SSブログ

いじめ、ネット中傷等他人を攻撃する現象の成立要件と対策 [自死(自殺)・不明死、葛藤]

どうして、他人を攻撃するのか
その原因をそのままにして対策を立てることは
難しいことです。

私なりのこれまでの分析をお話させていただきます。

まず、攻撃が成立するためには少なくとも3つの条件があると思います。
1 攻撃要求
2 力の優位の認識
3 罪悪感等が抑止を期待できない

1 攻撃要求
  いじめの行為をしたい。攻撃したいという要求です。
  結局は、他者を攻撃することによって
  自分の不安を解消したいということです。

  他人を貶めることによって、
  自分の相対的優位を味わいたいという要求ですね。

  攻撃する側は、自己防衛ないし社会防衛の意識があります。
  極端な話、命を守るための攻撃です。

  また、攻撃によって、相手の命をなきものにしよう
  という気持ちではありません。

  だから、命を大切にしようということは
  加害者には響きにくいという理由があるわけです。

2 力の優位の認識
  攻撃や怒りの発生条件として
  自分が相手より強いという認識があるようです。
  自分が相手より弱いということになると
  怒りではなく、恨みになりますし、
  通常は逃避になるようです。

  厳密に言えば恨みは
  条件付きで勝てるという場合に成立するようです。
  死んだら霊になって祟るとかそういうことですね。

  通常は勝てるという認識が怒りを誘引します。
  この「勝てる」という認識を持つかどうかは
  個性があって、慎重な人はあまり怒りません。

  また、この「勝てる」ということは
  一対一である必要はなく、
  通常は、多数対一人という図式を作ります。
  いじめる側や傍観者が多くなれば
  いじめがエスカレートする理由です。

  ヘイトスピーチのように、国籍や人種、あるいは宗教のように
  自分で変えられないその人の属性で攻撃するということは
  攻撃の理由がないと同時に
  反論ができない状態に追い込まれることになります。

  また、ネット攻撃は
  自分が反撃される心配がないので、
  容易に怒りが生まれ、
  容赦ない攻撃となっていきます。

3 罪悪感等が抑止を期待できない

  冷静な思考をしている場合、
  逃げ場がなく追い込まれる人を見ると
  自然と苦しくなるものです。

  これを見ても、感情が揺り動かされない
  心が痛まないということは原因があるはずだと
  仮説を立てることにします。

  要するに、攻撃しても罪悪感を感じない
  ということが攻撃を遂行する条件になると思うのです。

  思考便宜上、罪悪感を二つに分けて説明します。

  a)対象が苦しむことに対する罪悪感
  b)道徳、法律等ルールに反した行動であることの罪悪感

  a)対象が苦しむことに対する罪悪感
    攻撃によって生じた結果
    攻撃を受けた者の苦しみ、孤独、悲しさに対して
    共鳴力や共感力をもって追体験し、
    自分が攻撃を受けているような苦しみ等を感じることです。

    共鳴力、共感力は、群れを作る動物にはあると思うのですが、
    人間は著明に存在しているようです。
    これは、共鳴力、共感力を構成する脳の部分が発達している
    という形で、条件づけられるわけです。

    人間には、本能的に、遺伝的に
    共鳴力、共感力があるという説もあります。
    私は、本能的、遺伝的にもあるが、
    むしろ、それを発揮する脳の部分の発達という
    前提条件が人間を特徴づけるものであって
    共鳴力、共感力も、後天的に獲得する部分も多いのではないかと
    考えています。

    どのようにして共鳴力、共感力を獲得していくか
    これは、遅くとも生まれてからすぐに
    食欲や睡眠欲、不快感からの脱出等という乳児の要求を
    大人が満たしてあげるということが行われます。

    愛情と条件があれば、
    自分の要求がタイムリーに実現します。
    
    自分の要求、感情に、他者が反応してくれる
    他者の共鳴、共感を、快いという感情でありがたく受け止めていく
    大人と目と目を合わせ、感情を共有することを実感すると
    安心感が生まれるわけですが、
    そういう体験を積み重ねていくことによって、
    共鳴力、共感力を育んでいくのではないでしょうか。

