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弁護士と医学 交通事故紛争処理センター(頭部外傷と高次脳機能障害) [交通事故]

交通事故紛争処理センターでは、
嘱託の弁護士が、医療セミナーを受講します。
専門のお医者さんに、3時間以上にわたりお話ししていただきます。
必ずしも、現在扱っている事件には関係しなくても、
そのうち、必要となる知識です。
得難い機会で、勉強をさせてもらっているというのが実感です。

考えてみれば、私も6年目ですから、
このセミナーもずいぶん受講したことになります。

今回は頭部外傷の諸問題と
特に高次脳機能障害でした。
お医者さんの語り口が、妙に上手で、
色々な意味で、長時間にもかかわらず、
飽きないで受講できました。

これまで、断片的に、その事件ごとに集めた知識が、
一堂に会し、整理しなおされたので、
はじめて正確に理解できました。

特に興味深かったのは、
びまん性軸索損傷といって、
特に外傷が無くても、
脳内の神経がまばらに切断されてしまい、
致命的な症状になるということでした。

生存に必要な神経が絶たれてしまう
とのことでした。

自動車やバイクの安全装置が発達し、
頭蓋骨内の出血が減り、
その分、このような傷害が増えているようです。

そして、高次脳機能障害も、
現在では、fMRI等で、脳の活動の低下が
画像診断できるとのことで、
科学は進歩しているなあと感心しました。

実際に、高次脳機能障害の方の交通事故の
示談斡旋を担当したのですが、
不意に、些細なきっかけで、
制御不能という形で激昂され、
とまらなくなってしまったのです。

びっくりしてみていたら、
また急に我に返られて、静かになったのですが、
お気の毒なことに、
その発作的なご自分の状態をきちんとわかっていらっしゃるのです。
我に返った時に、
ご自分の態度を恥ずかしがるというか、
ショックを受けられたというか、
一番つらく思われているのです。

当時、高次脳機能障害という言葉も、
トピックになってきたばかりで、
保険会社も必ずしも理解があったわけではなかったのですが、
私もそうでしたが、
目の前のエピソードで、
強く納得させられました。

コンピューターなどを屈指した
知的創造をするお仕事をする方でしたが、
交通事故による高次脳機能障害のため、
記憶力が無くなったり、注意力が無くなったり、
感情的になりやすくなってしまったので、
集団的行動ができなくなってしまい、
仕事がかなり制限されてしまったようです。

そのような病気、症状があるということが
先ず、あっせんをする方になければ、
正しい被害救済ができないので、
医療セミナーで勉強させてもらうことは、
必要不可欠なことなのです。


この歳になると、勉強はなんでも楽しいけど
きちんとセッティングされて、的を得たテーマの話を聞けるので、
ありがたいです。

過失割合20%以下の場合保険料が上がらない自動車保険を作れないか [交通事故]

交通事故で、過失割合にこだわる場合、
過失を認めて保険を使うと、
それ以降の保険料が上がってしまうという不利益が
生じてしまうことが一つの原因になっています。

保険を使うことで、
自動的に契約者の等級が下がるためとのことです。

このため、少々の修理費や損害賠償なら、
敢えて保険を使わないで、
自腹で負担することもよく見られます。
これでは何のための保険かわかりません。

事故のリスクの高い人は、
保険を使う確率が高い人だから、
保険料を高くするということは、
「保険」の原理からやむを得ないとは言えます。

しかし、過失割合20%以下の場合、
その人の事故のリスクが高いとは、
必ずしも言えないように思います。

例えば、
信号機のある四つ角交差点で、
青信号で直進して、右折車と接触した場合も
直進車に15%程度の過失が認められます。

優先道路を直進中、
わき道から進入してきた自動車と接触しても
直進車に10%程度の過失が認められます。

道路を直進走行中、
駐車場から道路に入ってきた自動車と接触しても
直進車に20%程度の過失が認められます。

しかし、これらの直進車が、
本当に過失をとられることが妥当でしょうか。
道路を直進していて、
脇から自動車が侵入することを回避する方法は、
道路上で停止しなければならないことが多いです。
そんなことは、例えば優先道路では極めて危険です。

