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一日がかりで、隣県の高校生に過労死予防啓発授業(厚労省の事業)を行ってきました。授業の要点3つ [労災事件]



先日、隣県の山間部の高等学校に過労死予防の授業をして参りました。
新幹線とタクシーを乗り継いでいかなくてはならないところです。朝10時半過ぎの新幹線に乗って、夜6時半ころ駅に帰ってくるという強行軍ですが、お話は1時間です。それでも、過労死弁護団の弁護士は、この啓発授業は喜んで取り組んでいる事業です。

この授業は、学校側に費用の負担はありません。厚生労働省の事業で、国から費用が出ます。高校生がメインですが、大学や短期大学、専門学校でも、私の場合は中学生バージョンがありますので、中学校でも受け付けています。毎年入札があるようですが、これまではずっと(株)プロセスユニークという会社が委託を受けて窓口になっています。学校の先生が窓口になること、学校の施設内で、つまり学校(校長先生)の許可があることは必要です。最近は、就職や進学を控えた生徒さんたちに、過労死予防と労働条件の話をすると言うリクエストが多いようです。サークルやPTAが主体となっても学校の先生が窓口になり、生徒さんも参加していれば、国が費用負担を行うようです。
私にお声をかけていただければ、プロセスユニークにおつなぎします。

令和3年バージョンのお話しするポイントは3点です。
1 過労死は、発症するまで本人も家族も気が付かない病気の一群であるということ。
だから、「ああ、自分が少し悪くなってきたら、少し仕事量を抑えようか」というコントロールが効かない現象だということです。だから予防を徹底する、つまり過重労働を行わないという方法でしか防ぐことができないということが第1です。

2 過労死と認定される一群の疾患は、睡眠不足と関係しているということ。
だから過重労働の典型が長時間労働になっていること。また長時間労働とは具体的にどういうことかということをタイムスケジュールというか時間割を作って、法定労働時間と時間外労働時間を色分けして、週25時間時間外労働をすると、1か月100時間の時間外労働なんて簡単にできる等と言うことをお話しします。睡眠をとることがどんなに大切なことかを少し理屈をもっておはなしします。
 だから、過労死予防は長時間労働をしないこと。プラスして孤立しないことについても言及します。

3 3点目は、予防方法がわかっているのに、なぜ長時間労働をするかというお話をします。なぜ投げ出すことができないのかということをお話しするわけです。そして、本当の過労死予防の特効薬は、職場に仲間を作ること、お互いを助け合い、気遣いあうこと。そのためには、社会に出る前から仲間を作る訓練をすること
というお話をしています。

中学生バージョンも基本は変わらないのですが
仲間を作るということに力点が置かれます。いじめの予防も意識しているわけです。「いじめはだめだ、命を大切にしよう」ではなく、仲間を意識的に作るというプラスの方向を提起しています。

総じて、過労死を無くすとか、いじめをなくすということは、それ自体を目標にしても対策が言葉尻をとらえたものや、目についたこと、あるいは結果を押し付けるだけのものになりがちになります。むしろ具体的にどうするか、そして何を目標として生きていくか。つまり、仲間や家族と一緒に幸せになっていこうということ、その大目標の実現に向かえば、過労死やいじめが無くなっていっているはずだという理念をもってやっているというところです。

今お話しした通り、過労死は突然人が亡くなります。どんなに労災認定が取れても、損害賠償が勝訴になっても、亡くなった人は戻りません。予防しか方法がないのです。過労死弁護団は、できるだけ早く過労死という現象をこの世から失くして、弁護団を解散させることが悲願とされています。一日かけて1時間のお話をするということでも、本当にやりがいのあることなのです。
また、今回もそうですが、高校生の皆さんは、本当に熱心に聴いてくださるし、ポイントのところでは顔をあげてこちらを見て聞いてくださります。皆さんにとって有意義かどうかは計り知れませんが、私にとっては本当にありがたい事業となっていることは間違いありません。

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