    いろいろな条件があって
    タイムリーに要求がかなえられない
    表情のデパートである目と目を合わせた交流がない
    という環境におかれた乳児は、
    なかなか他人の感情に共鳴、共感することができない
    即ち、思いやるということができないということになりそうです。
  
  b)道徳、法律等ルールに反した行動であることの罪悪感
    これは、もう、教育と学習によって培うしかありません。
    その時の文化、周囲の慣習などに大きく左右されるでしょう。
    生きていくためには、他人を踏みつけにしてもかまわない
    というような環境であれば、
    自分に都合よく、法律を利用することしか考えられなくなるでしょう。  

    この気持ちが強ければ
    被害者の心情を考えなくても
    ルール違反だということで行動を制御することもできるでしょう。
    
    いじめに対して制裁を強化するべきだという議論がありますが、
    それは、いじめの原因論のほんの傍論に対応する対処ということになります。
    あまり実効性がない理由はここにあります。

    このルールに反する、規範意識は、
    本来は、規範を破ることによる不都合を認識することによって
    強められます。

<対策>
 1 攻撃要求に対して
   これは加害者側に対する働きかけです。
   子どもたちの不安は、多くは、家庭の中で居場所がない
   安心できないということにあります。

   兄弟の中で差別されるとか
   入試に成功しないと人格が否定されるような状況とか
   自分が家庭の中の構成員として尊重されていない
   ということが多くあります。

   このような環境に対して働きかけを行うことが必要です。
   いじめを疑ったら、
   加害者の家庭環境を考えるなど
   加害者にこそ働きかけるべきです。

   これは、加害者がいじめ等をして
   人間性を摩滅しないための活動ということになります。

 2 力の優位の認識
   どのように力の優位を感じているのか分析しましょう。
   子どもの場合は、砂上の楼閣の多数
   という場合が多いようです。

   クラス替えということは極めて有効です。
   あるいじめ事例で、被害者の側が事情を説明し
   加害者と別のクラスにしてほしいという要望を出したのですが、
   いじめ側がきれいに分断され、
   特に主犯格が孤立しました。

   後で事情を聞くと
   主犯格の側近の父兄もクラス替えを希望していたとのことでした。
   側近も、主犯格から攻撃や脅かしを受けていたようでした。

   しかし、少子化などで、クラス替えができない場合もあります。
   また、年度の途中ではクラス替えは無理でしょう。

   一番の鉄則は、被害者を孤立させないということです。
   これは、徹底的にかばうしかありません。
   えこひいきでもなんでも、かばうことで
   弱い者を助けるということを教えることが有効だと思います。

   援助する義侠心のある子供も結構います。
   その子を支援することによって孤立を防ぐということも有効です。

   孤立が積極的加害を伴う場合は
   断固介入する必要があります。

   ネットの匿名性は、かなり大きな壁になります。
   ネット加害に対するサンクションは
   匿名性をはぐことです。
   他人の人権を侵害するような攻撃は、
   顕名にできるようにすることも考えるべきでしょう。

 3 罪悪感等が抑止を期待できない
  a)対象が苦しむことに対する罪悪感
    共鳴力、共感力は育ってきた環境で
    だいぶ個人差があるのですが、
    人間である以上、
    共鳴力、共感力を行使する脳は存在するわけです。

    後天的に、共鳴力、共感力を獲得することは可能だと思います。
    この場合必要なことは
    その人が、共鳴、共感を他人が抱いてくれる体験をさせることです。
    あるいは、他人に対して共鳴共感することで
    自分が評価される体験です。

    特に、自分の劣っている部分、汚い部分、情けない部分といった
    負の感情を抱いている自分の部分を尊重してもらう
    という体験をすることによって
    仲間意識が形成していきます。
    無防備であっても攻撃されない
    という体験が有効となると思います。

  b)道徳、法律等ルールに反した行動であることの罪悪感
    この観点からの教育も大切です。
    なかには、どうしても、他人に共鳴共感することができない
    その部分の脳の機能が十分働かない場合もありそうです。
    こういう場合には、ルールを守ることの必要性
    ルールを守ることによって、安心感を獲得する
    他人と調和して生活できるということを
    教えていくことが必要だと思います。

    ただ、本論は、a)とb)を連動させて指導することが
    有効だということになります。






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0