これらのケースはどちらかといえば、
直進車に落ち度があるのではなく、
進入車にも気の毒な要素があるので、
進入車の責任を軽減するとしか
説明のしようがないケースがほとんどです。

このようなケースで、
直進車に責任があるから、
保険料を上げるというのは、
なるほど気の毒すぎることが多く、
過失割合の存在を争うことも、
理解できるところです。

そこで、
過失割合特約ということで、
20%以下の場合は、
保険料が上がらない自動車保険を作ったら
売れるのではないかと思っている次第です。

特に弁護士特約が付いている場合、
保険料を上げないために過失割合を争い、
弁護士特約を使っての裁判が増えると、
保険会社の弁護士費用負担も多くなってしまいます。
保険料が変わらないんだからと
契約者を説得して、支出を抑える
というメリットもあるはずです。

交通事故の示談あっせんを担当していると、
そんなことを考えてしまいます。

100:0対0:100の過失割合の主張事案が、なぜ示談成立したのか 物損事故 [交通事故]

交通事故紛争処理センターのあっせん委員をやると、
毎月3日、1日3件ずつ交通事故の示談を行うので、
月に9件の交通事故を扱うことになります。

毎回、事件が終わるとそのままということですが、
経験を文字にまとめなければもったいないかな
と思うところがありまして、
特に、物件事故は、過失割合の争いが多く、
時分には責任は無い。相手が100%悪いと
双方が言い合うことも珍しくありません。

中には、未熟な運転をする私をよけないのが悪い
としか聞こえない主張もあったりするのですが。

物件事故は、双方が同意をしないと示談は成立しません。
人身事故であれば、保険会社に対して、
最終的には裁決をして、支払ってもらえるのですが、
物件事故は、そういう制度は原則としてありません。

100%相手が悪いという案件でも示談が成立することは、
珍しくなく、
その要素を振り返ってみます。

その事案は、双方に保険会社の方が付添われた事案でした。
そして、ご本人も出席していました。
保険会社の方も、示談の成立に向けてご努力いただきました。
この点は、示談がまとまる不可欠な要素に思います。
(本人出席、保険会社の協力)

次に、根拠を明確にして、示談案を提示しました。
(あっせん委員の示談案提示)

いわゆる判例タイムス別冊の過失割合の類型を使い、
数字の根拠を明確にしました。
(明確な基準、根拠)

それだけでなく、
なぜ判例タイムスの基準ができたのかについて、
できるだけ丁寧に説明しました。
(基準の説明と、類似事案の処理の説明)

ここまでは、どなたもやるし、
これで、成立しないから、苦労するわけです。

今回は、交通事故紛争処理センターの示談は、
今日で終わりであることを説明しました。
あとは、裁判等で解決するしかない
ということを説明しました。
(示談の機会喪失、今後の解決に向けてのコスト)
(示談をしないことのデメリットと、示談のデメリットの比較)

実は、このことを説明する前に、
保険会社さんだけ双方よんで、
示談は今日で終わりで、この案で解決しなければ、
示談不成立ということになりますけれどよろしいですね
という進行についての確認がありました。
(これがよかったと思うのですが、なにがよかったのか?
代理人間の信頼関係ができたことかもしれません。)

ところで、解決の最大の決め手になったのは、
示談案の提示の根拠に、
警察の実況見分調書がありました。
そこに、警察官が当事者から聴取した言葉が
記録されていました。

その言葉は、これまで、当事者が言っていたことと、
結果的には矛盾することでした。
しかし、あっせん委員は矛盾を突いてはいけません。

ここにこう記載している以上、裁判でも証拠になってしまう
という表現を使うべきです。

また、よくよく聞いていくと、矛盾しているのではなく、
意味を取り違えているだけのことが多いです。
一度言ったことを隠して嘘をつくという人は
めったにいないと考えていいでしょう。

