を非難するのではないということです。
夫にこちらを苦しめる目的や動機はなかった
考え方や何が当たり前かということがそれぞれ違い
おそらくそれは夫にとって当たり前の行動だったのだろう
妻はことさら夫を悪いとか、劣っているという評価をしているわけではない
夫のそのような行動も理解できる
しかし、だからといってこれ以上一緒にいることはつらすぎる
ということを丁寧に説明するという方法をとるようにしました。

相手を理解するともに、こちらも理解してもらう。
おそらく日常生活の中で少しずつこの作業を
夫婦はしていくべきものなのでしょう。
それができなかったために離婚になるのかもしれません。

離婚のときこそこの作業を丹念に行うことによって
心の摩擦がだいぶ軽減されるようです。

すべてがうまくゆくとは限りませんが
わずかな回数の調停期日で離婚が成立することが多くなります。

離婚事件の常として
離婚したい人間と、離婚には納得できない人間がいます。
離婚が成立しても、すべて納得できるものではありません。
それでも、このように離婚手続きがスムーズにいく場合は、
双方礼節を保って挨拶をして裁判所を後にすることができます。
この挨拶は当事者同士ではできないことが多いので、
代理人が変わって挨拶を受けるということも多いです。
無駄な争い、人格非難をしないで済むので
挨拶を受ける私も、相手に尊敬の念を込めて頭を下げることができました。

なかなかこのような調停が行われなくなってきています。
ベテラン弁護士も若手も、DVという言葉のオンパレードです。
DVという言葉を使うなとは言いませんが
具体的な中身が無い。
どこに妻のストレスのポイントがあるのか
何が苦しめていたのか
全く分かりません。
相互理解ではなく、
判決に逃げ切るための活動のように思えてなりません。

依頼者の苦悩を理解していないから
依頼者が打ち明ける事実以上のことがあったのだろうという
先入観が生まれるのでしょう。
ちょっとした不快なありふれた行動も
DVという言葉を当てはめていくのですから
それは大げさになっていくわけです。

しかし、そんなものが無くても、大げさにしなくても
心理的に圧迫され、緊張状態の継続を強いられ
日常生活のありとあらゆることがどうしたらよいかわからなくなる
という心理状態になってしまうことがあるのです。

ハラスメントなんて言う言葉を使わなくても
きちんと理解さえすれば、その心理経過は
きちんと説明することができるはずです。
それができていないのですから、依頼者は
なんか違うなと思いながら
離婚をするための裁判ゲームだと自分に言い聞かせ
あるいは弁護士が書面に書いている方が真実だと
無理やり思い込まされているのかもしれません。

それでも女性は、自分の目的である離婚に向けて
弁護士が頑張ってくれるので
それなりに心強いかもしれません。
しかし、そうやってコナンのつり橋のように逃げ切って
ありもしないDVがあったと自分で思い込んでも
なかなか離婚後の人生を安心して歩んでいけないのではないでしょうか。

誰かを攻撃していないと安心できないとか
他人が困ったり、苦しんだりしているときだけ笑えるとすれば
とても不幸なことだと思います。

相手が悪かった
という振り返りではなく
相手のこういうところに自分は苦しんだ
自分としてもこうすればまだよかったかもしれない
という人間関係の相互関係をしっかり考えることによって
離婚後の未来に向けて再出発がしやすくなるはずだ
と私は確信しています。

私も女性側で離婚事件を多く扱っています。
お引き受けする際には、
離婚に至る経緯や理由だけでなく
離婚後の生活をしっかり打ち合わせをします。
経済的な基盤の確立や子どもの養育のビジョン、
もう一人の親と子どもの安定した関係を
しっかりと打ち合わせてから事件に移ります。
離婚後の生活に必要な手続きや有益な手続きを
ご自分でしっかり調査していただきます。
きちんと生活の目処が立ってから離婚手続きに入ります。

離婚はしたけれど生活ができないという相談をよく受けるからです。
離婚した後のことを用意していない例が多すぎるのです。

離婚をすればそれでよいという事件のご依頼は受けません。
離婚をするという目の前の目標ではなく、
離婚した後幸せになるために依頼を受ける
そうである以上
離婚後の生活基盤を確保してからことを始めるということが
当然のことだと思っています。

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