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【自殺についての誤解】死ぬ前に逃げればよかった論と、調子のよいときになぜ論 [自死(自殺)・不明死、葛藤]



芸能人の自殺のニュースに接して気になる論調があったので、この機会に誤解を解きたいと思いました。

1 逃げるという選択肢が無くなるから自殺をするということ

例えばいじめやハラスメント等で自死が起きると、死ぬくらいならば逃げればよかったのではないか、その会社を辞めればよかったのではないかという発言が聞かれることがあります。

もちろん、明示の選択肢が突き付けられていたら、それは逃げる選択を誰しもするのだと思います。しかし、少なくとも自死の実行時には、「逃げる」という選択肢は亡くなっているようです。以前サバイバルシリーズの時にも報告したのですが、うつ病などの精神的な不安定になる前は、「こんな会社いつでも辞めてやる」という気持ちでいることができ、退職するという選択肢を意識していたというのです。ところが、その人はうつ病と診断されたのですが、精神的不安定になってしまうと退職するという選択肢がいつの間にか頭の中から消去されていたというのです。その結果「このまま苦しみ続けて働き続けるか、死ぬか」という二者択一の選択肢しか頭の中に浮かんでこなかったと言います。

世界で最初の女性の自死が労災だと認定された案件を担当したのですが、その事例では、来月退職届を出すということが決まっていた人が、半月後、やめるという選択肢を持っていたにもかかわらず自死しました。辞めるという選択肢がいつの間にか消去されていたことになります。

転職が決まった翌日に自死した事案もあります。形式的には退職の選択肢はあったはずなのに、そのアイデアが自死を止めることができなかったということは間違いありません。

2 ジェットコースター理論・落差理論
 
 会社内での不遇があり、その結果精神的に不安定になり周囲が大変心配していたところ、ある時期から日の目を見だしたように取り立てられるようになったので周囲も安心していたところ自死をしたという事例もあります。どうしてという疑問の声が上がります。ただ、子細にリアルに見ていくと、プラスの事情があったのに、それを打ち消す事情があった場合は、プラスの事情が起きない時よりも精神的打撃は大きくなるということが実態のようです。先ほどの例で言えば、退職を決めて周囲が安心し、ご自分の明るい気持ちになったにもかかわらず何かの事情で以前と同じようにたたきつけられたとか、あるいは以前と同じような出来事の予兆みたいなものがあり、やっぱりまた同じことの繰り返しだと思うと、深く絶望をしてしまうようです。ずうっと苦しんでいるよりも、希望を持った後でその希望の芽を摘まれてしまうことが強い精神的打撃を受けるようです。

3 自死の意思決定は矛盾に満ちていること

 私も仕事柄自死についての研究を進めてきて、自死の実態について何件も見てきたので、自死をする場合の意識、自殺の意思決定過程というものが通常は想定されないほど歪んだものであるということに気が付きました。

自分も知りませんでしたので、知らない人を非難するつもりはありません。ただわかっていただきたいだけです。自死をする人は、「よしこれから自殺をしよう。周囲に迷惑をかけたり、悲しい思いをさせたりする人たちが出るけれど仕方がない。」という冷静な判断力をもって自死するわけではないということだということです。家族にあてた遺書を読むとどうしてこういう家族思いの人が自死をしてしまうのかということに理解が苦しみます。矛盾に満ちた混乱した状況の中で自死が起きることがむしろ一般的ですし、考える力が失われている状態だから自死を行うということなのかもしれません。

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