そして、自分はその場にいなかったし、
裁判官のように事実認定をするわけではないので、
もし裁判になればという話で、見通しを述べる
という姿勢がよいと思います。

そうすることによって、説得しようとする相手と
対立することなく、
その人の立場に立ってデメリットを提示することが
できるようになります。

共感、支持の姿勢をできるだけ崩すべきではないと思います。

そうしてしまうと、一方当事者だけに肩入れすることにならないか
という問題が出てきますが、
あまり気にしなくてよいと思います。

相手方にも同様の姿勢で、肩入れすればよいと思うのです。

その間に矛盾しないのは、
双方の共感できる部分にだけ共感すればよいからです。

示談がこじれてしまった多くは、
相互不信があります。
相手が嘘を言っているという不信と
自分が嘘を言っていると思われているのではないかという不信。

双方嘘を言っているのではないという立場に立って、
双方の言葉を再構成してみるという作業、
あなたは嘘を言っていないという態度、
相手の問題点と自分の問題点を説明することが、
案外、心を落ち着かせ、
もうこれい所争ってもめんどくさいし、
経済的にもいいことは無いという、
頭では分かっていたことに基づいての
結論を出すきっかけになると思います。

だから、当事者の方に、どうして、示談したか尋ねれば、
もう面倒だから、早く終わりにしたかったからという
答えだけが出てくると思われます。

それは、さいしょからわかっていたでしょう。
どうして今までそういう結論に立たなくて、
その日にそういう結論に立ったのと
鋭い質問をしたところで、
おそらく、あれ、どうしてだろうねえとなると思われます。

この辺のディスカッションを
保険会社とあっせん委員で
行うのも面白いかもしれません。


物件事故でも実況見分調書を。写真活用の簡易図面は?警察庁にお願いします。 [交通事故]

交通事故紛争処理センターの任期は、1期2年で、
2期を担当し交代する弁護士が多いので4年が通常です。
毎回1人、もう1期担当する弁護士がいて、
その弁護士は、6年の任期となります。
例えば私。
最後の2年は、物件事故(物損事故)
というのを一人で担当することになります。
センターでは物損事故といい、
怪我等の人身被害が無い事故ということになります。
中には、怪我はあとで示談するので、
物損、自動車の修理代金等だけ示談したい
ということもあります。

警察の区分では、
人身事故が生じていない事故を物件事故といい、
交通事故証明書で区別されています。

物件事故の多くは、
どちらが、事故を起こした原因、責任があるか
ということが真っ向から食い違うことがほとんどです。
過失割合というやつです。

申立人は、100対0を主張し、
相手方は、0対100を主張するということも、
珍しくはありません。
最初驚きましたが、なれました。

別に嘘をついているのではなく、
事故というのは、普通にいつも通り運転していて、
事故という衝撃的なことが起きるものですから、
相手が悪いという先入観がだれにでも起こりやすい
このため、相手方の行動こそ不合理だと
主張する結果、0と100の争いになるわけです。

しかし、その普通にいつも通りの運転こそ
道路交通法違反であることもすくなくありません。
そういう場合もあります。

ただ、気の毒なのは
こちら側は停まっている。
相手が止まっているこちら側に
ぶつかってきたんだという時、
怖い思いをして、よけようがなくて
それでも責任を持たなければならないのか
という事態があることです。

このような場合、相手方は、
その人も動いていたと主張しているわけです。
おそらく、相手方は動いていたと認識しているのでしょう。

停車していた場所にもよりますが、
停車していたというのであれば、
過失割合が低くなることは当然です。

争点は被害車両が動いていたか停まっていたか。
これは、事故地点がはっきりすることで、
どちらかに決まることも結構多いです。
せめて、停止線の前か後ろか、
車線の右か左か
そんなことだけでも決め手になりうるのです。

人身事故は、運転過失致死傷罪という犯罪になりますので、
警察の捜査の対象ということになります。
事故を再現するような正確な実況見分調書が作成されます。
図面で事故の場所が特定されるし、
事故前の様子も当事者の話として記録されています。

ところが物件事故は、そのような犯罪にならないので、
このような、正確な記録が無く、
警察官のメモみたいなものしかないことも多く、
それすらもなく、事故の住所地と日付など
だけが特定されているということもあるようです。

そうすると、真実は丸っきり藪の中になり、
じゃあ50対50なんてことになりかねません。
直観的に、これは気の毒だなあという事例も
無くは無いのです。

せめて、事故地点の図面だけでもあると
一方の言い訳が成り立たなくなることが
結構多いのです。

どんな事故でも実況見分調書を作らなければならないのでは、
確かに警察も大変です。
いちいち線を引っ張って道路図面を
作成されているようなのです。

しかし、これだけ、写真技術が進み、
インターネットで、道路状況の写真がみられる時代
ということもあるのだから、
簡単に道路の写真を用意できないのでしょうか。
住所だけコンピューターに打ち込めば、
その付近の写真がプリントアウトでき、
衝突地点に、自動車の形をしたハンコを押す
という処理はできないでしょうか。

