SSブログ

子どもたちではなく業者の利益を図る制度ができる危険性がある。共同親権法制の期待が悪用される危険について [家事]



婚費や養育費が調停で決められた場合
弁護士が報酬を受け取ることを非難する声がある。
これはおかしい。
先ず、婚費や養育費が支払われないという現実がある。
そして請求するにも自分では請求できないから弁護士に依頼する。
弁護士は仕事をして、その結果お金が入れば報酬を受け取る。
何一つおかしいことはない。
もっとも、その金額があまり大きくなくて、
報酬計算をすることが面倒だし、費用対効果を考えて
報酬を請求しない弁護士が多いだけである。
月100万円の婚費が支払われれば
私だって報酬を請求するだろう。

私は、婚費が確実に子どもに全額わたるために
義務者の依頼者に、相手から請求を受ける前に支払いを申し出ることを勧めている。
多くの依頼者が請求前から支払を始めている。
そうすると婚費調停が起きない場合も多い。
婚費調停が起きなければ、弁護士に報酬を払うこともないわけだ。

(ちなみに、婚費を払えということが信義則に反する事例で
 配偶者分相当額の婚費の支払いを拒否して
 審判にして争うということは行っている。)

道理の無いことで怒っていると
現在進められている親子法の改正作業の危険性を見落とすことになるため
あえて苦言を呈した。
もしかするとこれからは、
身を引き裂かれるようにして支払っている養育費が
紛争が無くても一部がコンスタントに業者の利益になる
という法改正が起きる危険があるからだ。
しかも面会交流というか共同養育が絵に描いた餅になる危険もある。
このことを説明したい。


一般に
国民のニーズをきっかけに議論、法制化が始まるが
蓋を開ければ一部の人たちの利益が図られるだけ
という事態はこれまでもあったからだ。

上川法務大臣の理念通り事が運べばよいが
そうはならない危険な事情が現実には存在している。
業者のニーズというのがその危険な事情である。

実際に養育費で利益を得ようとしている業者から1年前に話を聞いた。

その業者は、養育費の取り立て事業を始めるというのである。
私は疑問をぶつけた。

業者が養育費の額を交渉したり、支払いを促すのは
弁護士法違反であるからできないのではないか
ということである。

それに対して業者は、
既に、調停が成立していたり、公正証書で支払い契約がある場合に
督促や差押の代行を行うのだというのである。
債権回収会社(サービサー)ということなのだそうだ。
確かに金融関係で債権回収会社の行為が認められているが
これも弁護士会としては、非弁活動としてもっと反対するべきだったのだ。
それはともかく、

すべての養育費が支払われるべき離婚件数に比較して
調停が成立しているケースは圧倒的に少ないし、
公正証書で離婚契約書なんて作成しているケースはさらに少ない
それで商売になるのかと尋ねた。

それに対して業者は、
これから、離婚の際に離婚契約書を作るようになるのだとはっきりと言った。
そこで、養育費の金額も書類で明示するというのである。
どうやら強制執行認諾約款付きの公正証書を作成することになるというのだ。
つまり、裁判をしなくても給料や銀行預金を差し押さえることができる
特別の契約書を作ることになるようだ。

私は尋ねた。
そのあなたたちの費用はどこからお金が入るのだ。
養育費の請求をする親はお金がないだろう。
自治体がすべて援助するのかと。

これに対して業者はこう説明した。
業者は、離婚契約書の、養育費の支払い側の保証人になるというのである。
そして、支払われない養育費を立て替えて、同居親に支払い、
支払い義務者の別居親から保証人として回収するというのである。
そして、その保証料を
支払われる養育費の中から毎月徴収するというのである。

おそらくこれからは、養育費支払義務者は
家賃の支払いと同じく
業者の依頼者口座に養育費を支払い、
毎月に支払いが滞らないか業者に管理されることになりそうだ。
支払われた養育費から業者が保証料を徴収し
差額を同居親に送金することになりそうだ。

例えば、月7万円の支払いの離婚契約書を作れば
7万円のうち、例えば7000円とか1400円とが
保証料として引かれてしまうということになる。
別居親が爪に火を点す用にして出している養育費の
一定部分が業者のもうけになる。
養育費の未払いが起きなくても
業者は利益を得ることになる。
これが5%の3500円だとしても
千件を受け持っていれば
3,500,000円の月の売り上げになる。

子どもたちは親からの金額を全額は受け取れなくなるのである。

当事者が自助で養育費の支払いを確保することになる。
実際は別居親の負担となる。
自治体は多少の援助や優遇を業者にするだけで、
行政サービスとして離婚家庭の保護をしているとアッピールできる。
そして、貧困家庭への援助(児童扶養手当)の支出が抑えられるなら
自治体の支出は減ることになるので
これほどうまい話はないと自治体は飛びつくだろう。

私は、実務的経験から、絵にかいたような貧困解消は期待できないと思う。

先ず、養育費を払わないのは払わない事情があることが多いからだ。
職が無くなったり、賃金が減額されたり、
事故や入院で金が無くなるというケースも少なくない。

こういうケースで、差押しようにも
差し押さえる金はない。
賃金を差し押さえようにも
就労していないので差し押さえることができない。
つまり費用倒れに終わるだけだ。
子どもに渡らない保証料はなんだったのかということになるだろう。

お金があるのに払わないケースとしては
再婚して子どもが生まれたなどのケースもある。
そうなると、養育費の金額が事情変更ということで減額される。
差押をしたばっかりに
養育費が減額されるというケースも増えるだろう。

結局、自分の意思で子どものために
真面目に養育費を払う人たちが支払うだけだと思う。
しかし、新しい制度ができてしまうと
本来全額子どもが受け取っていたはずのその養育費の
いくらかの割合は
子どもたちに届かないで業者の収入になるという違いは生じる。

結局子どもたちの利益にはならない制度設計になると私はにらんでいる。

そこで気になったのは
上川法相の記者会見の際に、
おそらく上川発言とは別枠で
役人の解説を載せた思われる記事があったことである。

共同親権制度の創設という言葉ではなく、
離婚時に面会交流の方法を定める合意書の作成を
これから検討するのだという記事を覚えていらっしゃるだろうか。

もしかするとこの程度のことが
今度の共同親権だということになるかもしれない。
要は、離婚契約書を作成することが主眼であり、
その主たる目的は、業者が養育費の一部を
自分の利益にするためだということが心配なのだ。

共同養育の内容は養育費を確実に支払うこと
と矮小化される危険があるということだ。
養育費は合意書ができれば差押ができる。
面会交流は強制執行ができないままにされるということになれば
合意書なんて作成しても共同養育は絵に描いた餅になってしまう。
これでは現在と何ら変わりはない。

こうなってしまう危険があるということが
今日私が言いたいことである。

業者の思惑で、現在の離婚合意書義務付け制度が法制化されるのならば
子どもたちの未来はどんどん陰っていく。

法制審への諮問を無条件に歓迎してはならないのだろう
法制審議会の議事録は、みんなで読まなくてはならない。

法制審議会のメンバーに
人材派遣会社や債権回収会社、保証会社等の役員が入っていないか
注目する必要がある。

子どもを食い物にする貧困化ビジネスは阻止しなければならない。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。