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弁護士のボランティア 結核の話 [事務所生活]

弁護士やって、何年かボーっと過ごしていると、
弁護士会の仕事をそんなにやらないのなら、
ボランティアをやれということで、
弁護士会から打診が来ます。
大抵断りきれない人から、断りきれないタイミングで、
打診が来るので、引き受けざるを得ないのです。

なるほど、前任者があの先生か、
じゃあ、今度は私か、しょうがないな¥・・・みたいな。

民間の法律家ということで、
裁判に類似した仕事としては、
裁判所の調停委員、交通事故紛争処理センターのあっせん委員、
県や市町村の紛争機関のあっせん委員などがあります。
これらは、ある程度日当も出るし、
紛争に対して、中立的な観点からかかわるので、
勉強にもなります。

市民の人権にかかわる仕事としては、
法務大臣から委嘱される人権擁護委員、
相談活動が主体ですね。
これは、年に3回くらいですが、
9時から5時まで拘束(昼食休憩1時間)されるので、
結構精神的にきついです。
相談が来た方がありがたいです。
ただ、ベテランの民間の方とご一緒になり、
お寺のお坊さんだったり、元学校の先生だったり、
お話をうかがうのは楽しいし、勉強になります。
法務局の方が頑張っているようすを見るのも
勉強になります。

自治体の仕事と、住民の緊張関係の
間に入るような仕事もあります。
各種審査委員ですね。
情報公開審査委員もこのひとつなのでしょうか。

各種審査委員、審議委員になったとしても、
必ずしも、その分野に弁護士が一家言もっているわけではありませんが、
もし持っていても、
弁護士会推薦の場合は、弁護士会代表としてゆくわけで、
自分の独自の見解を主張するということはありません。

自分に知識が無く、弁護士というだけで呼ばれているということを自覚し、
その分野を一生懸命勉強する、教えてもらうみたいな
謙虚な姿勢が大事なような気がします。

その中で、印象に残っているのが、
結核の審査委員です。
ビートたけしが、ACのCMで結核大使としてでてますが、
結核は、まだまだなくなっていません。

結核は咳、痰、発熱が続き、放っておくと肺に穴があいたり、
肺に水がたまって呼吸ができなくなったりして、
苦しく、危険な病気です。
結核菌という菌でうつるのですが、
これが、唾にのって空中を飛んで感染するので、
感染力が強いのです。

だから、結核は社会的に防衛しなければならず、
結核の認定をすれば、
治療費は国だか自治体だかが出しますし、
逆に感染させる危険がある状態の場合、
入院勧告をしますので、
自由な生活ができなくなります。

公費の支出の適正さの確保という観点と、
自由を制約される人権という観点から、
弁護士が、この認定委員の一人に選ばれる
ようです。

もちろん結核のことはわかりません。
レントゲン写真も見ますが、
結核の影だか、ろっ骨の影だか、
最初はわかりません。
いや、最後までよくわかりません。

薬の名前も、ストレプトマイシンとストマイが
同じものだと気がつくまで、ずいぶん時間がかかりました、
イナとヒドラジット、イオニアジッとでしたけ、まあいいとして。

ほとんどの審査委員は、当然お医者さんです。
普通にお話しするときの目と
レントゲンなどを見るときの目がまるで違うということなど、
勉強になることが多かったです。
審査会のお医者さんは、みなさんがみなさん人格者で、
この時の体験が、自殺対策の飛び込み依頼に
つながっていると思います。

月に2回、午後を拘束されていましたが、
この審査会は、精神的苦痛がないボランティアでした。

わからないなりに、知り合いのお医者さんの協力を得ながら、
結核のこともずいぶん勉強しました。
だんだんわかっていくにつれてどんどん楽しくなって行きました。

それよりも楽しく勉強になったのは、
審査会が終わってから、年配の先生から、
戦後直後の医学部の様子とか、
日本の医療の結核の治療の変遷とか、
お茶をいただきながらお話をうかがうことが、
何よりの楽しみでした。

こちらの先生は絵もお描きになり、
くらい波打ち際から、水平線の朝日が昇る直前の
絵を見たとき、黎明という言葉を思い出し、
命の先にあるものを感じました。

なんか、ボランティアと言いながら、
自分のためにやっているような、
贅沢な話ですね。

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