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【宣伝広告】明日刊行 弁護士を依頼する人、適切な相談を受けたい人に本当は読んでいただきたい一冊 「イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術」(遠見書房) [進化心理学、生理学、対人関係学]

私も関わった本が明日発売されます。既にAmazonをはじめとして申し込みを受け付けているようです。(遠見書房 1800円+税)
https://www.amazon.co.jp/%E6%B3%95%E5%BE%8B%E5%AE%B6%E5%BF%85%E6%90%BA%EF%BC%81%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A9%E5%A4%9A%E3%82%81%E3%81%AE%E4%BE%9D%E9%A0%BC%E8%80%85%E3%83%BB%E7%9B%B8%E8%AB%87%E8%80%85%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E8%A1%93/dp/4866161264
(ブックオフや、セブンネットなどの通販でも買えるのですね。)

表向きは、弁護士が、法律相談や依頼を受けた人の感情的な行動にどう対処するかなどというマニュアル本のようになっていて、弁護士救済のための本のように見えます。しかし、読んでいただければわかると思いますが、実際は、表題通りコミュニケーションの問題を扱った本です。
心理監修は、あらゆる心理学分野をマスターされた東北大学教授の若島孔文先生です。そのため、素人である我々も、安心して思いっきり執筆することができました。
この本の人間観をまず説明しましょう。
元々の性格に関わらず、紛争の当事者になれば、程度の違いはあるけれど誰でも心理的影響を受けてしまう。影響を受けた心理状態では、感情が勝ってしまって、十分な意思や情報の伝達ができなくなってしまう。これによって、本来味方である弁護士等に対しても、攻撃的な態度をしてしまうとか、裁判等の目的に反する行動を自らしてしまうことがある。この行動原理を理解できない弁護士の場合は、依頼者・相談者に対して恐怖や嫌悪だけを感じてしまい、十分なパフォーマンスを発揮できなくなる可能性がある。というか、見ていると実際このような事例を少なからず目にしています。

要するに紛争に巻き込まれた人は、解決の場面においても損をしているわけです。

例えば、妻からDVを原因として離婚調停を申し立てられた夫が、法律相談に行くと、離婚理由が身に覚えのないため理不尽な出来事に対して怒りに震えていて、弁護士と話をしていても、自分を疑っていて、妻の言い分を信じているように「みえて」しまいます。自分の言い分を通そうとして、言葉を選べばよいのに、さらに声を大きくしてしまったりするわけです。これは無意識に行われているのだからなかなか制御することができません。
言われている弁護士の方も生身の人間ですし、女性であったり経験が浅かったりすれば、怖いですし、嫌な気持ちになるのも同じ人間だから仕方がありません。よくあるのは、「このように感情的になる人なのだから、妻の主張のDVも本当にあったのかもしれないな。」と思うようになってしまう危険があるということです。

このような危険は枚挙にいとまがありません。せっかく判決で勝訴、敗訴どちらかわらないというところまで弁護士がもっていっても、本人尋問で感情を抑えることをせず、相手方に対する敵対感情をあらわにして、裁判官から「こういう行動をしていたからこうなったんだな」と、不利な証拠が無かったにもかかわらず印象を悪くして、さらに休廷中に自分の弁護士と大喧嘩をして、不利な心象を固めてしまったというケースもつい最近見ています。相手方のストーリーに説得力を与えてしまうということなのです。

細かいことでは、自分の弁護士が信じられなくなるという被害者の心理から、やらなければ良いこと、言わなければ良いことを弁護士に言わないで勝手にやってしまって、自分を不利な方向に追い込んでいくということは自分が担当する例でもありました。

本来、方針をしっかり打ち合わせをすれば、具体的な活動は専門家にゆだねる方がうまくいきます。しかし、葛藤が強くなるとそれができなくなります。しかも自分の今の心の状態が葛藤が強すぎる状態だということにはなかなか気が付きません。
葛藤が強すぎてしまうと、ご自分を追い込み、自分の弁護士を追い込み、そして自分の裁判を不利にもっていってしまうというのです。そして、追い込まれる弁護士というのは、私のように図々しい弁護士ではなく、真面目で責任感が強すぎるから追い込まれるのです。味方にすれば心強い弁護士を自分から手放しているわけです。これ以上の損はないと思います。