道路データを入力する作業が
簡単にできるのであれば
不可能ではないと思うのです。

事故時の正確な記憶で、
証言という言葉を仲介せず、
グラフィックインターフェイスで
実況見分ができれば
正確に、迅速に処理できるようになると
素人的には思うのです。

事故が正確に記録されることで、
また、ビジュアルで再現されることで、
当事者も、むちゃな主張ができなくなるので、
事故原因の正確な特定ができるようになり、
原因究明に役立つと思います。
事故防止につながるわけで、
これは警察の役割です。

物件事故といっても、自動車という、
何トンもある鉄の塊がぶつかり合うのですから、
いつ人身事故になってもおかしくない
ということでもあります。
深刻な傷害が後に発覚しても、
実況見分調書は、
遅くなるほど制度が怪しくなってしまいます。

警察車両にパソコン端末とプリンタを載せて、
住所を打ち込めば、
実況見分調書の、もと写真がプリントアウトされる
当事者が指示したところにハンコを押す。
写真なので、そのまま縮尺で、距離を記載できる。
これは便利ですよ。

警察庁で検討していただけないでしょうかねえ。

データ入力が大変なら、警察車両に
するするするとアンテナのように伸びてゆく棒をとりつけ、
数メートルの高い場所から写真をとる。
これをプリントアウトするという方法も
あるのではないでしょうか。


自動車事故を装った保険金詐欺の人がきた 交通事故紛争処理センター [交通事故]

長年交通事故のあっせん業務をやっていると
変な人というのは確かにいて、
交通事故をわざと起こして、保険金をだまし取ろうと
する人も、実際に申立人として
あっせんを申し込むということがあります。

その人は、プロのギャンブラーということで、
確定申告もしているというのです。
他にも3人車に乗っていて、
自分が代表で話を進める。
最後にみんなが印鑑を押す
という話だったような記憶です。

交通事故で仕事を休んで、
給料が出ない場合は、
休業損害を請求できます。
無職の場合は、
賃金センサスという統計に基づいて、
この額をもらえる蓋然性がある場合は、
この金額ということになるのですが、
確定申告は、この賃金センサスを下回っていました。
この金額でいいというのです。

さて、確定申告をしていない人たちは
かえって大きい金額となるのは変だ
いやまて、
そもそも休業損害は、
働く意欲がある場合だから、
プロのギャンブラーに働く意欲があると言えるだろうか
そもそもプロのギャンブラーって職業だろうかと
目の前の自称プロのギャンブラーを見ながら
どう話を進めるか悩んだものでした。

それから、いわゆるむちうち症の場合、
保険会社は治療期間を勝手に区切り、
治療費を打ち切る場合があり、
どうしたものかと思っているのですが、
このケースも、事故後半年近くになっており、
すでに打ち切られたというのです。

通常、最後まで治療費を出せということが多いのですが、
この人は、うち切り期間を1カ月でも延長してくれたら
納得して示談するというのです。
非常に物わかりがよいと思ってしまいました。

話は朴訥として、軽すぎることは無く、
ギャンブラーといってもプロは違うのかと
錯覚を覚えるほど好人物でした。
なるほど、仲間を統率する人だなあと感じてしまいました。

なかなか難しい事案だけど、
話し合いでまとまるんじゃないかなと思って、
第1回目は終了しました。

しばらくして、第2回目が無くなったというのです。
逮捕されてしまったからこれないというのです。
しかも、交通事故は、実際にはなくて、
保険金をだまし取ろうというものだったというのです。

そもそもプロのギャンブラーなんて成り立つのかよと
自分に改めて突っ込みを入れました。
うかつでした。まんまと騙されました。

こういう人がいるから、
本当に苦しんでいる人たちに
なかなか保険金が支払われないということが
起きるのです。

ちゃんと頸椎捻挫(むちうち)の診断書も
あった事例でした。

車線変更の事故はやはり多い [交通事故]

