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過重労働、長時間労働とパワハラで自殺したことが労働災害だとする裁判が始まります [労災事件]

明日から裁判が始まります。
裁判の時に冒頭話そうと思っている原稿を考えています。
裁判官の方々へ、どのような特徴のある裁判なのか、
冒頭アッピールすることが目的で、
労災事件などでこのような発言をすることがあります。

(先ずは、事件の概要ですが、詳細にわたるとかえってわからなくなるので、)

本件は、あまりにも広範な仕事と責任が、被災者一人に集中して与えられ、
ただでさえ、精神的、肉体的に、極度に疲弊する労働環境でありながら、
特定の上司から、執拗に、毎日のように、
同僚たちの前で、長時間にわたり叱責され続けた被災者が、
休日労働に向かう途中で、失踪し、
山中で首をつって自殺された事件で、
このことが、業務上に起因するものだから、
労働災害に当たるということが原告の主張です。

(次は、本件の争点ということで、
なぜ労災が認められなかったかということの原告の見解でしょうか。)

労働現場は多種多様であり、それぞれの仕事を外部の者が把握して
過重労働の有無を判断することは困難もあります。
会社が明示の残業命令を具体的に行うことは少なく、
黙示の業務指示において、労働者が残業を余儀なくされることがほとんどで、
形式的に会社の資料、説明だけで過重労働を把握することは
通常むしろできません。
このために、労働基準監督官が、専門的知識と訓練により、
労働者災害補償保険法の目的に沿って、労働者福祉の観点から、
調査、認定することとなっております。

ところが本件では、例えば労働時間については、
11月から労働時間が極端に減少している認定となっていますが、
被告が調査した結果からも、同僚の供述と矛盾していることは明らかで、
12月からは特に業務量が増えたという上司の供述とも矛盾していながら、
形式的なタイムカードと、現場にいない者の供述で認定が行われています。
なぜ、タイムカードと労働者たちの供述が矛盾するかについての調査が
なされた形跡は全くありません。

パワーハラスメントについても、
他の労働者は、
上司の叱責に対して、口をはさんだり、かばったりすると
次は自分が叱責の対象となったり、
転勤の対象となるため、何もできないという実態が通常で、
それがあって、初めて成り立つ現象であるにもかかわらず、
やはり、会社の上司やその場を見ていない者の供述をもとに、
存在は不明であったとの認定で、実質的には否定しています。

本件は、労働者災害補償保険法の目的に照らして、
行政認定段階で、労働実態が適切に調査されれば
労働災害と認定されるべき事案だったと原告は主張するものです。

残念ながら訴訟を提起せざるを得なくなったために、
原告らは、何も調査権限の無い中で、立証活動を余儀なくされています。
被災者の同僚たちも、真実を明らかにするために、
公に、名乗り出て、真実を述べることを余儀なくされています。

このようなことが、繰り返されざるを得ないのか、
労働者は、労働者災害補償保険法に基づく、
労働基準監督官の調査を期待してはならず、
遺族自らが生活を投げうって調査しなければならないのか、
同僚たちは、裁判で名前を明らかにしなければならないのか、
本件労働現場だけではなく、
全国の、過重労働やパワーハラスメントに苦しむ労働者、家族、
そしてその同僚の、関心が集められてきている裁判となっています。

最後に、本件の労働者災害補償保険法の目的を実現するべき裁判において、
国は、被災現場の会社の顧問法律事務所の弁護士を代理人としています。

この先生は、個人的には尊敬もし、お慕いもしている先生であります。

しかし、本件は、労働者災害補償保険法の目的に照らし、
労災給付が為されるべきか否かの裁判であります。
その意味で、被告である国は、司法の場においても、
公正中立な行政的立場は貫かれるべきだと思われます。
使用者の利益を追及するべき人が、
果たして、司法の場としての訴訟において、
公正中立な行政の立場に終始し、
使用者の意見を反映しないという活動を貫くことができるでしょうか。
会社の利益の為に、労災であることを否定するという危険が、
少なくとも外形的にはあるわけです。

被告である国の委任行為には、大いなる疑念を留保せざるを得ません。

このことを付け加えさせていただき、
訴状の陳述とさせていただきたいと思います。
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