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出て行った妻に対して「話し合いを求めること」が逆効果になることについての注意喚起 [家事]



ふと気が付くと、大抵の同種事案では繰り返されていることでした。代理人の仕事をしていてなかなか意識に上らなかったのですが、何件か立て続けにありましたので注意喚起をします。


その準備をしていることも気が付かないうちに妻が子どもを連れて別居することがなかなか減少しません。いろいろな原因があるのですが、ここでは夫の行動が知らないうちに妻の行動を助長していたようなケースです。原発的原因が別のところ、主に妻の体調と妻の相談相手(実家、似非女性の権利の主張者である行政とNPO、警察、病院等)にあるのだけれど、夫が意識して自分の行動を修正することをしなかったため、いつしか妻は夫に敵対心や恐怖を感じてしまい、その感情が固定してしまった場合、つまり典型的な連れ去り(思い込みDV)のケースを念頭に置いています。

夫は、何が何だかわからないことが通常です。多くの場合、妻が自ら出て行ったという痕跡があるものの、それを認識できることはあまりありません。何か事件に巻き込まれたのではないかと探す人がほとんどです。警察に届け出る人も少なくありません。しかし、いくつかのやり取りを経て、妻が自分から逃げ出したのだということが伝わります。警察官から、「奥さんは無事だから心配するな。しかし居場所は教えられない。」と告げられる人も少なくありません。この時警察官から自分が犯罪者のような扱いを受けていると感じる人もいます。大体は奥さんは配偶者暴力相談を受けていて、「あなたの夫は危険なDV夫だ。一緒にいると危険で命を落とす場合もあるので逃げなくてはならない。」と言われています。その相談をした段階で、行政から奥さんは「被害者」、夫は「加害者」というカテゴリーでひとくくりにされているということは頭に入れておいてください。もちろんそのような危険など現実的には無いということが正しいのです。「なんだろうね、この日本の非科学的な家族破壊の行動は。」ととても歯がゆい気持ちになります。そんなに行政や警察官は理解のある夫なのでしょか。ただ、我が身をかえりみないだけだと思います。

さて、怒りが止まらなくなる前に本題に移行します。

夫はどうして妻が家を出て行ったのか理解できていません。これは当たり前だと思います。私が相談を受けたこういうケースはほとんどのケースが夫が自分では原因などがわからなくて当然のケースでした。特にご自分では身に覚えがないことはよくわかります。

妻の居場所が、妻の実家だとか様々な事情で分かる場合がありますし、昨今であるとラインやメールがつながっている場合もあります。つまり夫は妻に対して連絡が取れる場合です。(居場所が全く分からない場合も少なくありません。)こういう相手と連絡が取れる場合に、夫がついやってしまうことは、メールなどで、「話し合おう」という呼びかけをすることです。

わたしでも予備知識が無ければ、当然話し合いを求めると思うのです。何が何だかわからなければ、情報を得たいということも人情です。しかし、この本能的な行為こそが、別居した妻の感情をさらにこじらせていることが通常です。話し合いを求めることは逆効果になることがほとんどなのです。

これを解説します。なぜ話し合いを求めてはならないか。

1)話し合うことが嫌だ。
話し合いをしたくないから逃げ出した。それなのに話し合いを求められることは、嫌なことを強要されることになる。詳細はともかく総論としてはこういうことになります。

2)なぜ話し合いが嫌なのか。
  話し合いということは、双方が改善する必要があるという認識を持っていることを示してしまいますが、逃げ出す方は、一方的に夫が悪いと思い込んでいます。客観的にどうなのかについてはわかりませんが、主観的にはこういう状態です。だから話し合いを申し入れることは「夫はまだ反省していない。」と妻を失望させるようです。
 また、夫との話し合いは(これまでの学習から)、妻は自分が夫から言いくるめられて終わるという嫌な思い出を持っていることが多いようです。逃げ出すに至った経緯で夫の落ち度をうまく言えない妻は話し合いをして自分に勝ち目がないことをよく知っています。だから話し合いを求められることはまた自分がうまいように言いくるめようとしていると受け止めるようです。
 この結果、話し合いを求めれば求めるほど相手はこちらを嫌悪するようになっていくということが一般的です。
どうやら警察や配偶者暴力相談センターでも話し合いには応じるなというアドバイスをしているようです。