そこでこの本の出番なのです。

紛争の当事者になったら起こる人間として当たり前の心理反応について事例ごとに説明がなされており、その時弁護士はどうしたらよいのかマニュアル的に書いてあります。この本は、心理学の知見を踏まえて、ご本人の過剰な心理反応をコントロールして、コミュニケーションが可能とし、必要な情報提供が相互にできるようになるように誘導しています。
実際の本書の究極の目的は、紛争に巻き込まれて当たり前に心理的反応を起こしている当事者の方々の法的サービスを受ける権利をよりよく実現することにあります。まじめな弁護士の心理的負担も軽減できれば、まさにウインウインの関係が構築できるのではないでしょうか。

しかし、しかしですよ。
この本を切望するのは、いま言った通り、依頼者・相談者の心の状態に反応できる真面目な弁護士だけです。その中の何割が、この本を信じてお金を出すでしょうか。また、買った後読むでしょうか。弁護士も色々な経験を経てしまうと、「心が強く」なってしまって、あまり気にしなくなるとか、適当に当事者の言いなりに行動して結果に対しては責任を負わないという気持ちが心のどこかに芽生えてきているかもしれません。

要するにこの本はそれほど多くの弁護士には読まれないでしょうということです。

それならば、ご自分が今、対人関係などで不具合が生じ、紛争の当事者になって、弁護士の援助が必要だという方が読むほうが手っ取り早いというわけなのです。
この本の第1部には、弁護士が心が折れる事例を具体的に示しています。どういう行動があれば、弁護士はやる気をなくす危険があるかということを列挙しています。ご自分の心を見つめることは難しいですが、行動を思い出すことはそれほど難しくないでしょう。ご自分ではその気がないのに、結果として自分の弁護士を攻撃してしまい、心が離れていく危険な行為は、この本を読めば気が付くことができると思います。
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そして第2部には、どうしてそのような行動をしてしまうか、本来どう行動すれば人間紛争の解決に向かうのかということが、弁護士、心理士、精神科医師の立場から検討が加えられています。これを読んで弁護士から教えられるより、ご自分で読んで弁護士に教えた方が、よほど効率が良いと思います。

このような本はこれまであまりなかったと思います。特に、弁護士分野での研究や理解が少ないように感じていました。当事者の方々は理解されず、若手弁護士や女性弁護士は、葛藤が強くなると怖くなる人たちの相談を受け無くなり、依頼も断ってきたわけです。「どうすればよいか。」という発想はなく、細々と仲間内で愚痴を言い合って終わりということが多かったのではないでしょうか。同僚にはなかなか言えない悩みということで一人で抱えてメンタルを悪くしたという例も聞こえてきます。これでは、弁護士も当事者も救われません。なるべく、人と接しないで、葛藤の少ない企業の担当者とだけ打ち合わせをしたいと思うようになる傾向がありますが、それは必ずしも収入だけの問題ではないように感じています。しかし、紛争が起きると当事者の心は変化し、イライラがつのり、緊張やストレスが増加し、落ち着かなくなり、何とかしてほしいという気持ちが大きくなるということは、多かれ少なかれ誰でも起きることです。だったらそれはどういうことか、どう対応するべきなのかということを科学的に検討する必要があるはずです。
それをすることなく、真面目な弁護士のストレスの予防も、当事者の法的サービスをよりよく受ける権利も研究してこなかったというのなら、業界としての野蛮な対応、怠慢だと批判されてもやむを得ないと思います。
そのような研究もおそらくないわけではなく、私たちの不勉強である可能性も大いにあると思います。しかし、不幸なことに、そのような先行研究を知らないでこの本を出しました。まず一石を投じるという意味はあると思います。大いに批判されて、さらに改善されることがあれば望外の喜びということになるでしょう。

法律系の出版社ではなく、心理系の出版社である遠見書房様からの出版という理由は、このような人間の心のあたりまえの理解が前提として必要だったということを象徴的に物語っていると思われます。それにしても、心理学の本から一歩踏み出した本の出版を決断していただいた遠見書房様には感謝しきれません。また、若島先生をはじめとして、公認心理士であり、心理学の研究者の先生方、精神科医の先生の「善意」があって、初めて科学の視点を取り入れた内容とすることができました。つまり、それがあって初めて意味のある本にすることができたと思います。おそらく弁護士2名だけでは、書籍という形には永遠にならか無かったと思います。改めて感謝申し上げたいと思います。

この本で、1人でも多くの人たちの「肩の力が抜ける」ことに貢献できたら幸いです。

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