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思わず不愉快になり、そして考えさせられる渾身の労作、加害者家族 [刑事事件]


幻冬舎新書は、結構買わされてしまいます。
タイトルが裏切らない内容となっている本が
多いからかもしれません。

「加害者家族」鈴木伸元著

いくつかの重大事件のその後を追い、
加害者の家族のおかれた状況が
報告されています。

何となく違和感があっても、
ああ、そうかもしれないと
素通りしがちなのですが、
これを読むと、
なんで、家族が非難されなければならないんだと
不愉快な気持ちが思わずこみ上げてきます。

おそらく、自分の心の中に
無邪気に、加害者家族の家に押し掛けたり、
無言電話をかけたりする「社会」の行動に
否定しきれない親和性がどこかにあるのかもしれません。

その自分の暗部を明るみに出されたように
無意識の中で感じたのかもしれません。

筆者はいくつかの重大事件を取り上げるのですが、
なるほど、重大少年犯罪をはじめとして、
家族ではどうしようもない事件であったという要素が、
その後の研究を引用して説得的に述べられています。

それでも、「世間」は容赦せず、
塀の中にいる加害者でなく、
その家族に対して攻撃的を加えています。

先ず、家族から犯罪者を出した家族は、
それだけで肩身が狭い思いをするのですが、
「世間」は追い打ちをかけるわけです。

これが被害者の行為なら、
まだ、わからないでもないですが、
おそらく大半は無関係な人の行為です。

そして、それらが正義感に基づくものではない
ということが、徐々に検証されていきます。
一つに同様の行為は、
加害者の関係者に対しても向けられていく
いわゆる無理筋の典型が、
少年加害者の通う学校の生徒に対しても
向けられていったということが挙げられます。

関西の児童殺傷事件において、
加害者の通う学校にマスコミが押しかけるなどして、
ただでさえ動揺している子供たちに
過酷な追い打ちをかけているようすが描かれています。

さらに、検証は続き、
被害者に対する過酷な追い打ちも
淡々と述べられています。

それらは、なるほど同一のニュアンスをもった行動であり、
正義の名のもとに行われているけれども
およそ正義とは関係の無い行動のようです。

そういう感情を爆発させるターゲットがあればいい
という行動をしたいという
黒々とした行動を「世間」は志向するようです。
その「世間」は、結構な多数派のようで、
その多数派の視聴率、購読をあてこんで、
マスコミは、報道をし、
苦しみにもがいている人たちを
容赦なく取材する様子がありありと
描かれています。

私の妄想ブログとは違って
丹念な取材、研究に基づいた労作になっています。

事実の持つ重みゆえに
救われない気持ちが残ります。

その中で、唯一救いのように描かれているのが、
どんなに迫害を受けても、
母親は子供を見捨てないと述べられています。

この点については、
そういうことも確かにあるけれど
(殺人未遂の被害者である母親が
加害者の子供の情状証人になったという
事例も担当しています。)

必ずしもそうでもないことを
リアルに知っているし、
それももっともだと思う事案を
リアルに見ている者からすると、
何も救いの無い気持ちになるわけです。

まあ、それでも
加害者の弁護をする者からすると
よくぞ書いてくれましたと
あるいはそうだったのかと
応援しなければならない本だと思いました。

実際の事例をブログに書くわけにはいきませんが、
本当に、家族といえば家族ですが
実際は無関係と言っていい人が、
戸籍がつながっているということをわかられただけで、
長年勤めていた会社を辞職しなければならなくなったり、
その後の生活も困難に陥ることを目の当たりにしているので、
なんかルールが作られないものかと、
国民の品格というか・・・・
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