車線変更をして、隣の車線に入ったところ、
その車線を走っていた後ろから来た車に衝突する
という事故は多くあります。

多くは、変更した車の後方確認不足です。

私も教習所で一回ダブったことがあります。

二つ目の交差点を右折するため、
一つ目の交差点を過ぎてから右折を開始しようとしたのです。
一つ目の交差点までの右側車線は、
右折専用レーンだったので、
その交差点を超えれば、
後ろから直進車が来ないはずだという
頭で考えて、右に車線変更をしようとして、
右折専用レーンを直進してきた車と接触しそうになったのです。

大事なのは、やはり、後方確認です。
悪いのは相手だと思っても、
事故になってはしょうがないです。

それから、交通事故の損害賠償においても、
通常は、車線を変えた方が70%持つことになり、
方向指示器を出さなかったり、
後方確認をしなかったりすると、
100%あなたが悪いということになる可能性もあります。

車線変更での事故の多くは、
どうやら、変更する車の後方安全確認不足です。
事故を起こすのが嫌であれば、
必ず教習所で行ったスタイルを思い出して実践することですね。

それから、後ろから来る、直進車の方も、
基本は30%の責任が認められてしまいます。
怪我でもして1000万円の損害が生じれば、
300万円持たなければなりません。
自分の自動車の物損の保険に入っておらず、
修理に30万円かかるとしたら、
9万円は出さなければなりません。

変な車がいたら、
スピードを緩めて、入れてやる方が
絶対お得ということになります。

実際事故が起きて、怪我でもしたら、
まるっきり損だということになります。

事故が起きてから、
相手を怒っても、
取り返しがつかない現場を、
多く見ていると、本当にそう思います。

弁護士が聞く医師の評判 私の骨折体験 一ヶ月後の骨折影 [交通事故]

精神科の医師に対する患者さんの評判は、
相性の問題が多く、あまりあてにはならないし、
あてにしないようにしなければならないと思っています。

意外と多くのお医者さんの名前を聞くのは、
整形外科のお医者さんです。
交通事故の事件の患者さんと話をすると、
特に、むちうち症等の原因不明の場合に、
評判が出てくるようです。

むちうち症は、レントゲンやMRI等画像に映らないことが多く、
なかなか治りも遅い場合があり、
患者を治そうという意識が、お医者さんには強いので、
結構お医者さんがいらいらしてしまう場合があるようです。
なんとなくわかる気がします。

そんなときに、患者さんの痛みと向き合って、
きちんと考える姿勢を示すお医者さんは、
患者さんからの評判が、
否応なしに聞こえてくるんです。

医学のことはわかりませんが、
結局
患者さんの話をよく聞き、
様子をよく観察し、
痛いというなら原因があるはずだという
姿勢ということになると思います。
これの反対は、痛くないはずだということでしょう。

私も数年前に、ひじを骨折したことがあります。
書類を手に持って横断歩道を渡ろうとした時、
ある事情があって転んだのです。
書類を手に持っていたため受け身ができず、
変な衝撃が走りました。

まさか折れたとは思っていなかったので、
数時間冷やしながら様子を見ていたのですが、
だんだん痛みが強くなっていったので、
これはまずい、帰れないと思ったのです。
その時運悪く、県北部に自動車で出張していたのでした。

車を道端に停めて、事務所に電話をし、
前より評判を聞いていた先生の病院の電話番号を調べてもらいました。
ちょうど、隣の町にいるし、車ですぐだと思うので、
どうせかかるなら、一度見てみたいという気持ちが
あったのですね。

田園地帯の中に、大きな駐車場があり、
近代的な形の建物でした。
比較的すいていますよと言われたのに、
たくさんの老若男女が来ていました。
明るい感じの待合室でした。

