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保護命令手続きの合法性についての疑義 要件を満たさないのに命令が出される仕組みと弁護士を依頼することが困難である仕組み だから普通の夫に保護命令が出される可能性があるということ [家事]



保護命令申立ては、相手方弁護士がきちんと対応をすれば、取り下げになることが増えてきたように思います。つまり、相手方代理人の主張、立証を見て、裁判官が「この申し立ては認められる可能性はないので、取り下げた方が良い。」と申立人代理人を説得するのだと思います。はっきりと「取り下げを説得した」という裁判官もいました。

それでも、もし相手方が弁護士を依頼していなければ保護命令が通ってしまう可能性があるし、相手方が弁護士を依頼しずらい手続き上の問題があるということを述べてゆきます。

保護命令とは、「暴行または脅迫があった場合」で、かつ、「申立人の身体生命に重大な危害を受ける可能性がある」という二つの事情がある場合に、裁判所が相手方に対して、申立人や二人の子どもに接近をすることを禁じたり、今住んでいる家から退去することを命じたりする手続きです。これに違反すると、現在は1年以下の懲役または100万円以下の罰金ですが、5月に改正され2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されることになりました。全会一致で決められたというのですから、国会議員は法律の執行の現状について何も知らないで法改正をしているのだなあと改めてあきれるばかりです。

保護命令の効果は、接近禁止や退去をよぎなくされるだけではありません。離婚調停や離婚訴訟が圧倒的に不利になりますし、慰謝料の金額などにも影響を与えます。何よりも、子どもとの面会におおける高い壁になってしまいます。この影響は将来的にも及んでしまいかねません。不当な保護命令は、子どものためにも出させてはなりません。

1 本当は要件を満たさないのに保護命令が出されてしまう可能性がある手続き上の問題

保護命令申立書の用紙は、シェルターやNPO法人の事務所などに備え置いてあるそうです。通常は、代理人がいても本人がその用紙にアンケートの回答の要領で書き込んで、本人の名前で申し立てることが多いようです。書き方を指導する人がいることはわかるのですが、おそらく法律家ではないようです。なぜならば、一応のことは書かれているのですが、書いてあることが相互に矛盾していたり、明らかに過剰なことが書かれていたり、到底あり得ないだろうということがすぐにわかることが書かれているわけです。しかし、これは、弁護士であり、保護命令について研究しており、さらに保護命令が出されてしまうと致命的な被害を受ける相手方の立場で読むことができるからそのような申立書の問題点に気が付くのかもしれません。

保護命令の更新手続きで、保護命令を出した同じ裁判官が、今度は弁護士がついてきちんと対応をしたところ、相手方に取り下げするように強く説得したということがありました。この時、翌代理人に就いてくれたと裁判官からなぜか感謝されました。

相手方代理人弁護士が行うべきことは以下のとおりです。
1 申立人の主張する事実が真実か虚構か、過剰表現かを明確にすること、及び申立人の主張が曖昧であり印象操作にすぎないことの具体的な指摘
2 保護命令は保全処分ではなく、疎明では足りず証明が必要であること
3 保護命令を棄却した先例の提示と当該事件との共通点の指摘
4 重大な危害を受ける可能性が無いことの主張と事実に基づく立証
5 保護命令はひとたび出ると違反した場合は刑事罰が科されるということから、手続きにおいても憲法上の要請を充たすべきこと
6 申立書に描かれている家族の日常と、実際の日常の隔たりの具体的な証明活動
7 余力があれば合理的に考えられるところの保護命令が申し立てられた本当の理由ないし目的

これ等のやるべきことがたとえわかっていても、なかなか当事者の方は必要な反論反証をすることができません。一番の理由は法的知識が無いことではなく、「こんなありもしない虚構の主張で裁判所が保護命令という過酷な命令が出すことはあり得ない」という油断があるからです。

そして、実際、先ほどの保護命令更新の事件では、相手方弁護士から見れば穴だらけで要件をまるで満たさない初回の申立て(弁護士不在)が現実に通ってしまっていたわけです。

2 弁護士を依頼することが不可能な手続きの問題点。

なぜか保護命令手続きは裁判が火曜日か水曜日に行われることが多いようです。ところが、裁判所からの呼び出し状は、相手方の元に水曜日か木曜日に届きます。普通郵便で来るので気が付かないことが多いのです。そして慌てて、早ければ木曜日に弁護士を探し始めます。しかし、当然仕事もあるわけですから、急に休むこともできないで、後手後手になってしまいます。金曜日の夜に封筒を開けた場合は、もはや土、日になってしまい、引き受けてくれる弁護士を探すことができません。また、その時点で弁護士とコンタクトが取れたとしても、既に予定が入っていて翌週の裁判に同行できないことが多いですし、十分な反論書の作成(通常月曜日か火曜日までに反論書を出せという無理なことを裁判所は要求しています。)や反証計画を策定することはほぼ望み薄になってしまいます。

そうすると弁護士抜きで裁判所の呼び出しに臨んで、必要な地道な反論反証活動ができないまま保護命令が出されてしまうわけです。

こういった事情があるため、弁護士は保護命令の代理人の経験者は少ないようです。

しかし、考えてもみてください。それまで普通に家族として同居していて、例えばディズニーランドに出かけたりして過ごしている家族の中で、多少の衝突、夫婦喧嘩があったとしても、生命身体に重大な危害を受ける可能性がある事情なんてよほどのことが無ければありえないじゃないですか。それにもかかわらず、このような常識を持ち合わせていないのか、簡単に生命身体に重大な危害を受ける可能性があるとして保護命令は出されているのです。

いかに弁護士をつけさせないで、保護命令申立ての認容件数を増やそうかというなみなみならぬ立法者の思惑を感じざるを得ません。また、それを担当する裁判所の部署が、保全部で行われていることも大問題です。保護命令は保全手続きではありません。これも先ほどの生命身体に重大な危害を受ける可能性があるということが正式な証明がなされていなくても、保全手続きのように省略された簡易な証明で、証明されたことにしてしまう要因となっており、手続き上の重大な問題です。

こうやって、夫は、ありもしない事実を根拠に、刑罰の威嚇によって妻や子どもと会えなくなってしまい、汗水流して働いて住宅ローンを払っている我が家から数か月も立ち退かなければならなくなります。もちろんその間の住宅ローンや家賃も払わなければなりません。

先ほど述べたように今年5月の国会で保護命令の刑罰が重くなるなどの改正がなされました。政治家は何を考え、何を調査しているのかわかりません。全会一致ですからね。

おそらく保護命令の認容率が低いということが問題意識なのでしょう。認容率が低いのは保護命令の要件を満たさない、目的外の申立てが多いからだというのが、偽らざる実務家の感想です。妻によって挑発されて夫婦喧嘩をして、それを妻に録音されれば保護命令が出されてしまうというような暗黒な世の中にならないようにしなければならないでしょう。

つまり、夫婦喧嘩をしている多くの夫たちは保護命令が出される可能性があるということであり、自分に関係が無いと言う人はおそらく例外的ではないでしょうか。普通の夫に保護命令が出される可能性があるということです。

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