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人を嫌いになるのに合理的な理由はない。過労死防止の周辺的問題 [労災事件]


過労死防止の特効薬は、長時間残業をなくすことです。
これに勝る王道はありません。

しかし、長時間労働をしなければ過労死や
精神的問題は起きないのでしょうか。
どうもそうではないようです。

過労死をなくすためには、
なんでも有効な手立てを用いたいです。
労働時間の正常化が達成するまで
我慢するわけにもゆきません。

一つは、ハラスメントです。
相手の気になることをわざとくり返し行ったり、
カンに障っても、表立って抗議できないようにする
ということが行われます。

また、特定の部下だけを差別して、
不利な役回りをさせたり、
一人だけ大変な部署に付かせる
というのもあります。

極端な話を言えば、
仕事を与えないということも
精神的な影響を与えることになります。

冷静に分析すると
上司のパワハラも、
仕事をしない人を叱責して起きるのではなく、
なんか毛嫌いして当たり散らしているというものもあるようです。

パワハラ研修では、こういう周辺的な問題も
あわせてお話することがあります。

どうして、その部下を嫌いになるのか、
どうして私は嫌われるのか。

残念ながら、合理的理由がないことが多いのです。
なんとなく虫が好かないということが多いようです。

この仕組みは、記憶のメカニズムを勉強すると
ある程度のことは理解できます。

まず、記憶するということは、
危険の発生を記憶して、
次回は、危険に近づかないようにする
というのが、原始的記憶です。

人間は、危険から逃げてばかりいたのでは
飢えて死んでしまいますから
ある程度危険に近づくことが必要となります。

やけどをしないように火を使ったり、
橋を渡して川を渡ったり、
毒を恐れずに薬を飲んだり、
危険をコントロールするのが
人間の歴史だったわけです。

だから、通常の記憶力は、
そんなに細部にわたっては覚えていません。
危険物取り扱いをするために
言葉を作りました。
記憶をしないで言葉に記録するわけです。

そうすると、
自分が過去において嫌な思いをしたり、
不利益を与えられた
その相手に対する記憶も、
かなり漠然としたものになっているわけです。

こういう声のやつだったなとか
こういう歩き方をする奴だったとか
髪型だとか、ホクロの位置だとか
特定の、本質とは無関係な
些細なことだけが嫌な記憶に結びついていることは
よくあることです。

そうすると、記憶がその相手と同じ
声とか、歩き方とか髪型とか、ホクロの位置
の人間に対して、これは危険が起きるかもしれない
という警戒感を発動させるわけです。

これが嫌な奴、虫の好かないやつの正体です。

だから、誰かに対して、なんとなく嫌という感情は、
生きるメカニズムから生まれているので、
特にその人の人格がどうのこうのというわけではないと思います。

問題は、この先の対応です。
だから、自分が嫌な感情を持つことを
相手に原因を求めてはいけないことが多いということです。

かかわらないですむのであれば、
それでいいのですが
仕事の場合はそうもいきません。

自分が、なんとなく嫌な感情を持っていると
何かしら態度に出てしまい、
相手はそれに警戒感や反発を持ちます。
また、理不尽な気持ちも持つでしょう。
こういう理由のない攻撃が精神的には悪いわけです。

本人は、相手からの反発、警戒感、反感を感じ取ると
ますます相手を嫌いになっていきます。
本当は、自分が虫が好かないという理由が、
失礼な部下だという合理的理由になり、
職場内いじめは完成していきます。

上司の上司、あまり部下の部下とかかわらない人間は、
そのような人間関係を洞察して、
不正常な連鎖を断ち切らなくてはなりません。
上司の同僚なんかも良いかもしれません。

この虫が好かないという現象を解消する方法はあります。
過去の記憶から来ているものであれば、
新たな記憶を形成するれば良いのです。
この人は大丈夫という安心感を与えあうことです。

その新たな記憶の形成のためには、
人間的な時間の共有を意図的に行うことであり、
その時は、できれば毛嫌いしている方は、
自分の感情に合理的理由がないことを自覚し、
新たな記憶の形成を意図的に行う、
まず、相手を尊重することから始める
という作業が有効です。

嫌な気持ちを忘れるような器用なことは
なかなかできません。
しかし、危険ではなかったという記憶を形成することは
比較的容易です。
これがPTSD治療の心理療法の骨格でもあります。

虫が好かないということはダメだと言って
感情を否定するよりも、
そういうこともあると思って、向き合うほうが
解決のためには有効なわけです。


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