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子の父親は誰かを決める民法の規定が改正されつつあるようです。 [家事]


現在親子関係の民法改正が流行っているのですが、
父と子の関係を定めた規定の改正も進められています。
現状、夫婦の間の子は夫の子だとの定め、
夫の子だということを争うのは夫に限ってみとめられるが1年以内にしなければならないという定め、
離婚後300日以内の子は婚姻時の夫の子だと推定される定め
があります、
これらの改正がタイムテーブルに乗っています。

改正の理由は、無戸籍児を減らすということだそうです。
離婚していないで産んだ子、
あるいは、離婚から300日を経過しないで生まれた子を
夫の子どもにしたくないから出生届を出さない
このために戸籍のない日本人が生まれてしまうようです。
ここまでは法務省も確認しているようです。

しかし、どうして夫の子どもとして届けたくないかについては
私の調べた限り、統計調査はないように思われます。
法改正を推進する人たちは、
夫のDVから逃れた妻が、
別のパートナーとの間に子どもを作ったから、
夫の子どもとして届けたくないのだ。
あるいは居場所を知られたくないからだ
等と説明しています。

確かにそのようなルポもあります。
恐らくそういうケースもあるのだと思います。

しかし、今私が担当している事件もそうですが、
だいたいDVを理由に連れ去りする事案は、
配偶者暴力のない事案が多いです。
裁判で決着がついた事案の多くは、
客観的には配偶者暴力が認められない事案です。

つまり、DVは、言い訳にされている。
単純な不貞も、突如DV被害者だという主張が始まるわけです。

といっても、
私はこの改正に反対しているわけではなく
特に、父親の子ではないと争う手段は
増やすべきだと考えています。

前に担当した事件では
外国人同士の争いだったので、
その外国の法律で決めればよかったのでそれほど悩みませんでしたが、
事案は、
確かに離婚して
10年後に再婚し、再婚後に子どもが生まれたのですが、
アクシデントがあり離婚したことが証明できなかった事案でした。

私の型破りな方法論と
国(検察官)と裁判官の親身なご協力によって
無事に解決したのですが。
母親あるいは子どもにも父親を争う手段を残しておく必要があるなと
強く感じました。

さて、冒頭上げた3つの定めがどうしてあるのか
ということは、なかなか理解されないところです。
民法ができた時代は、実は、
父と子の血のつながりというものを
現代ほど厳密に考えていなかった
と考えるとようやく理解できると思われます。

「結婚した以上、結婚相手が産んだ子は夫の子にしなさいよ。
 多少疑わしいとしても、つまんないことを争っていないで
 いち早く子どもを夫の子と確定して
 夫によって子どもが養われるようにして
 夫が死んだときは子どもに相続させることにしなさい。
 結婚とはそういうものだ。」
みたいな思想があったわけです。

日本の皇統だって、
結局は三種の神器を持っている者が血筋だと
生理学的にあまり関係の無いところで決められているのも
このようなおおらかさの表れだと思います。

疑っても決めようがないのですから
このようなおおらかさは自然の流れだった
と思います。

ところが現代では
遺伝子研究が進んでしまい、
親子関係を争うことが可能となりました。

そのような背景から
子どもの父親が誰かについて
神経をとがらせてしまうような
風潮がさらに強くなってしまったのかもしれません。

さて、民法改正が成立した後に
無戸籍者が減るならば
それは改正したかいがあるというわけですが
少し、心配も残るように思っています。


補論
実は一夫一婦制の現代の夫婦制度は
日本においては比較的新しく、
1000年もたっていないようです。

一昔前は女性がお嫁さんに入るというのが
多数だったように思われますが
これは嫁入り婚と呼ばれ、鎌倉時代に始まったようです。
その前は婿入り婚が主流で
さらにその前は妻問い婚が主流だったようです。
平安時代の貴族などの記録は文学作品からうかがえます。
(女性にちょっかいかけているうちに
 女性の実家につかまってしまったのだと思うと
 おかしいです。)
(さらに時代が遡って、形式ばってことが行われ、
 女性が男性宅に入って行ってその家の主人公になる
 というのがどうやら実態ではないかと北条政子なんて見ていると思うわけです。)

妻問い婚は、
あまり夜這いと変わらないような婚姻形態というか
出産形態ですね。

そうすると、元々は
子どもの父親なんて疑い出せばきりがなかったのでしょう。

もっともこれらは日本の人口のごくわずかの割合の
支配層だけの分析だと思います。

大部分の日本人は
かなり最近まで(地方によっては戦後直後ぐらいまで)
父親が誰かということを
厳密には考えられない習俗の中で暮らしていたのではないでしょうか。

ちなみに現代は
嫁入り婚という入る家庭がない
孤立婚であると私は特徴づけられると考えています。


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