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教育虐待の末に母親殺害 私はこういう子どもを救いたいので家族の問題に取り組んでいる。 [家事]



教育虐待の末に自分の母親を殺害した女性が
懲役10年の判決を受けました。
この刑の妥当性について私は述べる立場ではありません。

ただ、母親を殺害するところまでは行かなくても
その入り口にあるような事例を多く見てきました。
このことについてお話しさせていただきます。

通常弁護士は、離婚事件を担当しても、
離婚が成立したら関係も終わりであるため
このような事情は見えてきません。
しかし、離婚した10年後、15年後のケースでは
子どもが正常な状態を保てないくらいに
母親の干渉が見られることは少なくありません。


離婚に限らず、
離婚こそしていないが長期間別居というケースも同様です。

母親は、勉強だけではなく、芸術、芸能、スポーツと
種類は様々だけど
子どもに無謀な期待を押し付けてきます。

本件では医者になれということでした。
私が見てきた他の事例では
地域で一番の進学校に進学するとか
芸大に入学するとか
著明な劇団に入団するべくレッスンに明け暮れさせるとか
スポーツ少年団に休むことなく打ち込ませるとか
特別の才能が必要なことをやらせようとしていました。

子どもはというと、母親の期待に応えようと無理をするのです。
なぜならば
そういう子どもの多くは、自分の考えで行動をすることをやめ
母親の願望を忖度して、自分の行動を選択しているようです。
だから、他の子どものように、
眠いとか、疲れたとか、飽きたとか
自分の感覚で行動をする、しないという発想が感じられません。

だから、自分の限界を超えて頑張ることができるようです。
自分が眠くても、母親が悲しむから、頑張らなくてはならない
というような感じで頑張ります。

そして頑張れば
幼稚園や小学校の中学年くらいまでは
そこそこの成績がおさめられるのです。
そのころの子どもたちは、そこまで頑張らないため
無理やり頑張った分成績に反映してくるわけです。

頑張って何とかなるのはそのころまでです。

小学校高学年から中学に入るころには、
向き不向き、あるいは才能ということがとてつもなく大きな壁になってきます。

その分野の才能があるとか向いているという子どもたちが
自分のしている努力の何分の一の努力で自分より上の成績を上げてきてしまう。
練習時間が同じでも
その分野の申し子は練習自体が楽しいわけです。
母親に言われてやっている子は悲壮感はありますが楽しさはありません。
努力が効果をあげられないのはそういう理由もありそうです。

無謀な進学校への合格を命じられる子どもたちは
自分がどんなに努力をしても
合格に必要な成績順位を上げることができないことに気がつきだします。

それでも良いのだ、無理しなくてもいいのだ
と言ってくれる教師の言葉に耳を傾けている時間はありません
とにかく自分は進むしか選択肢がないのです。
辞める、あきらめるという選択肢はありません。
選択をするのは母親だからです。

やらなければいけないのに進めない。
常時イライラしている状態であり、
同級生たちと調和して生活することも難しくなるのは当然です。

私が中学校や小学校の校長先生方と話す機会があったとき
この話題に触れてみました。
そうしたら皆さん、そういう児童生徒が学校に常時いる状態で
その場にいた校長先生は、
そういう生徒さんの名前をきちんと把握されていたことに
感心した記憶があります。

それだけ学校現場ではポピュラーな出来事のようです。

もちろん、こういうことが
すべての離婚家庭、別居家庭で起きているわけではありません。
しかし、離婚家庭、長期別居家庭の中で
一定割合に確実にこのような教育虐待が起きていると思います。

母親はムキになって子どもの将来を
無謀と思われる職業に就かせたいようにしか思えません。
まるで、離婚した夫、長期別居している夫を
見返してやることだけに全人生をかけているように見えてしまいます。
子どもは見帰すための道具にされているわけです。

このようなケースでは離婚したり別居したりしている夫が
高学歴、社会的地位が高いケースがほとんどです。

その後の子どもの行く先は悲惨で痛ましいものになるケースがあります。

退却という選択肢がなく
例えば劇団四季に入ること、医学部に進学することが、
やり遂げなければいけないことになっているので、
「やらなければならないことができない」と
子どもは、自分がダメな人間であると思いこまされていきます。

保健室登校ができるならば幸いです。
今の自分でいいんだというメッセージを受け続け、
母親に設定された目標は無理だと少しずつ理解できてくる可能性がある。
そうして初めて、自分に無理を押し付ける母親を
ようやく批判的にみることができるようになるというのです。

