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じん肺訴訟弁護団に学んだこと  [労災事件]

早速じん肺訴訟で学んだことを
記事にして、私の頭を整理しようと思います。

じん肺患者をはじめてみたのは、
まだ司法試験に合格する前でした。
弁護士から、当人を前にして、
もう治らない病気で、進行してゆく病気だと
紹介されました。
きちんと一人で歩いている人なのに、
もうすぐ亡くなるようなことを聞いた記憶があります。
物凄く怖かった、強い印象があります。

そして、修習生の時に、
つてを使って弁護団会議の合宿に参加させていただいて、
所属事務所の許可を得て
細倉じん肺弁護団に入れてもらいました。
後のトンネルじん肺の使用者ルートの訴訟も
参加させていただきました。

じん肺は、世界最古の職業病です。
ピラミッドの絵に、じん肺のことが
描かれているそうです。

珪素と言う成分を含む粉じんを
大量に吸い込むと発症してしまいます。

普通の粉じんだと、
鼻毛や唾液が、体内に入り込むことを妨害し、
それでも入った粉じんも、
痰や咳で排出されます。

珪素粉じんは、あまりにも小さい粉じんの為、
長年大量に吸い込んでしまうと
それらの排出のメカニズムが効果を発揮できず、
肺に蓄積されてしまいます。

体内深い場所でも排出のメカニズムがあり、
これは血液による排除ですが、
白血球やマクロファージの出番なので、
私の説明の出番ではなくなります。
大雑把に言えば、粉じんを取り込んで
その部分を無力化する
そうすると、肺が線維化していくのです。
肺という本来の機能が失われ、
細胞が死んでゆき医師のように固くなっていきます。

肺の機能が低下していくわけですから、
からだ全体に倦怠感をはじめとする
さまざまな失調が起きて行きます。
からだだけでなく、
うつ病にもなりやすくなります。

鉱山やトンネル等、粉じんが大量に発生する職場で
怒りやすい病気で、
日本でも、よろけと呼ばれて、
古くから知られている病気です。

割と早い段階から粉じんと病気の関係はわかっていたのですが、
通気やマスク、じん肺教育ということを十分にせずに
できることをしないでじん肺に罹患させたということで、
損害賠償を求めて集団裁判を起こしたわけです。

弁護団は、山下先生というカリスマ的な弁護士を中心に
必要な会議はすべて行うという
必要な訴訟行為もすべて行うという
フルスペックな活動をしました。省略なしです。
落ちこぼれそうになりながら、
なんとかついて行ったという状態で、
相当息切れをしていました。
これ自体、相当勉強になりました。

今、ここで学んだことを二つ挙げるとしたら、
一つは人の苦しみを聞き出すということでしょうか。
鉱山(やま)の男たちは、ただでさえ寡黙で、
特に自分の苦しみを、自ら語り出すということは
なかなかしません。
県境の自宅に行って、
家族を交えて話を聞いていくうちに、
ぽつりぽつりとようやく出てくる。
体が苦しい時は、
それに必ず、つらさや家族への申し訳なさといった
もろもろの感情がともなっていく、
粘り強く、それこそ必ずあるという
確信をもって聞いていかなければ、
なかなか聞きだすことはできない。
聴取する側の人間性を試されるような仕事でした。

もう一つは、医学的説明を
ここまでするのかという徹底性です。
鉱山の労働内容を担当したグループもあったのですが、
私は医学班に入れてもらいました。
マクロファージが取り込んでなどと書きましたが、
その時は、もう、何が何だか分からない状態でした。
何度も何度も先輩の書いた文献を読みなおし、
お医者さんの書いた文献に挑戦していった
という感じです。

わかり始め時には、感動さえ覚えました。
敬愛する長谷川先生ご夫妻が中心となった班でした。
ご夫妻でじん肺弁護団で活躍されていたのですが、
奥様が亡くなられたということで、
大変残念でなりません。
色々と勉強させていただいた恩人のおひとりです。

医学班で、じん肺患者の事情聴取に行ったときに、
我が事務所のアドバイザー医師も立ち会ってもらいました。
食事代は出したけど、それ以外は手弁当で
参加してくれました。
良い思い出です。
弁護団が事情聴取に熱心なあまり、
患者さんの負担が大きくなるのではないかと
話を聞いて心配になったという
お医者さん的な観点から
参加を申し出られたみたいです。


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