3)ではどうするのか、情報の収集
 メールやラインがブロックされない場合、何らかの返信が来ることが多いです。昔の誘拐犯からの警察の逆探知ではないですけれど、なるべく相手からの情報が来やすくなるように心がけるべきです。そうして、わずかな情報量ですが、おぼろげながらに出て行った理由が垣間見られる文章があります。しかし、その情報が出て行った理由だと夫が認識できることはあまりありません。専門家に相談した方が良いと思います。これも夫であるあなたに支持的に相談に乗るタイプでは役に立たないでしょう。「あなたは悪くない。」という専門がいたから妻は出て行ったわけですから、永遠に溝は埋まらないでしょう。本来はわずかでも情報を獲得し、その情報に基づいて、反省の弁を述べることが必要なのです。

4)どうやって情報を勝ち取るか
 これ、メールなどで直接情報を獲得できない場合は厳しいです。共通の知人、相手の親(たいていは一番の敵対者)から情報を獲得するか、代理人を依頼して双方の代理人が別居の理由を共通理解にする作業が行われることを待つしかできません。
 もし幸いにして直接メールなどで連絡が取れる場合どうするか。
先ず、相手を責めない。批判しない。「家族の不具合は夫の結果責任だ」くらい鷹揚に構えるとよいようです。なかなか難しいですが。そうして、事務連絡を要点だけこまめに連絡を入れることみたいです。例えば郵便物の連絡などです。安否確認も最小限にするべきです。効果的な文言を厳選しましょう。とにかく相手が焦ることのないように細心の注意を払いましょう。
ギャンブルになりますが、離婚原因にはならない程度で謝罪の言葉を送信することも検討するべきかもしれません。ただ、あまり大作にはしないほうが経験上は良いです。長すぎる文章は頭に入らないという精神状態のようです。

5)そして一方的に謝罪する
夫であるあなたが、何とか家族を再生させようとする場合は、話し合いをするのではなく、一方的にこちらの非を認めることが出発点です。本心をぶつけるということは絶対にせずに、結果を誘導するためにはどうするかという戦略をもってあたることが鉄則です。双方が感情に任せてやり取りをしたのでは何もうまくいかないでしょう。

また、謝罪に終始しても、読んでいる者が負担に感じることも効果がなく、逆効果になることもあるようです。難しいです。

妻の不満を簡潔に言い当てることが必要です。その場合、少ない情報でもそのことを基軸に謝罪を構成するべきだと思います。つまり客観的に正しい謝罪というものはありません。妻の気持ちが少しでも落ち着くことが正しい謝罪だということを心掛けましょう・

謝罪の内容は、御免なさいということではありません。
A) 自分のどういう行為によってどのように妻が心理的に圧迫を受けていたり、仲間として尊重されていないと感じていたかを言い当てる。
B) どうして自分がそのような行為をしたのか、あるいは思いとどまらなかったのかを説明する。
C) 今後どういうふうに修正していくか
こういうことを述べることが謝罪です。

とにかく長くならないことが一番のようです。
A)とC)については、できる限り具体的に述べる必要があります。
B)は言い訳なのですが、仲間として尊重しなかったからではないということを告げることは大切なことです。もちろん妻に原因があるなんてことは絶対にダメです。
C)については、明るく気分を上げてもらうことを意識すると良いのではないかと考えています。

メール、手紙、調停の陳述書など、それぞれの機会に応じた内容にするべきです。読んでいて苦しくなるような文章は絶対にNGです。誰かに読んでもらって感想を聞くという作業ができたらとても良いと思います。但し、あなたの母親など、あなたに支持的な意見しか言わない人では意味がありません。

いずれいつか以下のこともテーマにしなくてはならないと思うのですが、今回は頭出しだけしておきます。
どうしても許してもらえない、つまり相手が離婚に固執しているような態度をとっている場合は、本心は別としても離婚という相手の意思決定を尊重するという態度が最後の手段ということになります。通常は誰しも、離婚をしてしまったら再生はあり得ないと考えるのが当然です。しかし、離婚だけは応じないということを前面に掲げて頑張ってしまうと、相手は頑固に結論を押し付け来る、何も変わっていないと感じ、自分を否定し続けていると感じて事態を悪化させるだけの場合がほとんどです。
籍にこだわるのか、実質的な家族再生の可能性を追及するのか二者択一の局面があるのです。もちろんどちらを選ぶのもその人の生き方の問題です。但し、現代日本の家庭裁判所は、離婚理由がない離婚を、別居期間の継続と離婚意思だけで認めてしまうという不合理なところです。結局何もかも失う可能性も低いわけではないということには留意されるべきだと感じられる事案が少なくありません。

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