逆に言うと
それまでは完全に母親と自分は一体化していて
ある意味、自分と母親との区別ができない状態だったのでしょう。

これでは教室の中で浮いてくるのは当たり前です。
コミュニケーションができませんから。
自分の感覚が行動基準とならないのだから
普通の同級生と話が合わない。
ここにいるのに、みんなが当たり前のこととして思うことが
通じないのです。

そうして思春期になったころ
異性の友達ができないことに気が付いてしまいます。

こういう母親との一体化は女の子であることが多いです。
最初はやせるためにダイエットを行うのですが
空腹という自分の感覚でものを食べるということができないため
極端なダイエットになってしまいます。
すると生物的な反応をして今いますから
反動も大きくなるので、過食も起きてしまいます。

過食で食べた物を無理やり吐いているとき
いつも母親のことを思い出していたという女性もいました。
ただ、どうして母親の顔が浮かぶのか
自分ではわからなかったそうです。

過食をした時の自己否定感はすさまじいです。
同級生の中にいることがいたたまれなくなり
引きこもりが起きるのは必然でしょう。

リストカットも始まることが多いです。

思春期向けと評判の精神科に入院しても
なんとも治療のしようがなく
(本当に何もしないところがある)
入院と退院を繰り返してしまうようになります。

社会適応ということが
一切不可能な状態になる子どもたちも多くいます。
40歳になっても家の外を自由に歩けない。
精神科の入退院を繰り返すという相談を受けたこともあります。

症状が悪化する事例は
やはり父親と交流の一切ないケースが多いです。

精神科の入退院を繰り返し、
手の施しようがないと医師が何もしなかった事例は
母親の父親に対する援助要請があって
面会交流にこぎつけて
仕事ができるまでに回復が見られました。

ただ、この援助要請は素直な援助要請ではなく、
離婚調停申し立てという形で行われました。
離婚調停とはいっても、お子さんのことばかりが書かれてあり
だいぶ深刻な状態であることが伝わり、
「もしや」と気が付き
離婚なんて言っている場合ではないのではないかということで
面会交流の話し合いに切り替えた
という事案でした。

父と子の間に何も問題がなかった事案ですから
父親の愛情を浴びて立ち直ることができたのだと思います。
そういえばあれから何年もたちますが
再度の離婚調停や訴訟はありません。

ただ、どうやら母親は、父親に援助要請ができない
助けてというのがとても怖いようです。
そういうとDVだとかなんと単純化しようという人が出てくるのですが
もっと人間らしいおそれのようなものです。
代理人が本当は何を求めているのかきちんと把握し
相手方に伝えるという作業をするべきなのです。

もしこの時にDVだ虐待だという主張をしていたら
私も真意に気が付くことができず
子どもは取り返しのつかないことになっていたかもしれません。

だめなんです、母親の表面的な感情を真に受けて
子どものことを考えない家事実務をしていると
子どもの一生が台無しになる危険があるということを
もう少し分からないと。

本件の娘さんは
何度か家出を試みたそうですが、
探偵や警察に捕まって母親の元に戻されたと言います。

探偵は言われたことをやるしかないでしょうし
実際このようなむごいことが行われているということはわからないでしょうから
ある程度仕方がないのかもしれませんが
弁護士がこういうことをやっては
子どもの最後の助けは誰もいないことになってしまいます。

警察もしかりです。
きちんと子どもと話をしていれば
児童相談所につなぐということもあったはずです。

もっとも児童相談所が母親と話をして
子どもの生きる権利を考えてくれればよい結果がでる
ということですが。

今その場限りの母親の感情を優先するのではなく
子どもの未来のためにものを具体的に考えるということが
今の家事実務において決定的に欠落していることだと
私は感じてなりません。

それでも多くのお母さん方は頑張っていらっしゃいます。
でも、ご自分が気が付かないうちに
子どもにも無理な頑張りを要求してしまうということがありうるのです。
そうして子どもが小さいときは
自分の言うとおりに子どもが習い事をして
母親が喜ぶようなことを言えば
考えは一つだと勘違いして
さらに無理を強いることになってしまうことがあります。

どうかお子さんの将来に一人で責任をとろうとしないでください。
父親に面会させるだけで
気が付かない子どもへの無理強いが
解消されたり緩和されたりするはずです。

ご自分で言いだせば
案外うまくいくものです。
なまじ弁護士なんて依頼しない方が良いかもしれませんよ。

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