私は、手をまっすぐ下におろすと
ものすごく症状が悪化し、
自分でも血の気が無くなることが分かり、
呼吸困難に近くなり、
ベッドで休ませてもらうほどでした。

手を支えていると少し落ち着くのですが、
レントゲンを撮るために手をまっすぐにしなければならないというのです。

まあ、なんとかレントゲンを撮ってもらって、
先生の診察となったのですが、
骨折の影が無いのだそうです。

私には何のことやらわかりません。

先生は、これだけ苦しんでいるのだから、
骨折は必ずあると断言されました。
最初には骨折の影が映らず、
後に出てくる場合があるそうです。

骨折の診断のもと、腕を固定していただき、
なんとか家にたどり着くことができました。

その病院は、自宅から離れているので、
自宅の近くのお医者さんに紹介状を書いてもらったのですが、
その時も、あれこれ真剣に考えていただきました。

そうして、自宅近くの病院に行き、
こちらの先生も、やはり、
それだけ痛いのだから骨折だといってくださり、
ご自分で、固定器具の包帯を巻いてくださりました。

先生に巻いてもらうと、
ああ良くなるんだなと変に安心したものでした。

結局、1カ月くらいして、ひじに骨折の影が出てきました。
ああ、やっぱり骨折だったんだと
変に安心しました。

もし、レントゲンに影が映らなかったら、
固定をすることもなく、
病院を紹介されることもなく、
どうなっていたんだろうと思うことがあります。

なるほど評判のよくなる先生方だなあと
納得した次第でありました。

格落ち(評価損)  [交通事故]

交通事故の示談斡旋をしていて、
なかなか難しいのは、格落ちという損害です。

交通事故を起こした車は、
修理をして性能が戻っても、
時価額は減るわけです。
感覚的には理解できます。
ところが、保険会社は、なかなか格落ちという損害を
認めません。

例えば、事故が無ければ100万円で売れた自動車が
事故があり、修理したけれど、事故車ということで、
60万円でしか売れなくなったとします。

車の所有者は40万円の損害だと主張します。
保険会社が損害はないというわけです。
その理屈はこうです。
(いろいろ理屈がありますが説得力があるもの)

その車を、販売することが決まっていたら、
確かに40万円損するかもしれない。
しかし、事故が無くてもあと5年乗って廃車にするかもしれない。
修理しているのだから、同じようにあと5年乗れる。
結局、そのまま5年乗れば、どこにも損害はない。
というものです。

判例をみますと、
格落ちを認める判例が多く、
ただその損害額は、修理費の20%から30%
という形で計算されています。

多くは、購入直後のものだったり、
高額な自動車だったりするようです。
修理費用も高額の場合が多いです。

しかし、必ずしもそのような場合だけではないので、
(例外的な判例もあるので)
はっきりとした基準があるとまでいえるのか、
難しいところです。
また、裁判の場合は裁判費用がかかるので、
格落ちだけで、裁判するのは、
高級外車の場合に限定される傾向がある
という事情があります。
自動車の価格が要件となっているか即断はできません。

自動車の所有者にとっては、
事故車なんだから、価値が下がったはずだと
考えることはもっともなのです。
事故車はやはり買いたくありません。
そういう気持の問題ならばよくわかるのですが、
物損だけだと慰謝料は認められない傾向にあります。

なんだかんだいっても、
交通事故があると、割り切れない損害が残ることは、
否定できないように思われます。

ただ、交通事故紛争処理センターなどで話し合いで解決する場合、
http://www.jcstad.or.jp/
格落ちにこだわるよりは、
他の認められやすい損害をきっちり主張したり、
過失割合を少しでも有利に持って行った方が、
早期に、有利に解決することが多いようにも思われます。

ただ、保険会社の対応とか、
加害者の対応が悪くて、
どうしても、ある部分にこだわってしまうことが
結構あるのです。
こちらもお気持はわかるので、
別の方で頑張った方が得ですとは
なかなか言えない場合も多いです。

そうなると、裁判をするしかなくなるわけです。
せめて、形だけでも格落ちを認めてもらえば、
納得してもらえることも多いのですが、
保険会社は、「社の方針」で
格落ちを認めないケースが多く、
話し合いが難航したり、
不承不承示談してすっきりしないということも多いのです。

だから、実務的にはすっきりしない論点となります。
すっきりしないまま、今日は終わりです。

症状固定 後遺症 健康保険 交通事故の無料相談 [交通事故]

労災も同様なのですが、特に交通事故で、
よくわからないうちに症状固定ということになっていて、
保険から治療費も、休業損害も出なくなった
という相談を受けることがあります。

交通事故で、けがをした場合、
入院費用、通院費用が保険から支給されますが、
原則として、治療期間ということになります。
(例外はけっこうあるので、あくまでも原則)

ところが、病院に通っていて、
やっていることが変わらないのに、
もう、その病院代はでませんとなるわけです。
患者さんにとってはわけがわからないということも
自然なことのように思います。

それは、治療、治癒、後遺症の言葉の問題が
大きいかもしれません。

治療は、症状を軽快させてゆく手当ということになります。
病院に行くのは、症状を軽快させ直すためですが、
どうしても、現代の医学ではこれ以上治らない
ということがあります。

わかりやすいのは、体の部分が欠損してしまう場合
治せません。
わかりにくい典型は、むちうち症による痛みでしょう。

ある程度までは痛みは軽減してゆきますが、
病院に行っても、どうしても治りきらない。
その状態が、将来も続くということになれば、
保険上は、症状固定となります。

症状固定となった後は、病院に行っても、
治療ではなく、リハビリということになるので、
毎月の治療費は出ないことになるのです。

症状固定のことを治癒ということもあるので、
ややこしいのですが、
治療終了という意味で使われているわけです。

但し、賠償がされないわけではないのです。
後遺症が残ったら、
後遺症慰謝料と、逸失利益の損害賠償が認められます。

これからも続く痛みなどの生活の不便さは、
月々支払われるのではなく、
前払いされることになります。

ただ、それまでのように、病院から保険会社へ請求がいかないので、
保険証で3割負担をすることになります。
この点を、よく説明しなければならないのです。

このような変化があるし、
そうであれば、示談を早く進める必要があるわけです。
また、症状固定とするかどうかは、
お医者さんが認定するので、
お医者さんと相談することも場合によっては必要です。

症状固定の話が出たら、
一度弁護士に相談した方がよいと思います。
交通事故の相談は、
各県の弁護士会で無料で行っています。
同じ事故で数回無料となります。
(すいません、回数は窓口で確認してください)

これは、良い制度だと思うので、
どんどん相談されるとよいと思うのですが、
いまいち宣伝されていないようです。

経済的全損 修理費用が出ない交通事故 [交通事故]

交通事故で、自動車が壊れた場合、
普通というか、通常、修理費用がでるわけです。

交通事故に限らず、損害賠償は、
経済的にマイナスになる(損害が生じる)から、
それをマイナスから0にするように、支払われるわけです。

変な話ですが、厳格に0にするため、
被害者にとっては、保険会社が
0に近づけることよりも、0からはみ出さないために
力を入れて検討していると感じるでしょうし、
それは正しい感覚だと思います。

そうすると、
修理すると100万円かかる事故も、
車を買いかえれば40万円で済むというのであれば、
100万円の損害賠償を支払う必要がなく、
40万円の賠償で済むということになります。

これを経済的全損といいます。

これならこれでよいのでしょうけれど、
買い換えの金額が低いように感じられるので、
問題が大きくなるわけです。

40万円もらったって、
今まで使っていた車を使い続ける方がよほどよいわけです。
また、レッドブックとか40万円といわれても、
現実に40万円で買える保証はないし、
中古自動車屋さんに足を向けたり、研究しなければならない手間は
含まれていません。

注意していただきたいのは、
買い換えの時に必然的に支払う車庫証明の費用など
数万円が含まれて提示されない場合があり、
0に近づかない場合もあるということです。

時間は限定されますが、
日弁連の交通事故相談は、
各県の弁護士会で無料で行われていますから、
示談額の提示は書面でもらって、
書面をもらったら相談に来ていただきたいと思います。
無料です。

どうしても理解できない場合、ずいぶん金額が違う場合は、
交通事故紛争処理センターに相談に来てください。
あるいは、最近の自動車保険には
弁護士特約があり、無料で弁護士を依頼できる場合があるので、
特約を有効に使って、弁護士に依頼するのもよいでしょう。

交通事故で得をすることはありません。
ならば、
損をできるだけ少なくしましょう。
そのためには、自分の信頼できる専門家に相談することです。

もしかしたら、損をしないという態度で
示談に臨むより、
損をできるだけ少なくという態度というか心構えが、
案外正しいかもしれません。